「Chiba Sports Summit 2017」開催

「大学×スポーツ×企業」――。
千葉商科大学サービス創造学部は、公式サポーター企業のスポーツ団体を招き、昨年に続いて「Chiba Sports Summit 2017」を開催した。狙いは、大学とスポーツクラブが連携した新しいサービスモデルの構築だ。千葉ロッテマリーンズ、千葉ジェッツ、ジェフユナイテッド市原・千葉に、千葉テレビ放送株式会社を加えて、意見交換が行われた。

 


千葉のプロスポーツ3球団+テレビ局が集合

同学部のスポーツビジネスプロジェクトでは、プロ野球球団「千葉ロッテマリーンズ」、プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」、プロサッカークラブ「ジェフユナイテッド市原・千葉」の運営企業と、学生たちが連携してアクティブラーニングを行っている。
「Chiba Sports Summit 2017」と題し、上記3球団に加えて、千葉県域のスポーツ中継も行っている千葉テレビ放送株式会社を交えて、企業人、学生、教員らがスポーツのサービス創造について語り合った。

同学部の吉田優治学部長は、「プロスポーツの経営はすごく大変なことだと思いますが、地域の大学や学部にとってもプロスポーツとどのようにかかわっていけばいいかは難しい面が多いです。大学もプロスポーツも、どのようにイノベーションを仕掛けるかということが課題のひとつ。学生たちが活動することで、集客やビジネスの拡大につなげることができたら嬉しく思います」と抱負を述べた。

サービス創造学部の吉田優治学部長は、「就職率も100%に近く、入学者数も年々増加しており、人気の学部となっています。それもプロスポーツチーム、メディアをはじめとする公式サポーター企業の皆様のご協力の賜物だと思っています」と冒頭あいさつを述べた。

 


スポーツビジネスの特徴は「ボンド機能」と「アンプ機能」

この夜、同学部の特命教授であり、株式会社スポーツマーケティングラボラトリー代表取締役の荒木重雄氏が特別ゲストとして登場し、「スポーツを活用した社会解決プログラムの可能性」をテーマにレクチャーを行った。
「国内のスポーツビジネスは、いまだに、1984年のロサンゼルス五輪のビジネスモデルを踏襲しています。チケット事業、スポンサーシップ事業、放送権、ライセンス事業の4大事業、そして最近になってデジタル配信事業、スタジアム事業を加えても6つ。その延長線上だけで考えていていいのでしょうか」と問題提起をする。
スポーツの本質的な機能は、「ボンド機能」と「アンプ機能」に分かれる。ボンドは「マッチングすること」、アンプ(amplifier)は「増幅すること」を指すが、「スポーツが持っていて、他のビジネスにはない特徴的な機能です。それを使ってスポーツビジネスを考え直したらどのようなことができるかを考えたいと思います」と荒木特命教授は伝える。
たとえば、NPO×スポーツ団体×企業の掛け合わせ。とくに、メジャースポーツにおいては、「ソーシャルスポンサーシップの活用」を提案する。NPOの専門性とスポーツ団体のアンプ機能を活用した社会貢献活動に対して、企業のスポンサーシップ資金を活用したモデルだ。NPOは資金調達の拡大できると同時に、スポーツ団体は社会課題を解決するプログラムを参画することができ、企業にとってはブランディングに結びつく。結果的に、三者にとって大きなメリットを生むことができる。
荒木特命教授は最後に、「企業課題のためにスポーツを使う、社会課題のためにスポーツを使う。スポーツの露出効果に頼るのではなく、スポーツが持っている力を使って企業や社会が何をするのか。従来のように型にはまったスポンサーシップではなく、スポーツ業界のミッションはどれだけ自分たちの価値を向上できるか、また価値ある創造ができるか。さらにそれをサポートする関連企業が価値を向上できるか、どのように活用するかが、今後大事な視点になると思っています」と締めくくった。

荒木重雄特命教授は、一昨年国連で採択されたSDG(Sustainable Development Goals)という行動指針や五輪のポイント制度などを例に挙げながら、「スポーツを活用した社会解決プログラムの可能性」について話した。

 


スポーツ団体、企業側の立場から

こうした荒木特命教授の話を受け、千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表取締役社長は「今までは人間関係でスポンサーを取ってきていましたが、継続させるにはそれなりの理由付けが必要です。企業側が社会的な意義を感じ、貢献していると受け止めていただくためにも、このような発想はビジネスに必要だと感じました」と意見を述べた。

千葉ジェッツふなばしの島田慎二代表取締役社長と学生が名刺交換をする場面も。「私たちが大学にかかわることで、学生さんの就職率や成長に貢献できればと考えています」と語る。

 

千葉ロッテマリーンズの事業本部営業部部長、島田達人氏(中央)は、同社が実際に行った事例をあげながら、「現段階では、人間関係や純粋な露出や販促効果で評価をいただいている部分もあります。このようなビジネスモデルも今後のひとつの方向性として参考にしていきたいと思う」と答えた。

一方、千葉テレビ放送の総務局総務部次長の井上晴貴氏は、企業側の視点で語る。「テレビは放送すること自体に価値がありましたが、インターネットの普及をきっかけに、中継に関しても放送の有利性が薄れてきて、企業の存在価値・存在意義に問われています。今回参加させていただいたのも、荒木先生がおっしゃっていた、つなぎ、増幅させる部分のお手伝いができるのではないかと思ったからです。7月には、スポーツをテーマにした自社イベントを行いますが、それぞれのスポーツチームがクロスすることで何か生み出したいと思っています」と充実した懇親会だったことをうかがわせた。

 

企業のCSRの責任者として、同学部の公式サポーター企業である加賀電子株式会社で17年間広報担当を務めた経験を持つ滝澤淳浩准教授は自身の経験談を伝えたうえで、「学生の皆さんも、ただプロスポーツを応援するだけでなく、企業に対してメリットになるような提案をすることが大事です」と檄を飛ばした。
また、これらのスポーツビジネスプロジェクトを担当する中村聡宏専任講師は、「大学という教育機関としては、将来的にスポーツ界で活躍する有能な人材を送り込むことはミッションだと思っています。ただ、新卒を送り込んで成果を出せるかというと現時点では難しいのも事実。皆さんのご協力を仰ぎながら、学生たちはスポーツビジネスを体験的に学び、市場の構造を理解し、社会に出てキャリアを紡いでいきますが、いずれは、スポーツ界で力を発揮できる人材が卒業生の中から出てくるといいと思っています。また、荒木先生がおっしゃっていたような、アンプ機能、ボンド機能を意識しながら、大学が関われることを模索したいとも思います。2017年も叱咤激励をいただきながら、私たちも皆さんにとっても魅力的なご提案ができるように挑戦します」と、大学がスポーツとどう向き合うべきか、今後の展開について語った。

千葉ロッテ・プロジェクトの土橋鵬晃くん(同学部2年)は、自身が少年野球のコーチをやっていることから、「どうしたら裾野を広げることができるか」という質問をスポーツ球団の方たちに投げかけた。

 

15年秋からプロジェクト活動がスタートしたジェフユナイテッド株式会社。営業の小島敦史氏(右)は「カタチとして残すのは17年度シーズンです。成果を楽しみにしたいと思う」と語った。

 

最後に全員で記念の一枚。

 

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