千葉商科大学サービス創造学部
千葉ジェッツ・プロジェクト「千葉商科大学マッチデー」

プロ野球・広島カープの「カープ女子」、Jリーグのセレッソ大阪の「セレ女」と、近年、プロスポーツチームを応援する女子たちに注目が集まっている。9月に開幕したプロバスケットボールBリーグの「千葉ジェッツ」でも女性ファン獲得のため、2016年12月3、4日に船橋アリーナで行われた公式戦(対サンロッカーズ渋谷)で、「ジェッツ女子デー」を実施した。この企画を考案したのは、千葉商科大学サービス創造学部の千葉ジェッツ・プロジェクトの大学生たち。彼らはなぜこの企画を考えたのか、そして何を得たのか、Kicky!編集部が迫った。

 


なぜ、ジェッツ女子?

 
千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業である「千葉ジェッツ」。毎年、千葉ジェッツ・プロジェクトでは、「千葉商科大学マッチデー」として組まれるホームゲームで、会場内のイベントやファンサービスを企画・運営して盛り上げている。
2016年度のプロジェクトメンバー37人は、千葉商科大学はもちろん、千葉ジェッツを多くの方々に知ってもらおうというテーマのもと、春学期からスポーツの観戦者についてさまざまな調査・分析を行った。そこで学生たちが目を付けたのが、「バスケットボールだけ〇〇女子が存在しない」ということだった。
プロジェクトの副代表を務める千葉卓弥くん(同学部3年)は、「調査していくうちに、女性を引き込むことさえできれば、女性がその興味を男性にも広めてくれるという傾向が分かりました。自分たちがジェッツ女子を発信し、その後はお客様が主体となってその存在を広めてもらうことで、観客数の増加につなげることができるのではないかとこの企画を提案しました」と狙いを語る。
プロジェクトメンバーたちは頭だけでなく足もフル活動した。ジェッツのホームゲームやプロ野球の球場で、女性の興味についてのアンケート調査を実施。女性は自分の行動をTwitter、Instagram、FacebookといったSNSを通じて周囲に発信していることや、選手目当てに来場していると分析した。そこで、学生たちは9~11月に行われたジェッツのホームゲームで、プレイベントとして「ジェッツ女子ブース」という特設ブースを設置。女性や子どもたちに写真を撮影してもらい、「#ジェッツ女子」とタグづけをしてSNSに写真を投稿してもらうことで、マッチデーの宣伝と「ジェッツ女子」の告知につなげてきた。
プロジェクト代表の大網英嗣くん(同学部3年)は「最初は皆さんに振り向いてもらえませんでした。ですが、計6回プレイベントを行いましたので、回を重ねるごとに認知してもらえました。とくにこの企画を私たち大学生が行っているということも興味を示してくれたきっかけになったようです」と笑顔で振り返った。
 

マッチデー当日も、ジェッツ女子写真撮影ブースでは、親子連れ、仲間同士と賑わいを見せた。
 

プロジェクト代表の大網英嗣くん(サービス創造学部3年/右)と同・副代表の千葉卓弥くん(同3年/左)。
 


メディアが学生たちの取り組みに注目

 
マッチデー初日は「ジェッツ女子ver. クリスマス」、2日目は「ジェッツ女子ver. We love Chiba」をテーマに、ジェッツ女子シートをチームカラーの赤いTシャツ、赤いスティックバルーンを持った女性たちで埋めた。熱い女子たちの応援もあってチームは連勝、球団記録に並ぶ9連勝を果たした(その後ジェッツは連勝を13まで伸ばした)。

「ジェッツ女子」のもうひとつの狙いは、ファン同士のコミュニケーションの活性化。今回はSNS上での交流に留まったようだが、今後まだ伸びしろがありそうだ。
また、今回は例年以上に、新聞、雑誌、インターネット、ラジオ、Youtubeチャンネルなどさまざまなメディアが学生たちの取り組みに注目。大網くんは、「メディアを通しての発信は私たちが想像していた以上でした。私たちの活動が色々な方の耳に少しは入ったのではないかと思っています。次年度は今回の反省を踏まえて、もう少し早い段階から宣伝を行う一方、プロジェクトのメンバーをうまく動かすなどできれば、さらに観客動員数アップにつながるのではないかと思っています」と先を見据える。
 

ジェッツ女子シートで応援するジェッツ女子たち。満席にすることはできなかったが、それでもプロジェクトメンバーは「少しでも広めることができたのではないか」とコメント。
 

入場する選手を出迎える「花道女子ジェッツ」に抽選で選ばれた女子たち。
 


企業から直接学んで成長する

 
今回のプロジェクト活動を通し、二人とも口をそろえて「人を動かすことの難しさを感じた」と言う。また、メンバーのモチベーションの上げ方も難しかったと振り返った。「プロジェクトを通して、物事を深く考える癖や相手の気持ちを考えることができるようになりました。そして自分が最初から大切にしていたメンバーの笑顔を絶やさず活動を行うことは達成できたのではないかと思います」と大網くん。一方、千葉くんは「企画についてはやりたいことが多すぎて本筋からずれてしまうこともあり、ジェッツの方々からも多くのご指摘をいただきました。また、今回、ブースで写真をお客様にプレゼントするために、学部の公式サポーター企業である加賀電子さんを通じて、三菱電機さんに発売前の写真プリンターを無料で貸し出していただきました。先方にはユーザーであるお客様や私たちの声をデータとして送ったのですが、一方的ではなくWin-Winの関係が築けたのかなと思っています。社会に出る前に、こういった企業の方々から直接学ぶことができたのは、自分たちにとって大きな財産になりましたし、今度は自分たちが後輩たちに伝えていきたいと思っています」と胸を張った。
 
プロジェクトの担当教員である滝澤淳浩准教授は「『お客様にサービスを提供することが仕事』と学生たちには何度も言い聞かせました。また、相手の立場になってものを考え、相手がどうしたら嬉しいか、楽しいか、喜んでくれるのか、想像しながら創造しなさいとも。とにかく、失敗してもいいからまずはやってみることが大事です。これからの世の中、“新しい”サービスを生み出していかない限り、生き残れないと思っています。そうしたことを念頭に置きながら、学生たちは行動してくれました。ただ、探究心はまだまだ。こうしたプロジェクトを通して、好奇心旺盛、探求心旺盛、そしてサービス精神旺盛な学生になってほしいと思います」と今後に期待を寄せた。
   
「大人が協力してくれたおかげでプロジェクトが成り立っていると実感した」(千葉くん)。大学生が生み出したひとつのアイデアで多くの“大人たち”を動かすことになった、2016年度のマッチデー。彼らの自信や成長が言葉や表情から窺えた。
 

無事にマッチデー当日を迎えることができ、まずは笑顔があふれるメンバーたち。本番はこれからだ!
寒空の中、プロジェクトメンバーが笑顔でお客様をお出迎え。
プロジェクトメンバーは、前日は夜中まで、当日は朝6時から開場内の装飾などを行ったという。
ジェッツプロジェクトでも、被災地・東北応援と題し、チャリティー募金を実施。千葉商科大学サービス創造学部の3つのスポーツビジネスプロジェクト(「千葉ジェッツ」「千葉ロッテ」「千葉ジェフ」)が共通してこの活動を行っている。
千葉商科大学のチアダンスチーム「glitter’s」と千葉ジェッツフライトクルーチアリーダーズ「スタージェッツ」のメンバーが“小さなジェッツ女子”と記念撮影!
広報チームリーダーの吉村駿太郎くん(同3年/左)と千葉くんが打ち合わせ。他チームとの連携にも余念がない。
「glitter’s」と同大学出身のフリースタイルバスケットボーラーTaMaが、Let’s Dance!
千葉ジェッツプロジェクトSNSアカウントをフォロー、コメントしてくれた人の中から抽選で選ばれたジェッツ女子10人が、入場する選手たちを花道で迎える。
試合開始前に、大網くんと千葉くんが挨拶。
大網くんは、マッチデーを終えて、「最初は不安だらけだったが、先生や先輩方に相談することが大事と気付いた」と振り返った。
プロジェクトメンバーは、ジェッツ女子のイメージを定着させるため「ジェッツ女子の一日」という動画も制作。「スタージェッツ」のメンバーMISAKIさんがイメージガールを務めた。
ハーフタイムでは、「glitter’s」と「スタージェッツ」が、ジェッツ女子のTシャツに身を包んでパフォーマンスを披露。
初日の試合はジェッツが83-74で勝利。PGの富樫勇樹選手(中央)も華麗なプレイで観客を魅了した。