ミュージシャンとして、プロデューサーとして
吉田 そして1993年にメジャーデビューされます。大変なことですよね。
大沢 そうですね、「MONDO GROSSO」というバンドでデビューしました。中学の同級生いわく「気持ち悪い音楽」が好きだった人間がつくる音楽が、市場に価値を生み出したわけです。実際、当時は当初の想像よりも売れまして、これには僕自身も驚きました。
ただ、プロとしてやっている仕事とライフワークとしてできている仕事が一致してきたのかな、と感じるようになったのは、ようやく最近になってからです。
吉田 フォーライフ・レコードからデビューして、その後Sony Music Associated Recordsに移籍された理由は何だったのでしょう。
大沢 ええ。僕らのバンドが大ブレイクすることはないとは思っていました。しかしだからと言って、ブレイクするために手心を加えるつもりは毛頭ありませんでした。しかしながら一方で、経済活動をしなくてはいけないわけです。
そう考えた時に、別のアーティストに楽曲を提供しプロデュースしたいと思うようになりました。そういう僕の意向をサポートしていただけるということで、ソニーのプロデューサーの方からお誘いを受けて、移籍することになったのです。
吉田 2006年にはavexへ移籍されました。
大沢 ソニー時代にavex所属のBoAというシンガーに「Everything needs love」という自分の楽曲でフィーチャリングで歌ってもらいました。その楽曲を松浦(勝人)社長が気に入ってくださったことがきっかけで、食事をしようという話になりました。それをご縁に親しくさせていただくようになり、その後avexへというお誘いを頂いて移籍することになりました。
経済的な意味で言えば、ソニー時代に一時期ピークを迎えていました。楽曲が売れればお金が入ってきますが、お金のために音楽をやることには疑問を感じていたこともありました。そこで、プロデューサーや楽曲制作を一旦やめて、「ダンス・ミュージックを徹底的にやりたい。DJとして海外で勝負してみたい」と思ったんです。それを松浦さんに伝えるとOKしてくださって、海外でチャレンジすることになりました。
「なんでそんなダンス・ミュージックなんかやっているの?」という声もあったのですが、僕が僕らしく音楽に携わるために必要だったと思っています。
こうした経験をいかしながら、これからは日本の音楽シーンがもっとワクワクするような環境になるためには、自分がどんな活動をすればいいかを考えながら力を注いでいきたいと思っています。
大学と音楽の関係
吉田 今の若い人たちの音楽との関わり方をどう思いますか。
大沢 1980年代とは違い、今は音楽に限らず、ものすごくさまざまなアプローチが用意されています。さまざまなものがあふれかえっていて、逆にありすぎてどうやってつきあっていいかわからないかもしれません。
音楽は誰にでもつくれます。そこに、自分の人生を投影しようとするともちろん難しいのですが、楽曲自体は昔よりも簡単につくることができます。カラオケに行ったことがない人はいないでしょう。音楽が生活の中に必ずある、それだけ音楽が身近になっているということです。
しかしながら、可能性がありすぎて難しいという側面もあります。まずは一歩進めるかどうかでしょうね。
吉田 これまで千葉商科大学では、地元の方とのジャズライブ、ストリートミュージシャンやオペラ歌手によるステージなど、音楽に関しても色々な試みを行ってきました。
来たる2015年4月をメドに新しい学生食堂の建設、さらには瑞穂会館リニューアルを計画しています。
こうした施設をいかしながら、DJを養成するなど、大学生活をより豊かに過ごせるように音楽を楽しめる場をつくりたいと考えています。そこで、大沢さんにこの大学の音楽プロデューサーになっていただき、大学でいろいろな音楽を楽しむ機会を一緒につくっていきたいと考えているのですが、いかがでしょうか。
大沢 ぜひ、やりましょう。千葉商科大学の音楽プロデューサーだからといって何ができるかわかりませんが、学生たちに「このおっさん、意外とやりよるわ」と思われるようなことはしたいと思います(笑)。
テクノをはじめダンス・ミュージックで踊るのは絶対楽しいはずです。今は学校でダンスの授業もあるわけですし、大学でもみんなで踊れるような音楽を楽しめたら最高だと思います。
吉田 ライブハウスやクラブなんかも大学の中につくっちゃいませんか。
大沢 いいんですか(笑)。
日本では10代だとクラブに入れないようですが、海外でクラブに行くと、大きなフェスのオーディエンスはほとんどが10代なんですよ。今、EDM(Electronic Dance Music)が世界で最も人気のある音楽ですが、そう考えると若い人たちにとって、日本に生まれただけでこうした音楽に出会う機会がないというのはハンデキャップだと思うんです。
その一方で、これまで日本の大学にないということは、学生たちにとっても新たな気づきやかつてない学びの場になるはずです。ぜひ、みんなで面白いことをやっていきましょう。
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