千葉商科大学サービス創造学部
In-Campus Real Business Learning/市場調査ユニット
2017年2月、千葉商科大学サービス創造学部の市場調査ユニット(2015年度「キャンパスマーケット・プロジェクト」より改称)のメンバーが、公式サポーター企業「ぴあ株式会社」に参加型イベントのアイデアを提案した。若者ならではの新しい発想で生み出されたイベントとはどのようなものになるのだろうか。
大学生がいま一番したいことは「眠ること!」
千葉商科大学サービス創造学部では、2015年度より経済産業省の「産学連携サービス経営人材育成事業」として採択されてきた独自の教育プログラム「In-Campus Real Business Learning」を実施してきた。このプログラムは、同学部の公式サポーター企業と同学部の学生が連携し、企業の課題を解決するとともに、キャンパス内でリアルビジネスの実践を行うカリキュラムを開発するというもので、市場調査ユニットもその活動の一環だ。
2015年度「キャンパスマーケット・プロジェクト」の最終報告会で提案された「集まって眠るだけのフェス・エンタテインメントサービス」、その名も「眠(ねむ)フェス」のアイデアをもとに、2016年度は具体的な施策案を新メンバーで考えてきた。
そもそも、本企画は、2015年度のキャンパスマーケットにおいて大学生に「今一番したいことは何ですか?」というアンケート調査を行った結果、「眠りたい」という項目が1位に上がったことに端を発している。メンバーたちは5カ月間、分析・調査を行い、イベントを行うための具体的な企画趣旨や目的などを明確にしていった。
量と質を重視した睡眠改善イベント
■企画趣旨
大学生の好きなフェスを掛け合わせることによって、大学生や若者に対し、
「睡眠の大切さ」「大学生の健康」について訴えたい。
■ターゲット
10~20代の若者
■社会背景
現代の大学生は学業や遊び、アルバイトを優先して、睡眠の重要性を軽視する傾向にあり、
日中の行動に支障をきたすかくれ不眠の大学生が多いこと。
■目的
1.不眠症のリスクを知ること。
2.睡眠の重要性を考える。
3.眠りとフェスを掛け合わせることで新しいエンタテインメントを提案。
日本人の平均睡眠時間は7時間50分と極端に少ないわけではない。しかしながら、調査していくと、10~20代は4時間以下の睡眠の割合が圧倒的に多いことが分かった。さらに、質の低い睡眠は脳の働きを低下させ、病気のリスクを高めるが、質の高い睡眠は脳の働きを高め勉強や仕事の効率を上げ、病気予防にもつながるという。そこで、メンバーは量だけではなく質をも重視した睡眠改善を、このイベントで打ち出したいと主張した。
さらに、集まった人たちでただ眠るだけでなく、五感の中でもとくに、視覚(照明の明暗調節)、聴覚(眠くなる音楽と目覚めやすい音楽)、味覚(眠くなるお茶/クワンソウ茶)に訴えながら眠りに誘うというコンセプトを掲げた。
そのうえで、「ごろ寝フェス」、「プラネタリウム」、「アーティストの前で寝る、アーティストとともに寝る」、「催眠術」、「落語」、「ライブ」など、眠りとエンタメを組み合わせた祭り(フェス)=眠フェスを提案した。さらに、ぴあ社においてのメリットとして、若者が興味のないアーティストにも興味・関心をもつことによって、エンタメ市場の収益が増え、また一方で、さまざまなジャンルを絡めることによって、若者市場だけではなく、高齢者市場に向けたエンタメ市場の開拓もできる、と結論付けた。
課題は山積。しかし具体性が見えてきた
このプレゼンを受け、ぴあ社からは、「初めて行うイベントの情報をどのように告知していくか」(梁晟柱氏/メディア・プロデュース事業局ライブクリエイティブプロデューサー)、「何をもって成功とするのか、ゴールイメージをしっかり立てるとよいかもしれません」(福井由貴さん/事業統括本部事業統括推進室)、「次につなげるためにどのように情報を拡散していくか」(小森崇史氏/事業統括本部事業統括推進室チーフプロデューサー)など、さまざまな意見が寄せられた。
同学部の特命教授でもある、ぴあ社の木本敬巳取締役は、「具体性が目に浮かぶようなものになってきていると思います。ひとつのアイデアに対し、最低3つくらいは他案を考えることが大事です。イベントはつくってみないと分からないことが多い。初回は赤字でも、失敗を糧に、次につなげていくイベントにしてほしいと思います」と学生たちに檄を飛ばした。
その後、実際に北海道で健康課題と向き合う音楽祭を企画している、株式会社アクティブ・ケアの主任であり、作業療法士の五木谷純平氏から、眠りの重要性とイベントの企画内容についてレクチャーを受けた。担当の西根英一特命講師は、「五木谷さんがおっしゃった、“眠りが脳の空き容量が増やす”というのはすごく重要なことです。スマートフォンも24時間、365日つけっぱなしにすると、電池の減りが早くなるのと同様。学生も睡眠というシャットダウンを繰り返し行うことで、脳の空き容量を増やすことが大事なのです」と語ると学生たちも深くうなずいた。
西根特命講師は「学生たちはまだ十分に深く調べきれていません。実際にビジネスを動かすには、もっと調査が必要だということが改めて理解できたと思います」と反省点を述べると、担当教員の仁平京子専任講師も「吉田優治学部長の言葉の通り、大学生はとくに専門書を読むことが必要です。今はインターネットの文献だけですが、専門書の文献サーベイをする(既存の論文や本を調査する)ことで、企画の精度が上がると思います」と次年度に向けてのアドバイスを行った。
自分たちが飛躍できるようなユニットづくりを
プレゼンを担当し、次年度も続ける姿勢を表明した淵上大地くん(同学部1年)は、「高校生の時にはプレゼンを行うことはもちろん、資料づくりもしたことがなかったので、すべてが初めての経験でした。調べ方が不十分だったと痛感しています。また自分はまとめ役でしたが、メンバーが意見を出しやすい環境をつくることができませんでした。高校では弓道部の主将をしていたので、まとめることにはある程度自信があったのですが、大学生になってみると、高校とは全然違い、自分の詰めの甘さが露呈したと思います。ただ、こうした発見があったことは自分が成長できた点だと自負しています」とすがすがしい表情を見せた。
また、同じく当日発表をし、資料づくりも行った瀧澤航一くん(同学部1年)は、「企業の方の前でのプレゼンは初めてでしたが、もっと伝わる資料づくりを行わなければいけないと思いました。課題がたくさん残りましたね。木本先生をはじめ、こうしたチャンスをくれた大学にも感謝したい。今後は、さらに自分たちが飛躍できるユニットにしたいと考えています」と意気込んだ。この活動を通し、それぞれ成長した姿がうかがえた。
※本記事における役職・学年は、2017年2月現在のもの。
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