千葉商科大学サービス創造学部を卒業する2期生・高梨愛子さん。「人前で話すのが苦手」という彼女だが、留学、プロジェクト、ゼミ……大学時代のさまざまな経験を通じて、成長を遂げてきた。4年間で彼女がつかんだ自信の源とは。


自分で選んだ大学への進学

広島生まれ広島育ちの高梨さんだが、東京周辺の大学への進学を考えていた。大学へ進学するならば、あえて知り合いの少ない環境でチャレンジしたいと考えていたからだ。
そんな時、かつて千葉ロッテマリーンズのボビー・バレンタイン監督(当時)が客員教授を務めたことがあったり、千葉マリンスタジアムでのホームゲームの際に学生が企画したイベントを行ったりするなど、球団と深い関係を持っている大学の学部が目に止まった。それが千葉商科大学サービス創造学部だった。
上京してオープンキャンパスに参加すると、バレンタイン監督が客員教授として講義する映像が流れていた。「大好きなプロ野球の関係者に会えるかもしれない」という素直な気持ちで、大学に対する関心はさらに高まった。
高校時代、地元の通信制の高校に通い、日頃は若い男性向けのアパレルショップでアルバイトをしていた。「その頃は、パートで働いている主婦の方々に大変可愛がってもらいました。彼女たちは私よりもずっと年上でしたが、話を聞くといろいろな悩みを抱えながら過ごしていることがわかりました。大人だって悩んでいる。そう思うと少し楽になったんです。それまでの私は、他人からの目を気にしながら過ごしていました。でも、人生は一度きり。だから自分で悔いがないように生きていこうって思うようになったんです。大学に興味を持ったきっかけは単純でしたが、振り返ってみて、この大学を自分で選び、自分で決めたことがよかったと思っています」と高梨さんは語る。
通信制の高校では通学する機会がほとんどないため、友達という友達ができる環境ではなかった。アルバイト先には可愛がってくれる先輩がいるとはいえ、友達と呼べる関係でもなかった。
「大学に入ると、同世代の仲間がたくさんいました。学部の同期生200人が非常に近い存在でした。みんなと知り会えたことが本当にうれしかったんです」
大学に入り、彼女には多くの友達ができた。


荒木重雄特命教授との出会い

入学してもっとも衝撃を受けたものの一つが、荒木重雄特命教授の講義だった。
大手IT企業から転職、外資系通信会社で社長まで上りつめ、さらに千葉ロッテマリーンズの事業を統括する立場に転身、球団の経営改革を行うなどスポーツビジネスの一線で活躍してきたという荒木先生の話には魅力が詰まっていた。
「具体的に何かになりたいということもなくて、ただ漠然と公務員やサラリーマンになるんだろうなと考えていました。でも、荒木先生が講義の中でそれまでやってきたことを説明してくれたのですが、その話が面白くて引き込まれて。世の中にはものすごい経歴の人がいるんだなと思い知らされました。こんなにもやりがいのある仕事をしている人を見て、羨ましい、自分もスポーツビジネスに携わってみたい、荒木先生のようになりたい、そんな風に思いました」
改めて自分を見つめ直してみると、他人とコミュニケーションをとることを苦手に感じていた。話したいけど、話すのが苦手。話そうとするだけで疲れてしまう。荒木先生をはじめ、企業からゲストスピーカーとして話を聞ける機会は数々あったものの、実際に相手が企業人ともなると、なおさら話すことがためらわれてしまう。
「大人に対して何を話していいのかわかりませんでした。私自身が何も知らないから、私なんかが話しかけても相手はおもしろくないだろう、と思ってしまう。でも、何も知らないからこそ、私自身には学ぶ価値や得るものが大きいと気づいたんです。そこでまず、水曜2限に行われていたゲストスピーカーによる講義中に、必ず講師に対して何か質問することを自分自身で義務付けました」
大教室の中で大勢の学生の前で発言するのは大変な緊張を伴う。高梨さんは「自分で決めたことなのに、毎週水曜日の朝は毎週憂鬱で仕方なかった」と苦笑いする。その緊張感に慣れることはなかなかできなかったが、それでもそうやって、ゲストに対する質問を繰り返すことで、少しずつ自分自身が成長していることを感じるようになった。


海外でのさまざまな体験

3年生となった2012年の夏には、英語を短期で集中的に学ぶためにフィリピンへホームステイした。9月から12月にかけては、上海立信会計学院との交換留学で、上海へ中国語の語学留学にも行った。日中関係が厳しさを増す中での渡航だったが、現地でできた友達たちは友好的だった。
2013年の春休みには、台湾で行われた「グローバルキャリア教育プロジェクト」に参加。このプロジェクトは経済産業省が後援し、サービス創造学部を含む首都圏6つの大学が合同企画したもので、テーマは「日本の食材を使って台湾マーケットを席巻せよ」だった。各大学から選出された学生が大学混合の3チームに分かれ、ソフトクリームの新商品を考案、販売に挑んだ。チームごとに決めたコンセプトに沿って商品開発、材料調達して、販促方法を競った結果、高梨さんたちのチームが優勝した。
さらにこの年の夏休みにも、台湾で2週間のサマースクールにも参加した。この他にも、香港やイタリアへ旅行するなど海外へは積極的に出向いた。
「英語や中国語を話せるようになったのと同時に、いろいろな国に友達ができました。他大学の学生と触れ合うことができたことはいい経験になりました」と語るように、国際感覚を身につけることができたのも貴重な財産になった。

 

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上海留学での1コマ。さまざまな体験を経て外国人の友人もできた。
 

 
 

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