サービス創造ビジネスフォーラム2016

2016年2月19日(金)、千葉商科大学にて「サービス創造ビジネスフォーラム2016」が開催された。このフォーラムでは、同大学がサービス創造学部の公式サポーター企業を招いて講義や意見交換の場を提供することで、異業種間におけるビジネス交流の活発化を目指している。今年のテーマは、「若者の心をつかむサービス」について。果たして、どんな話が飛び出したのだろうか?

 


「TRANSIT」の中村貞裕特命教授、「コスメキッチン」の椋林裕貴氏が登壇

フォーラムでは、第一部でゲストスピーカーによる講義と意見交換会、第二部では懇親会が予定され、多くのビジネスマンが来場した。
冒頭、同大学サービス創造学部の吉田優治学部長が挨拶。続いて、先日、同大学の学食「The University Dining」でお披露目が行われたALSOKビルサービス株式会社の「ALSOK清掃儀仗隊」による清掃パフォーマンス(※1)が行われると、予想外の展開に会場がひととき和やかな空気に包まれた。
 

講演に先立ち、「学問から学ぶ、企業から学ぶ、活動から学ぶ、これがうまく回ればサービスを創造する人材がつくれると考えています」と挨拶を行う同大学サービス創造学部の吉田優治学部長。

 
フォーラムの目玉であるゲストスピーカーは、同大学サービス創造学部の特命教授であり、世界一の朝食を提供する「bills」をはじめ「マックスブレナー」、「アイスモンスター」など話題の店舗を運営する株式会社トランジットジェネラルオフィス代表取締役社長・中村貞裕氏と、世界中のナチュラル&オーガニックコスメを揃え、人気の「コスメキッチン」を運営する株式会社マッシュビューティーラボ代表取締役副社長・椋林裕貴氏。若者層にヒットするビジネスを展開してブームを創り出し、日本に新しいカルチャーを根付かせている両氏の話を直に聞けるとあって、特別参加した学生達はもちろん、ビジネスの第一線で活躍する来場者も熱心に耳を傾けていた。
 

ALSOK清掃儀仗隊がパフォーマンスを披露。


「インプットした情報をアウトプットすることでさらにいい情報が集まる」
--中村貞裕特命教授

最初に登壇した中村特命教授は、流行りそうなビジネスをいちはやく見つけ、メディアを巻き込んでさらに大きなブームにしていく、いわば“ブームの仕掛け人”だ。
「僕は今何が話題になっているか、常にあらゆるメディアに目を通して情報をインプットし、仕入れた情報はSNSなどで積極的にアウトプットしています。そうすることでどんどんいい情報が集まってくるし、情報を見極める目が養われるんです」とセンスと情報力の磨き方について語った。
また、手がけた事業には、メディアが食いつきそうな細かな仕掛けを準備しておくという。たとえば、「bills」で使われている「世界一の朝食」といったキャッチフレーズ。
「メディアに出た時に一人歩きしてくれるキャッチフレーズをつけることが大事。たとえば、その事業が海外発のものなら、現地の新聞で使われていた用語やその店のセレブリストを入手して考えます。また、看板メニューなど店のコンテンツをできるだけ書き出すことで、雑誌の企画で使われやすいようにしておきます。
こうして次々とブームを巻き起こしてきた中村特命教授だが、ブームというのはあくまで一過性のもの。終わったらどうするのか? 
「スタイルやカルチャーとして定着させます。たとえばbillsでは、それに競合する他社も合わせて『朝食カルチャー』として企画、宣伝しました。ブームという小さなさざ波を、他のさざ波と合わせてカルチャーやスタイルという大きな波に育てていく。これが僕らのやり方で、実は企業が参入して大きなビジネスになるのは、このカルチャーに移行するタイミング。ですから、僕らは常にブームの立役者としてのポジションを大事にしつつ、スタイルやカルチャーになるものを見極めていきたいなと思っています。」
 
そんな中村特命教授が今注目しているキーワードは、「ホテル」「健康」「ウェルネス」。特に、今はホテル事業に関われば、メディアに取り上げられやすいという。1時間足らずで、これまで蓄積してきた緻密な手法を惜しみなく提示してくれた中村特命教授だが、最後に、「運、センス、縁……ビジネスに必要なものはいろいろありますが、最も大切なものは情熱。それを日々実感しています」という熱い言葉で話を締め、椋林氏にバトンを渡した。
 

「僕はミーハーが売り。ひとつひとつの知識は浅いけれど、その代わりトレンドを知っています。それがビジネスになりました」と中村特命教授。


「発信側が幸せであることでビジネスが生まれる」
--椋林裕貴氏

千葉商科大学の卒業生でもある椋林氏。ビジネスの基本にあるのは「幸せである」ことだという。
「自分自身はもちろん、共に働く従業員、関わっている仲間がその仕事に魅力を感じ、幸せであれば、消費者にハッピーのお裾分けができる。それがコスメキッチンであり、ビープルという店なのだと思います」と話す。
“自然界の約束を守っている商品”=オーガニックという明確なコンセプトに発信者自身が強く思い入れ、その熱に消費者が共鳴してビジネスが成立していく。事実、12年間、既存店合計では一度も前年割れはなかったという。
「僕が従業員として採用するのは、セールス力を誇っている人ではなく、この仕事に関わって幸せだと感じる人。それが正しいと数字が証明してくれているんです。」
今後はメディアや芸能人を集めてビープルフェスを開催して業界を盛り上げ、さらに日本中にオーガニックという価値観を広めるきっかけになればと考えている。また、そこにスポーツを加えてビジネス展開を模索している。
「僕たちが必要とされている場所で、等身大のビジネスが続けられればいいなと思っています。」
 

「オーガニックの物を試して2カ月経つ頃には、『世の中、環境に良い物を届けたい』と信念を持って思うようになりました。オーガニックの一番の魅力は人の心に作用することだと気づきました」と椋林氏。

 

ゲストの話に聞き入る学生達。


ゲストトーク終了後、懇親会で企業が意見を交換

講演を受けて、参加者からは様々な感想、質問が投げかけられた。イオン・エンターテイメント株式会社の阿部信行氏は、「企業の中での人材育成方法」について質問。中村特命教授は「自分と体験を共有させる。また、したいことを明確に、何度も社員に伝え思いを共有していく」と答えた。
また、ALSOKビルサービスの今井信代表取締役は、「インプットして、アウトプットするという話は若いスタッフが新しい発想を見いだせるきっかけになる、学ぶことが多かった」との感想を述べた。
その他多くの出席者からも有意義だったとのコメントが聞かれた。
 

質疑応答での一コマ。プライベートでも友人同士の二人は、中村特命教授が伊勢丹時代に主催していたパーティで出会ったのがきっかけ。当時パーティは各業界で話題になっていたという。「あの時の人とのつながりが起業後も役立っています」(中村特命教授)
「中村さんから誘われて正月3日間、一緒に走った姿をSNSにアップしたら、『またブームなの?』といろんな人に聞かれました(笑)」(椋林氏)

 

イオンエンターテイメント株式会社・阿部信行氏(当時)。

 

ALSOKビルサービス株式会社・今井信代表取締役。

 

ヤマト運輸株式会社の長谷部恵さんからはトレンドを探り出すヒントを、佐川急便株式会社の菊池秀男氏からは女性の才能を伸ばす方法についての質問がそれぞれ投げかけられた。それに対し、中村特命教授は「ビジネスは縁と運とセンス。いいセンスにできるだけいいセンスに触れる、その積み重ねが大切」と語った。椋林氏も「勇気を持って挑戦した企画が後で身になる」と話した。

 

佐川急便株式会社・菊池秀男氏。

 

ソフトバンクグループ株式会社・大久保隆氏。

 

日本航空株式会社・松本律雅氏。

 

ゲストトーク終了後は、トランジットジェネラルオフィスが手がけた同大学の学食「The University Dining」で懇親会が行われた。ビュッフェ形式のおいしい料理と飲み物で情報を交換、新たな交流に花が咲いた。

 

<プロフィール>

中村貞裕(なかむら・さだひろ)

株式会社トランジットジェネラルオフィス 代表取締役社長
1971年生まれ。慶応大学法学部卒業後、伊勢丹へ入社。30歳の時にトランジットジェネラルオフィスを設立。その後、カフェ「Sign」、ホテル「CLASKA」の企画、世界一の朝食「bills」の運営など、話題の店舗・空間を次々とプロデュース。グループ会社として、ケータリングイベント会社「TRANSIT CREW」、不動産プロデュース「REAL GATE」、人材紹介会社「Departure & Partners」など、さまざまな事業を展開している。千葉商科大学サービス創造学部特命教授。
 
椋林裕貴(むくばやし・ひろたか)

株式会社マッシュビューティーラボ 代表取締役副社長
株式会社マッシュスポーツラボ 代表取締役副社長
1970年生まれ。千葉商科大学商経学部経営学科卒業後、銀座プランタンに入社。2005年株式会社ファッションウォーカーの立ち上げに参画し、「東京ガールズコレクション」にブランドプロデューサーとして貢献。その後、「コスメキッチン」を起業し、2010年、株式会社マッシュスタイルラボの傘下に入り、株式会社マッシュビューティーラボを立ち上げる。2015年、美容とスポーツを絡めたビジネスを展開する株式会社マッシュスポーツラボを立ち上げた。
 
 

(※1)
清掃×ダンスで、サービス創造!/ALSOKビルサービス株式会社×千葉商科大学サービス創造学部

 
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