経験することの大切さを認識してほしい 

――大学教員となった今、社会人時代の経験は生かされていますか。

今井 就職活動をする学生を支援する立場としては、一見よさそうに見えても就労規則が整備されていない企業はお勧めしたくないものです。また、大企業だから安泰という時代ではないからこそ、どういう企業を選ぶべきかを学生にもよく考えてほしいと思っています。これらは、会社の経営が苦しい時に労働組合にいた経験から思うことかもしれません。
また学生には、壁にぶつかって苦しくなった時に、すぐ会社を辞めるのではなくまず私たちに相談をしてほしいとお願いしています。必ずしも彼らの悩みをすべて解消できるわけではないでしょうが、「今はそうだけれど、それが未来永劫続くだろうか」といった時間的な視点を含め、少なくともこれまでに得た経験や知見に基づいたいくつかの示唆は提示できるはず。新しい視点をもつことで乗り越えてほしいと思っています。

 

――今の学生を見ていて感じることはありますか。

今井 高校入試や大学入試をはじめ、さほど厳しい競争にさらされていないからなのかもしれませんが、歯を食いしばって我慢できる学生が少ない気がします。やる前から、想像で諦めてしまっているケースも多い。でも経験せずにイメージだけで判断するのは貴重なチャンスを失っているわけですからもったいないと思うんです。
私が身をもって体験したように、社会に出れば決して楽しいことばかりではありません。でもそれをも刺激的だと楽しむことができるかどうか。そのためには、いろいろな経験が必要です。大学でのプロジェクト活動に没頭するのもいいし、アルバイトするのもいい、旅行に行くのもいいし、お金を貯めて背伸びをした買い物をするのもいい。自分なりにチャレンジをして、さまざまな経験を積み重ねながら20歳前後の大切な時間を過ごしてほしいですね。

 

大学の発展を通じて我々も発展する

――これからの大学のあり方についてはどのようにお考えですか。

今井 ヤナセが苦境に立たされた頃、社員が先頭に立ち、誰もがコスト削減を意識していました。「自分たちの発展」ばかり考えていた社員が、「会社の発展を通じて自分たちを発展させよう」と一致団結して苦境を乗り越えていったのです。
実は同じことが大学においても言えると思います。これから大学経営もますます厳しい時代になるでしょうが、学部の垣根を越え、教職員が一丸となって盛り上げていかなければなりませんよね。
すべての目的は「学生の幸せ」を醸成すること。学生たちが学んでよかったと思えるように、青くさいことを愚直に実践するということが大切だと思っています。

 

――学生たちにどんなことを伝えたいですか。

今井 私たちはいわゆる偏差値主義ではなく、実社会を意識した教育に取り組んでいます。 高校までの学びから大きく飛躍できる学部だと思いますから、いろいろなことに対して前向きにチャレンジしてほしいですね。
そしてチャレンジする学生たちに対して、「大人の本気を見せたい」と思うんですよ。学生と真剣に向き合って、大人が「本当の本気」になったらすごいんだぞ、そんな気概を言葉と態度で伝えていきたいなと思っています。

 

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<プロフィール>

今井 重男(いまい・しげお)

0007901992年千葉商科大学商経学部卒業。同年(株)ヤナセ入社。社員研修などを販売事業に従事した後、労働組合専従役員となり委員長を務める。その後子会社へ異動、総務課長を務める。企業に勤めるかたわら、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科修士課程修了。その後、筑波大学大学院システム情報工学研究科博士後期課程を修了。2010年より千葉商科大学大学サービス創造学部准教授に就任。「人的資源管理論」の講義を担当。労働市場(雇用戦略、労働市場分析)、多様就業、キャリア形成、労使関係、社会経済の構造変化と働き方の変化、ブライダル産業などを研究する。専門は人的資源管理とブライダル産業。

▼詳細はこちら
http://www.cuc.ac.jp/achievements/teacher/001361.html

 

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