自分を見つめるということ

大学生の就職活動は3年生の秋口から始まる。その頃ちょうど高梨さんは、交換留学で上海にいた。中国のインターネット環境は悪く、就職活動の準備をしようにもWEBでのエントリーが思うように進まない。就職活動のスタートは完全に出遅れた。
「エントリーシートを書いて、セミナーに行くんですが、なかなかしっくりいかなくて取り残されている感覚が強かった」という高梨さんは、学部の就職担当顧問である庄司祐子先生によく会いに行き相談した。「世間話をしに行く感じで、友達には話しづらいような悩みなども聞いてもらいました」
また、元々話すことに苦手意識があった高梨さんは、就職指導を担当する今井重男准教授に相談し、面接について重点的にトレーニングをすることにした。「模擬面接をしてもらい、その様子を録画し、後で見直して研究しました。映像を通じて自分が人前で話す姿を客観的に見るというのは精神的にかなりつらいものがありましたが、自分の課題もはっきりしましたし、練習を重ねた後の面接では、実際に自信を持って臨めるようになりました」と手応えも感じることができた。そして、4月からはヤマト運輸の総合職として働くことになった。
「運輸業というと、私の中では、家に届けてくださる配達員のみなさんのイメージが強かったんです。でも実際には、より早く、より正確に、より安全にものを届けるというサービスの仕組み全体が、多くの人に笑顔を与えているのだと気付かされました。そして、このシステムを支えるということは、非常にやりがいがあると思ったのです」


千葉ジェッツプロジェクトへの参加

高梨さんの4年間を振り返った時に、欠かすことのできないのが千葉ジェッツプロジェクトだ。
荒木特命教授による「荒木塾」の中で、新設されるプロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」をサポートしようというプロジェクトが発足したのが2010年のこと。以来、千葉ジェッツの運営会社である株式会社ASPEの蒔平ゆき特命講師の下、ジェッツの試合を盛り上げる企画を考えることを続けてきた。
高梨さんはこのプロジェクトに1年生から参加してきた。3年生までは公式プロジェクトとして活動してきたが、4年生になった今年度は12月の試合に向けたイベントを考える後期限定の非公式プロジェクトという扱いだった。就職活動も終わって遊びたい気持ちもあったし、旅行も行きたい。一方で時間はあるし、最後のチャンスという思いもあった。Facebookを通じて人数が少ないということもわかり、唯一の4年生ながらプロジェクトに参加した。
どうしたらいいかわからない1年生の様子を見て、自分が1年生だった頃と姿が重なった。後輩のとりまとめは信頼できる3年生リーダー・若松大幹くんに任せるとともに、彼らが動きやすいようにするため自らは吉田優治学部長とコミュニケーションを密に取ることでさまざまなリスクを減らすことに注力した。また、3年間に経験した失敗体験など、さまざまな情報を後輩たちに話して、よりよい企画になるように議論を重ねた。同時に、イベントに協賛するスポンサー企業との交渉の場に蒔平先生と同席するなど、新たな経験を通じてスポーツビジネスの裏側の一端を見ることもできた。
12月のイベント「GO! GO! 千葉ジェッツプロジェクト」を終えた後には、蒔平先生と後輩たちからサプライズで花束をプレゼントされた。思わず涙があふれた。
「ジェッツをうまくアピールすることができたか考えると、悔しさも残ります。一方で、公式プロジェクトに戻したいというのは目標だったので、後輩たちが『来年度もやりたい!』と言ってくれたことはうれしく思います。これからがまた大変だと思いますが、みんなには頑張ってほしいです」
4年間このプロジェクトに携わった高梨さんにとって、千葉ジェッツプロジェクトへの思いは特別である。彼女たちの活動が実を結び、千葉ジェッツプロジェクトは2014年度から再び学部の公式プロジェクトとなった。

 

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イベント終了後、プロジェクトメンバーは高梨さんを胴上げしてねぎらった
 


恐れずに挑むこと

高梨さんは、吉田優治学部長のゼミに所属していた。吉田先生からも大きな影響を受けた。
「普段、あまり『いい』と褒めてもらうことはなく、どちらかというとダメ出しをされることが多いんです。でもそれは、それだけ厳しく指導してもらっているということだと感じます。面白いものを探そうという探究心や考え方は学ぶ面も多くて、気づくと、私も後輩たちに対して先生からの受け売りのセリフを言ってしまっていることも多いんです」と笑う。
そんな高梨さんに、千葉商科大学サービス創造学部の魅力について聞くと、「やりたいことが決まっていなくても、ヒントが絶対に見つかる学部だと思います。恐れずに挑戦する、そんな気持ちがあれば楽しめることが保証されていると言ってもいいかもしれません」という答えが返ってきた。
卒業の時を迎え、いよいよ4月からは新社会人としてのスタートを切る。彼女に改めて今後の抱負について尋ねた。
「社会人として今後はますます責任が増すと感じます。怖いと感じる面もありますが、守りに入らずに、仕事を楽しみながらどんどんチャレンジしていきたいと思います」
そう答える高梨さんの表情には、自信があふれていた。

 
 

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<プロフィール>

高梨 愛子(たかなし・あいこ)

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広島県出身。2010年並木学院高等学校卒業後、千葉商科大学サービス創造学部入学。1年から4年まで千葉ジェッツプロジェクトを担当。フィリピン、中国、台湾などでさまざまな学習プログラムに参加する。2014年同大学同学部を卒業する。

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