千葉商科大学サービス創造学部・桐生南高校 共同企画「サービス創造熱血講座」

2014年11月より実施されている千葉商科大学サービス創造学部と群馬県立桐生南高校との共同企画「サービス創造熱血講座」。同講座は、同高校の野球部時代の先輩・後輩であり、現在は千葉商科大学サービス創造学部でともに特命教授を務める佐瀬守男氏(株式会社ホットランド代表取締役)と荒木重雄氏(株式会社スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役)の提案で実現した。今回で通算12回目となる同講座に、2017年11月、ソフトバンク株式会社の人事総務統括 CSR統括部 統括部長であり、公益財団法人東日本大震災復興支援財団(以下、東日本大震災復興支援財団) 事務局長の池田昌人氏が登壇。今年から同学部の公式サポーター企業に加わった両社で活躍する池田氏が、「ソーシャルに仕事をする」をテーマに高校生にエールを送った。

 

池田昌人氏(左)と、桐生南高校の髙張浩一校長(右)。


東日本大震災が、人生の転機に。

1981年、インターネットが普及していない時代に、ソフトバンク社は「情報革命で人々を幸せに」という企業理念の下、設立された。創設者であり、現在、ソフトバンクグループの会長を務める孫正義氏は、近い将来携帯電話でインターネットをする時代が必ず来ると予見し、1990年代から携帯電話会社を買収。さらに1996年には、国内初のポータルサイト「Yahoo! JAPAN」を立ち上げるなど、最先端のテクノロジーを駆使しながら、今なおIT業界を牽引し続けている。
 

「シンギュラリティという言葉を知っていますか。技術特異点と言って、人工知能が人間の能力を超える日が、この先数十年の間に来ると言われています。わが社では、携帯電話事業とは別に、その日のための準備を行っています」と池田氏は話す。
 

池田氏は、2011年の3月11日、東日本大震災をきっかけに人生の大きな転機を迎えたという。携帯電話本体の分割払いができるプランや学割の「ホワイトプラン」、他社からの携帯電話の乗り換えで割引される「のりかえ割」など、同社のマーケティング部門でさまざまな企画を打ち出したヒットメーカーだった彼が、この震災を機に、マーケティングの道を突き進むのか、東日本大震災復興支援財団で被災者のための活動を行うのか、自身の岐路に立たされたのだ。
「私は熟考の末、いま困っている人のために働きたいと、会社に辞表を提出しました。すると、上司がソフトバンクにも社会貢献部門があるから兼務したらいいと、ソフトバンクに残す選択をしてくれました。」
その結果、東日本大震災復興支援財団の事務局長を務める傍ら、ソフトバンクのCSR部門に在籍することとなった。
「ソフトバンクでは、東日本大震災の被災者を支援するために、チャリティホワイトという施策を打ち出しています。これは、皆さんの携帯電話料金から10円いただくと同時に、わが社も10円払って被災者の方に寄付するという仕組み。300万人の方がこの活動に参加してくださって、これまでに11億円を寄付することができました。これは、ソフトバンクの社会貢献活動のひとつの成果です。社会に貢献することによって、皆さんと一体感を生むと言うことが企業における目的のひとつでもあります。」
 

30年後の未来を見据え、子どもたちを対象とした社会貢献プロジェクトも行っているという。「近い将来、ロボットと皆さんがともに生きる時代が必ず来ます。それを見据えて、Pepper 社会貢献プログラムを行っています。ソフトバンクの人型ロボット「Pepper」を公立の小中学校に2000台貸し出し、ロボットとのコミュニケーションを学びながら、全国17自治体の小中学生の子どもたちにプログラミングを覚えてもらうというものです。今はモノが充実している時代で、その中で人々は心の充足感、精神的な充足感を求めています。わが社では、精神的な充足感を与えるためのこうした社会貢献事業を行っています。」
 

池田氏は、「人生の中で、仕事だけに生きるのはしんどい。趣味は、自分の中で楽しみを持つと同時に、仕事で頑張るためのエネルギーをつくってくれます。私はトライアスロンを趣味にしていて、月1回程度、大会に出場しています。スポーツは、色々な目標を立てて進まなければならないという意味で人生と同じだと感じます」と、自身の趣味について笑顔で語る。


人生は気持ち次第で変えられる

熱血漢で仕事熱心、プライベートは家族思いで、トライアスロンを趣味にもつスポーツマン。順風満帆な人生を送ってきた池田氏に見えるが、実は小学3年~6年までいじめにあい、人とコミュニケーションを取ることに苦手さを感じていたこともあった、と自身の過去をさらす。中学での成績は学年で下から2番目。先生からはこのままでは高校に進学できないと言われ、池田少年はがむしゃらに勉強をし、偏差値を上げることに成功。法政大学第二高等学校に合格した。
「これが人生で最初の成功体験です。高校に進学できたことを、親がものすごく喜んでくれました。この小さな経験が僕の中のエネルギーになったんです。今、皆さんに大きな夢がなくても心配する必要はありません。部活でも趣味でも勉強でもなんでもいいので、自分が誰かに褒められたり、誰かに喜んでもらえたりした経験を絶対に覚えておくこと。それは、いつか自分のエネルギーになり、さらに、そのエネルギーを注ぐことができるものにいつか出会います。今までがどうとかではなく、これからどうなりたいかという気持ちさえ持てば、絶対人生は変えられます。そこだけは覚えておいてください」と熱く語った。
 

質疑応答の時間では、東日本大震災復興支援財団のこと、手掛けた事業について、そして生徒自身の進路についてと、生徒からも多くの質問が寄せられた。


PDCAを回しながら、縁を大切に

ソフトバンクのCSRを考えながら仕事をする一方で、東日本大震災復興財団の事務局長として、子どもたちの未来をつくるための活動も行っている。「被災地は6年経って、まだ復興の入り口に立ったような状況です。そしていまだ3万世帯の人がまだ仮設住宅などで暮らしています。また、東北は運動不足が深刻化していることもあり、色々な活動を行っています」と現状を述べる。
実施している活動の中には、東北で暮らす子どもたちを対象にスポーツなどの指導を受ける機会を提供し、遠隔指導を通じながら、自らが設定した目標を達成する過程を応援する「東北夢応援プロジェクト」がある。
 

「子どもたちが夢や目標に向かってPDCAサイクル(Plan/計画、Do/実行、Check/評価、Act/改善)を繰り返すことを、若いうちから経験してもらう。これは社会に出ても役立つものです。これから皆さんも進路を決めていくにあたって、細かく目標を立ててPDCAを回しながら、努力していくことを実践してほしいと思います。」
そして、縁も大事な要素だと池田氏は明かす。「今日ここに私が立っているのも、千葉商科大学サービス創造学部の中村聡宏専任講師とのご縁がありました。どこでどう人がつながるかは、わかりません。日本が高度成長期だった私の両親の時代は、基本的には同じ価値観を持てば幸せになれると考えられていました。しかし、今の時代はダイバーシティともいわれ、多様な生き方を求められるようになっています。自らを大切にしながら、横とのつながりを持ち、互いを支えあい、思いやりを持つことが大事。また、コミュニティも人生の中で重要なキーワードになるでしょう。皆さんを豊かにするのは、人との縁です。『利他』、つまり他人に対する利益を意識しながら生きていくと、結果的には自分が豊かになれると思います。私の理解では、ソーシャルに生きるというのは、利他的に生きること。いつもやっていることに、どう他人を意識づけて考え実行できるかがソーシャルに生きるための重要なヒントだと思います。縁が人生をつくり、夢や目標が皆さんの未来をつくります。そのためにはPDCAを回しながら、どうしたら一歩一歩進んでいけるかぜひ考えてほしい」と生徒たちを鼓舞した。
 

生徒を代表して登場した2年生の男子は、「ご自身で高い目標を立て、少しずつ達成してく姿は私たちにとっても素晴らしい手本であり、見習いたいと思いました。努力って楽しいと感じながら、社会貢献を胸に日々精進していきたい。いつかは、人に役に立ち、感謝されるような立場になりたい」と謝辞を述べた。

 

コーディネーターを務めた中村専任講師は、「人は、他人のことを完璧に理解することはできません。しかしながら、サービスを創造するためには、それでも自分以外の人々のことを尊重し、理解しようと心がける気持ちが大事。池田さんがおっしゃっていた利他の精神のように、ぜひ誰かの笑顔のために頑張るという気持ちをもって、これからも進んでいってほしいと願っています」と生徒たちにメッセージを送った。

 

<プロフィール>

池田 昌人(いけだ・まさと)

ソフトバンク株式会社 人事総務統括 CSR統括部 統括部長
公益財団法人東日本大震災復興支援財団 事務局長

1974年7月12日神奈川県生まれ。東日本大震災を機に、企業ができる継続的な社会貢献事業を推進しようと、ソフトバンク株式会社マーケティング部門からCSR部門に異動。2011年7月に公益財団法人東日本大震災復興支援財団局長を兼務し、東北の子どもたちとその家族を応援するために活動。さらに2015年10月には、スマートフォンでスポーツ選手などによるプライベートレッスンが受講可能なプラットフォームを提供するスマートコーチ株式会社を設立し、事業を立ち上げた。