千葉商科大学サービス創造学部・桐生南高校 共同企画「サービス創造熱血講座」
2014年11月より行われている千葉商科大学サービス創造学部と群馬県桐生南高校との共同企画シリーズ「サービス創造熱血講座」が今年度も始まった。同講座は、同高校野球部時代の先輩・後輩であり、現在は千葉商科大学サービス創造学部でともに特命教授を務める佐瀬守男氏(株式会社ホットランド代表取締役)と荒木重雄氏(株式会社スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役)の提案で実現したもの。今回で10回目となる講義に登壇したのは、国内最多のスクリーンを持つイオンエンターテイメント株式会社 コンテンツ・プロモーション部 部長の小金沢剛康氏。「映画を観てもらうサービス創造」をテーマに、高校生たちにメッセージを送った。
地域社会の貢献のために
映画興行会社のイオンエンターテイメントは、イオンシネマ 84 劇場を運営、国内最多の 709 スクリーンを展開している。同社は、10月末より同大学サービス創造学部とともに、シネコン業界では国内初、「映画興行ビジネス」をテーマにした全8回の特別講義を開講する(※)。
映画の興行収入はほぼ2000億円でほぼ横ばいだが、2000~15年はシネマコンプレックス(1劇場に5つ以上のスクリーンを持つこと)が増加。家庭で映画鑑賞ができるVODサービスの拡大や、若い世代の映画離れが加速化している現状もあり、映画ビジネス業界は現在大きな岐路に立っている。同社もそれに対して、映画以外の領域拡大に乗り出したが、そこには多くの失敗もあったと小金沢氏は明かす。
「何がダメだったか振り返ると同時に、もっと広い視野、将来の日本がどうなるのかを考えて取り組まねばならないと気づいたのです。」
つまり、将来の理想の姿を設定し、今何をすべきかを考える「バックキャスティング」でとらえるようにするというのだ。「少子高齢化により、これからの日本は若い世代の人口が減り続けていきます。多くの課題を抱えることになるなか、一番の問題は地域をどう活性化するか。イオンシネマでは、地域の課題を解決する活動に徹することを決めました。慈善事業ではないので利益は必ず追求しますが、まずこの事業が社会や地域の未来にとっていかに重要かを考える。映画を中心に、行政、学校、皆さんと一緒に文化をつくる取り組みを行っています。」
子どもをターゲットに絞った戦略
記憶の分類にはさまざまなタイプがあり、その中には「意味記憶」と「エピソード記憶」がある。「映画館はエピソード記憶です。経験を伴って衝撃的な記憶として残ること。映画館は一緒に行った人や内容をよく覚えていて思い出になるでしょう。だからこそ、映画のつくり手はなるべく映画館で観てもらいたいのです。最大の思い出になることはもちろん、教育、家族の絆、町づくりとさまざまに生かせるのではないか。それこそ、私たちが映画に期待していることです。」
同社は、「子ども」をターゲットに絞り、幼少期から映画館に足を運んでもらうことで、感受性豊かな人間に成長させることを狙った取り組みにチャレンジしている。事実、「暗い、音が大きい、上映時間が長い」と子どもたちが映画に感じる不安要素を取り除いた「こどもの映画館シリーズ」は人気企画に成長を遂げ、観客動員の底上げにつながった。
映画ビジネスの新たな取り組み
今後の映画ビジネスの目標として、医療や教育の分野にも視野を広げていきたいと小金沢氏は話す。現在千葉商科大学と進めている「映画興行市場におけるサ-ビス創造」(講義名:サービス創造実践1B)と銘打った講義も、今後同社が注力していく「教育事業」のひとつだ。
「私の悪い癖に、“本能的に自責を追求しない”ということがあるのですが、それをなくすことが成功への近道だと思っています。皆さんも躓いたときは、自分の中で何が原因か考えてほしい。ただし、悲観的になりすぎず、絶対に成功するという姿をイメージしながら失敗を建設的に振り返ることも大事です。もちろん成功から学べることも多いので、小さな成功を積み上げていってほしいと思います。」
最後に自身が映画ビジネスに魅了されている理由を明かした。「シンプルな話ですが、映画館で映画を見終わった子どもが、泣きながら笑いながら帰っていく姿に幸せを感じます。純粋に誰かに喜んでもらうことを発信していくということは、生きていくうえで必要なことですし、それが活動の原動力になる。映画で喜んでもらう人をひとりでも多くつくりたいですね。」
- 質疑応答の時間では、生徒、教員からさまざまな質問が投げかけられた。「夢や仕事は、いつでもどこからでも入ることができて、そしてどうにでも変えることができるということを今日は皆さんに伝えたかった」と生徒たちの背中を押した。