千葉商科大学サービス創造学部
ジェフ千葉・プロジェクト
「マザー牧場・ジェフユナイテッド市原・千葉観戦ツアー」

2017年11月19日、師走並みの気温の中、千葉商科大学サービス創造学部のジェフ千葉・プロジェクトのメンバーが企画した「マザー牧場・ジェフユナイテッド市原・千葉観戦ツアー」が開催された。参加者はプロジェクトメンバー25人のほか、同大学・他大学の学生を含めた約90人。フクダ電子アリーナで開催されたジェフユナイテッド市原・千葉対横浜FCのホーム最終戦を盛り上げるべく企画された本ツアーに、Kicky!編集部が密着した。

 

広告担当の5人が今回のパンフレットを作成。中には、寄付していただいた企業のオリジナルのチラシを挟み込んだ。
 


ジェフ千葉、奇跡の逆転でプレーオフ進出

同学部のスポーツビジネスプロジェクトのひとつ、ジェフ千葉・プロジェクト。このプロジェクトでは、同学部の公式サポーター企業であるプロサッカークラブ「ジェフユナイテッド市原・千葉」の運営会社と連携しながら、学生たちが球団を活性化させるための取り組みを行っている。
今年、ジェフ千葉・プロジェクトでは、ホーム最終戦を観戦しつつ、千葉を満喫するためのツアーを企画することに決めた。春学期から準備を始め、7月初頭にはプロジェクトメンバーでプレツアーを実施。そこで得た反省、失敗、手応えを踏まえ、メンバーは約4カ月間でツアー内容を練り直し、今回、満を持しての開催となった。
 

朝9時に津田沼駅に集合した一行は、ジェフユナイテッド市原・千葉のマスコットにちなみ「ジェフィ号」「ユニティ号」と名付けられたバス2台に乗り込み、まずはマザー牧場へ。トラクタートレインに乗って動物と触れ合うことができる「マザーファームツアー」に参加した。大きな角を持ったものやパンダ柄などの珍しい牛を目にしたり、アルパカや、ヤギ、羊に餌やりをしたり、牧羊犬が羊を追う様子を見たりと、非日常体験に参加者たちも大満足の様子だった。
 

その後のバスの中では、ゲームやクイズ大会、応援練習などをして参加者の気持ちを高めながら、いよいよジェフ千葉のホーム最終戦が行われるフクダ電子アリーナへ。スタジアムは15,964人と満員の観客に包まれた。
試合序盤はジェフ千葉のオウンゴールで失点するも、前半30分に同点ゴールを決めて1−1で前半を終了。そして、後半45分を過ぎたアディショナルタイムでは決勝ゴールを決め、2対1でジェフ千葉が快勝、連勝記録を7に伸ばした。この日の試合は、チームの勝利に加えて他チーム(徳島、東京、松本)の結果次第で、チームのJ1昇格プレーオフ進出がかかっていたが、見事チームは大逆転でプレーオフ進出を決めた。この奇跡の勝利を目の当たりにした参加者たちは、ハイテンションのまま、ツアーラストとなるスポーツバー「HUB」へ行き、交流を楽しんだ。
 
 

ジェフ千葉対横浜FCの試合を楽しそうに観戦するツアー参加者。
 
 


若者の観戦離れを解消すべく誕生した企画

そもそもこの企画は、昨年度、プロジェクトメンバーたちがジェフ千葉のインターンシップで観戦調査を行い、分析した結果をもとに考え出した案だ。企画を提案した広報担当の布村沙耶さん(サービス創造学部3年)は、「昔からのファンは来ているけれど、新たに観戦に来る若者たちが少ないことを、私たちのグループでは問題視しました。その理由として立てた仮説は、サッカースタジアム以外に、楽しめる場所やことがたくさんあふれているからではないか、ということでした。ただ、サッカー観戦だけを目的に集客を考えると、初心者にとっては足を運びにくい。そこで、サッカー以外の見どころを付加価値にしたバスツアーを提案し、ジェフユナイテッドのみなさんにも賛同を得てスタートしました。でも、スポーツは当日まで結果がわかりません。負け試合だったら楽しくなくなる可能性もあるので、リスクがあると感じました。今回は結果もよくて、本当にうまくいったと思います」とメリットとデメリットを上げた。「昨年は、企画を考えることだけで、実践は今年が初めて。私自身、この企画を具体的に立てるまで、サッカーのルールもあまり分かっていない状態でした。みんなに魅力を伝えるには自分が熟知することが必要と思い、調べているうちに面白くなってきたというのが正直なところです。ただ、学内での手続きのために申請書を書いたり、企業の方とのやり取りをしたりすることは、本当に大変だと実感しましたし、スムーズにいかなくて焦りました。一方で、後輩たちが現状を把握しきれていないのに、上級生の私たちがいろいろと求めすぎてしまっていた部分があったと反省しています。でも、パンフレットやチラシづくりは、自分が所属するマーケティングのゼミで学んだことが生かされたと思いますし、コンセプトを考えるのもすごく楽しかったです」と笑顔を見せた。
 

ツアーのバスガイドも務めた広報担当の布村沙耶さん(左)とプロジェクトリーダーの金井佑里菜さん(右)。布村さんは「今までやっていなかったInstagramとTwitterを始めてみました。今回、広報以外に営業活動もお手伝いしましたが、初めての体験ですごく難しかったですね」と話す。金井さんは、「ツアーとは直接的に関係ないのですが、ジェフのインターンのまとめ発表会の時に間に合わず、3年生の4人でお泊りしながら頑張ったのが、プロジェクト活動のいい思い出になりました」と振り返った。
 
 


初めての営業活動

今回、新たなチャレンジとなったのは、メンバーたちの営業活動だ。「スポーツ観戦の機会を増やす」ことをめざすプロジェクト活動の趣旨を伝え、賛同いただける地元企業に寄付を仰いだ。10月の頭から営業活動を始め、1カ月という短い期間の中で学生たちは8社145,000円の協賛寄付金を集めた。学生たちにとって初めてのスポンサー営業は簡単なものではなかった。営業部のメンバー8人は、市川市周辺の企業40~50社をリストアップし、電話営業を行ったが、話を聞いてもらえず電話を切られることもしばしばだったという。実際に話を聞いてもらえたのは15社程度だった。
「本当に大変でしたが、社会に出る前に社会人としてのマナーを知ることができたことをはじめ、このような経験ができたのはよかった」と話すのは、営業担当のリーダーを担当した塚田華衣さん(同3年)だ。「営業のあり方について教えてくださった脇田雅史特命講師(オービックシーガルズ運営事務局、チームセールス担当)から、リーダーシップを発揮してメンバーを動かすのがリーダーの役目だと言われました。みんなが手伝ってくれないと決めつけて全部自分ひとりでやろうと思ってしまいがちでしたが、仲間を頼ることも大事だったのかもしれません。また、企業の方に協賛金をいただくことは、右も左も分からない私たちにとってすごく高い壁でした。言葉遣いやメールの文章などもすごく大変で、(担当教員の)中村(聡宏)専任講師や脇田特命講師にもたくさんアドバイスをもらいました。その結果、熱意を伝えれば自分たちの考えに共鳴してくれる人もいると分かってすごく嬉しかったです。営業に行く時に、企業の方に私たちの活動のダメなポイントを常に聞くようにしていたのですが、色々とアドバイスをいただいたことが勉強になりました。企業の方々が拙い営業でも許してくださったのは、私たちが大学生だったからこそ、と思います。本当にいい経験になったと実感しています」と笑顔を見せた。
 
 

脇田雅史特命講師(左)と、塚田華衣さん(右)。“師弟”が握手し、健闘をたたえた。
 
 

営業チームの中でも、市川自動車教習所から10万円の寄付金を取り付けた長谷川恭介くん(同2年)は、「教習所に何件か電話したら、市川自動車教習所の方が話を聞いてくださると言ってくれました。今考えると、事前準備が足りなかったと思うのですが、先方から色々教えていただき、逆に条件も提案してくださいました。全体を通しては、うまく思いを伝えられないことも多く、シミュレーションなどの準備や場数が重要だと感じました。それでも、“頑張って”と言われた声が自分たちの力になりました」と顔をほころばせた。同じく、営業部の高屋敷諒太くん(同2年)は、「初めてのことで、色々な部分が欠けていたと思います。失敗を繰り返さないためにどうすればいいか、また今回の反省をどう生かしていくかが大事なのかなと思いました。自分はメール担当をやらせてもらいましたが、文章を書く能力があまりにもなかったと痛感したので、来年はそういう授業を取って克服していきたいと思っています」と抱負を述べた。
 
 

営業部の長谷川恭介くん(左)は、「企業の重役の方とお話をする機会は、いい経験となりました。ゼミではマーケティングを勉強しているので、相手にどう伝えるかという部分の能力をもっと養っていきたいと思っています」とコメント。同じく高屋敷諒太くん(右)は、「企業の方への依頼メールは、メンバーとも指摘しあいながら作成していましたが、日本語はすごく難しいと感じました」と語った。
 
 


もっと自分事にするために

バスガイドとして、ビンゴゲームやクイズなどの進行を担当し、車中を盛り上げた加藤一樹くん(同2年)は、「もっと前から準備しておけばよかった」と反省を口にした。
「今回は集客することもひとつの目的でしたので、仲良しの先輩に相談したら自分の思いに共感してくれて、結果的に多くの仲間が参加してくれました。本当はバス3台、120人集めたいと思っていたのですが、最終的にはバス2台、90人。それでも、ほかのプロジェクト活動をしている学生たちが参加してくれて、プロジェクト同士の絆が深さに感謝しています」と話す。一方で、「今回、企画側であるメンバー全員が、当事者意識を高く持ってツアーに参加できていたか、と考えると不十分だったんじゃないかと思っています。講義中、あるいはプライベートでももっと意見しあい、メンバーとともに士気を高められていたら、他人事ではなく自分事になったのでは、と反省をしています。とはいえ、自分自身も最初はプロジェクト活動に対して他人事だったところもありましたが、3年生の女子4人を中心に頑張っている姿に刺激を受けて、僕も頑張ろうと心を入れ替えたんです。今回、みんなが楽しいって言ってくれたのがすごく嬉しかったし、それがツアーの成功だと僕自身はとらえています」と笑顔を見せた。
 

会計担当のリーダー、吉田早希さん(同3年)はサッカー観戦後のHUBでの懇親会を企画した理由として、「プレツアーを行った時のアンケートに、サッカー観戦後にそのまま解散してしまうのが寂しいと書かれていたから」と明かす。「今年9月のインターン時に、ジェフのスポンサーのひとつであるHUBを使って観戦の後の交流の場をつくりたいと提案しました。ジェフユナイテッドの方からも、Win-Winの関係がつくれると興味を示していただいたので、その提案を実践に移してみました。色々な企業のインターンの面接に行っているのですが、今回のプロジェクトでの経験は自分にとって大きな強みとなっています。企画・提案する立場になり、誰に何を伝えたくてこの企画を提案しているのかを考えるようになりましたし、うまく相手に伝わっているかいないかも肌で感じられるようになりました」と振り返った。
店舗と協力し、未成年者の飲酒リスクを防ぐために、受付時に入念なIDチェックを行い、リストバンドを着けるなどの工夫をした上で、周囲に呼びかけ未成年者飲酒防止への協力を促していた。その中で懇親会は大いに盛り上がり、新たな友情も芽生えたようである。

 

2号車のバスガイドも務めた吉田早希さんは、「経営論や組織論を学んできて、頭では理解しているつもりでしたが、いざ実践となるとうまく下の人たちを動かせなかったり、リーダー同士もうまく情報共有できていなかったり、難しさを感じました」と反省を口にした。
 
 


反省点は数多。余裕を持って行動を

プロジェクトリーダーを務めた金井佑里菜さん(同3年)は、「反省点は数多くあります。ツアーを主催して下さったエイチ・アイ・エスなど企業との交渉をはじめ、大学への申請書類の承認がなかなか下りなかったこともあり、参加者募集などツアー実施に向けてやるべきことがギリギリになってしまいました。基本的にプロジェクトの前の時間は空きコマにして、そこで各々役割分担することを決めていましたが、結果的には営業担当チームばかりが忙しくなり、それをうまく調整することができなかったのは代表として反省すべき点です。私がジェフユナイテッドの担当者にメールをする役割でしたが、ビジネスメールは難しかったです。私自身、そもそもメンバーを引っ張っていくタイプではないので、人に説明したり、アドリブでうまくみんなに伝えたりするのは大変でした。これから就職活動も始まり、履歴書やエントリーシートを書く時期になりますので、何事もギリギリではなく、余裕を持って行動できるようになりたいです」と今後の抱負を述べた。
 

担当教員の中村専任講師は、「バスツアーを企画するにあたっては旅行業法の問題などもあり、公式サポーター企業であるエイチ・アイ・エス社に主催していただき、学生たちの企画を反映していただく形で実現に至りました。その中で、“参加する学生の立場としては……”また“どうしたらサッカーに興味のない学生でも楽しんでもらえるか……”という顧客視点の意見が数多く出て、彼らなりに解決しようと努力していた姿は頼もしく感じました。右も左も分からない中で、ゼロからイチを生み出す取り組みは、メンバー全員が大変さを痛感したと思います。まずはしっかりと、良い点悪い点を振り返り、今後の学生生活、そして人生に活かしていってほしいと思います」と学生たちをねぎらった。

 
 

今回のバスツアーの中心的存在となった3年生の4人。試合会場では、メガホンやタオルを振って率先してジェフ千葉を応援した。
 
 


【「マザー牧場・ジェフユナイテッド市原・千葉観戦ツアー」 Photo Album】

JR津田沼駅前の要所要所に、バスツアーのチラシを持って案内するジェフ千葉・プロジェクトのメンバー。その結果、大半の参加者が迷うことなく、集合場所に到着できた。
参加者の名前をチェックしていく吉田さん。2台のバスは、1号車にジェフィ号(兄)、2号車にユニティ号(弟)とそれぞれジェフ千葉の秋田犬の兄弟のマスコットの名が付けられた。
1号車ジェフィ号のバスガイドを務めた加藤くんは、「大学に入って何も勉強していなかったのではないかと感じてしまうくらい、色々反省点があります。ビジネスを学ぼうとこのプロジェクト活動を行っていますが、正直言葉遣いとかもまだまだですし、座学ではもっとマネジメント能力を高めていきたいと思っています」と意気込んだ。
車中では、BINGO大会や、人物当てクイズなど、色々なゲームが行われ、選手のサイン入りユニフォームやバッグなど、ジェフ千葉にゆかりのグッズが景品になった。
マザー牧場に到着!トラクタートレインに乗ってマザーファームツアーへ。これからどんなツアーが始まるのか、参加者もワクワクしている様子。
牛舎で子牛にミルクを上げるガイドさん。母親のミルクを飲むのと同じように、ガイドさんは、ボトルを下に向けて子牛にミルクをあげるのだという。
トラクタートレインを降りて、ヤギや羊に餌を与える参加者たち。「くすぐったい」などと言いながら、存分に満喫していた。
羊たちとたわむれながら写真を撮るプロジェクトメンバーと参加者たち。楽しそうな様子が伝わってくる。
ガイドさんの笛に従い、牧羊犬が羊を追う。賢い犬の動きに、全員が感嘆の声をもらした。
いたるところで人だかりができ、記念撮影を始めるメンバーや参加者たち。
マザー牧場前で、参加者、メンバーと一緒に記念の一枚。
車中のクイズ大会では、参加者も大盛り上がり。バスガイドを務めた塚田さんは、「参加者の皆さんの反応が心配でしたが、楽しんでくれてたようでよかったです」と話した。
クイズ大会はチーム対抗戦で行われ、一歩も譲らぬ大接戦! 上位チームには、景品のお菓子が配られた。
2号車のユニティ号では、フクダ電子アリーナに向かう道中で、サッカーを初めて観戦する人にも分かりやすいルール解説が行われた。参加者も真剣に聞いている様子。
ジェフ千葉のマフラータオルを片手に応援するぞ!
大声を出してジェフを応援する。非常に寒い日だったが、白熱した試合展開に体も温まりそうだ。
ホーム最終戦とあって、大勢のサポーターが駆け付け、スタジアムは15,964人の超満員。
90分過ぎのアディショナルタイムで、決勝点を決める劇的勝利に、参加者たちも立ち上がって大興奮!
試合後の車中では、協賛企業や店舗の魅力を伝える紹介が行われた。
担当の中村聡宏専任講師は、「多くのみなさんがジェフ千葉・プロジェクトを盛り上げてあげよう、と集まってくれたのはすごく嬉しかったです。これが一歩目なので、これから温かい目で応援していただきつつ、叱咤激励もしてあげてください。ジェフ千葉・プロジェクト、そして、千葉商科大学サービス創造学部をもっとももっとみんなで盛り上げていきましょう!」と鼓舞した。
HUBの前で、最後にジェフ千葉・プロジェクトの3年生だけで一枚。このプロジェクトにとっては、この企画が最初の一ページとなった。