千葉商科大学サービス創造学部
宮澤薫ゼミナール 企業プレゼン:アサヒビール株式会社

2015年12月、千葉商科大学サービス創造学部の宮澤薫ゼミナールの3年生メンバーが、アサヒビール株式会社にRTD(※Ready to Drink)の新商品のアイデアを提案した。学生たちが若者ならではの視点で調査・分析を行った結果、どんな新商品を発案したのか。

 
※RTD(Ready to Drink)=缶やペットボトル入りのチューハイやカクテルなど、手を加えずにそれ1本で手軽に楽しめるアルコール飲料
 


実践的な課題に挑戦

同学部の宮澤薫准教授のゼミナールでは、企業のマーケティング部門の協力のもと、マーケティングの知識と実践力の向上を目指した活動を行っている。文献の輪読やグループワークなどを行い、マーケティング研究を進めるために必要な知識を学んだうえで、企業から与えられた課題に対し、コンセプトワーク、調査、企画書の作成など、社会に出た際に必要な実践力、企画力を身につける取り組みを行っている。
 
10月初頭、3年生のメンバー17人はアサヒビール株式会社より「RTDの市場分析を行いアサヒビールにとってのチャンスを発見し、新商品のアイデアを提案する」という課題を与えられた。RTDとは、缶やペットボトル入りのチューハイやカクテルなど、手を加えずにそれ1本で手軽に楽しめるアルコール飲料を指す。2カ月強という短い期間ではあったが、学生たちはこれまで座学で得た知識をフル活用し、この発表に力を注いだ。
 

宮澤薫准教授(中央)のアドバイスをもらいながら、発表の準備を進めていく学生たち。


「低・弱・小」のアルコール飲料「Koyoi」が勝利

学生は4チームに分かれて課題に取り組んだ。まず、3C分析(市場・競合・自社)をもとにSWOT分析(強み・弱み・機会・脅威)を行い、アサヒビールにとって望ましいと思われる戦略(STP)を考える。そしてその戦略を実現するための新商品を4P(製品・価格・流通・プロモーション)に従って下記のように提案した。
 
【千田チーム】
●「寝る前にリラックスを求めてお酒を飲む人のための、低アルコール・少量サイズのRTD」
(寝る前にアルコールをとることで眠りが浅くなる問題を回避する商品『Koyoi』)
 
【早川チーム】
●「ひとり時間を楽しみたい30~40代女性に向けた、機能性ワインRTD」
(女性の家飲みで最も人気の高いワインに、流行の水素水を加えた機能性RTD商品)
 
【青木チーム】
●「20代男性に向けたドライな味の低アルコールRTD」
(アサヒビールから出ているウィルキンソンをベースにした刺激強め、アルコール弱めの男性向けRTD商品)
 
【関谷チーム】
●「デザート感覚で食後に飲めるまったく新しいタイプのRTD」
(夕食後にデザートを食べる女性に向けた、メインソンジャー入りのごろごろ果肉系カクテル『フルーツシンデレラ』)
 
リラックス効果を期待しながらも、二日酔いなどは避けたいという消費者ニーズに着目し、どの班も共通して“低アルコール”のRTDというキーワードを挙げた。その中で優勝したのは、千田チームの「寝る前にリラックスを求めてお酒を飲む人のための、低アルコール・少量サイズのRTD」の案となった。消費者調査を通じて、リラックスのために寝る前にお酒を飲む人は多いものの、適量をわかっていないため逆に眠りが浅くなってしまうという問題点を発見し、新商品の提案を進めていった。
RTD市場は類似した商品が多く、競争も激しい。そこで、確実に差別化できる、明確な飲用方法と飲用シーンの訴求が重要だと考えた。さまざまな観点から検証した結果、就寝前に飲んでも眠りに影響を与えないアルコール度数3%、135ml、定価70円の「Koyoi」を提案。キャッチコピーは「今宵はKoyoiで小酔い」。SWOT分析で脅威として挙げていた「健康志向によるお酒離れ」を回避できると結論付けた。
 
表彰を受けて、リーダー・千田万佑花さんは、「今宵はKoyoiで小酔いしましょう!」とみんなに呼びかけ、喜びを爆発させた。大巻遥加さんは「Koyoiというネーミングにちなんで、パッケージデザインも夜空をイメージするなど、細部にもこだわりました。本当に嬉しい」と笑顔を見せた。「女子に頼りきりの班でした。千田さんは前回も優勝しているので連覇させたいという思いが強かった」(佐藤大幹くん)、「何もできなかったですが、心の中では千田に優勝させてあげたいという思いが強かったのでよかったです」(日向健吾くん)と、男子二人は仲間を思いやる気持ちを言葉に表した。
 

優勝した千田チーム(右から千田万佑花さん、大巻遥加さん、佐藤大幹くん、日向健吾くん)。

 

関谷チームは、情熱を込めた語り口調で、会場内の人たちを引き込んだ。

 


総評「4チームともにレベルの高さを感じた」

アサヒビールのマーケィング本部でRTDの開発を行っている森信広担当課長は、「優勝チームの千田さんチームは具体性もあって、店頭が見えた商品でした。そして、早川さんチームは、今非常に伸びている市場であるワインに着目したのは素晴らしいセンスだと思いました。私はウィルキンソンのRTDを開発したのですが、青木さんチームのブランディングの考え方はわが社と同じでしたし、あともう一歩のところでした。最後の関谷さんチームは、とにかくプレゼンがうまかったのと、何より発想が面白かったです。しかし金額的には実現が難しいかなと思いました」と総評した上で、「4チームともレベルの高さを実感できた。一方で、既存商品の延長戦上のアイデアが多かったので、異質な組み合わせの中から新しいアイデアの提案があったらよかったと思います。しかしながら、私たちにとっては、皆さんもお客様になるわけですので、非常に勉強になりました。こういう楽しい仕事をぜひ皆さんと一緒にやりたいと思いますので、これからも頑張ってください」と学生たちにエールを送った。
 

担当教員の宮澤准教授は、「2年生では広告代理店の博報堂、3年生ではアサヒビールでプレゼンテーションを経験させていただくことができ、ゼミ生にとって貴重な学びの場になったと思います。特に今回はモノづくりをされているメーカーに向けたプレゼンテーションだったので、着眼点はもちろん、利益が上がるのかという部分を厳しく追求されました。彼、彼女たちが今後、マーケティングを企画する上で必要な要素は何なのかをはっきり示していただけたことは貴重でした。今回の発表を終えて、グループワークの進め方、調査への取り組み、企画書のつくり方、プレゼンテーション力など、さまざまな力が大きく向上したと感じています」と学生たちの成長に目を細めた。
 

発表を終えた学生たちの感想は、「緊張した」「想定していなかった質問があった」「持ち時間が決まっていたため、時間内で発表する大変さもあった」「いい経験になった」とさまざまだったが、一様にほっとした表情を浮かべた。
 

アサヒビール・マーケィング本部の森信広担当課長「こうしたスキルは社会人になっても使えることです。学生時代から携わることができているのはうらやましいことです」とコメント。

 

アサヒビールの担当者をはじめ、宮澤ゼミ4年生も審査委員として、後輩たちの審査に加わった。お疲れ様でした!!

 
 

■宮澤薫ゼミナールメンバー
 


千田チーム/
千田万佑花、佐藤大幹、日向健吾、大巻遥加


早川チーム/
早川亜希、久米菜月、仲澤大樹、成田大輔、石川孝介

 


青木チーム/
青木雄大、木村圭佑、高橋諒太、朴芝賢


関谷チーム/
関谷翼、山崎花菜、小川敦也、赤松文梧

 
■アサヒビール株式会社 担当者
 
森 信広氏(マーケティング本部 マーケティング第二部 担当課長)
角田 久美誉さん(研究開発本部 酒類開発研究所 副課長)
葛西 恒平氏(マーケティング本部 マーケティング企画部 課長補佐)
黒須 まゆさん(マーケティング本部 マーケティング企画部 主任)