イタリアの文化を感じてほしい
――なぜローマに店を出したのでしょうか。
高波 日本人としてその実力を示したいというのが一つ。また、自分のレストランで働く人材にも、日本で培った知識を本場イタリアで発揮する機会を経験させてあげたいと考えました。そして、イタリアにおける人脈も広げたいという思いもありました。
はじめはミラノでの出店という話もあったのですが、ローマの方が田舎で、新しいものが好きな人が多いということもあり、ローマに出店しようということになったのです。
――なるほど。国内も含めて順調に店舗が増えていますね。
高波 現在では新潟に2店舗、青山に2店舗、川崎に1店舗、そして2012年にローマに出店して合計6店舗になりました。今年の9月には7店舗目として銀座店がオープン予定です。しかしながら、ただお店の数を増やし、売上を増やすことだけが目標ではないんです。
100年続く店をつくりたい、私はそう思っています。ですから、どこにどのような店を出すか、それが大切です。
その意味で、「世界の銀座」に、それも中央通りという目抜き通りに出店することは、私たちにとっても新たなチャレンジです。もちろん家賃も高いですから、どういった食事を、どのような値段でお出しするのがいいのか、顧客となっていただけそうな方々のお財布事情がどうなのかなどをマーケティングしているところです。銀座の地に歴史を刻み、そして「老舗」を目指していきたいと思っています。
私たちの店ではすべて、内装をイタリアっぽく、店内のBGMや会話はイタリア語で、奇をてらわず伝統的なイタリア料理を提供しています。前菜を食べて主食。料理は取り分けず、好きなものをオーダーし、パスタを食べる時にはスプーンを使わずフォークだけで食べる。食前酒、ワイン、食後酒を飲み、食後にはドルチェとエスプレッソ。ディナーにはカプチーノを飲まない。こうしたイタリアの慣習に従って食事を楽しんでいただきたいと思っています。
文化が根付いているという意味では、日本よりもイタリアの方がやりやすいという面はあります。
シェフだと誇れる「職位」に
――千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業になっていただいています。
高波 1月には700名の受講生を前に、「ローマにイタリア料理店を出店した理由(わけ)」というテーマで講演させていただきました。
『オンリーワン』を目指している教育環境づくりへの取り組みに感銘を受けました。そして、それを実現できるトップとヴィジョンがあるのは魅力だと感じています。
「サービス」を創造する環境づくりは、グローバルな視点が重要だと思っています。今後ますます、世界へ発信できる人材育成を期待していますし、学生のみなさんには、活躍の舞台を世界へ広げてほしいと思います。
日本人の持つ感性、さまざまな技術力、卓越した才能は、地球規模で発揮できるはずですから。
――今後の夢を聞かせてください。
高波 料理というフィールドで、実際に世界の本場で戦っている人間がいることを知ってもらい、刺激になったらうれしいですね。
また、私はレストラン経営を水商売として扱われることが大嫌いです。
料理という知識技術を備える。イタリアの食文化を通じて、お客様の生活をより豊かにしようという想いをもつ。サービスという技術とマネジメントというノウハウを得る。ヴィジョンを貫く。
そんなプロフェッショナルとして、高貴で憧れられる夢を与えられる「職位」を獲得したいと思っているんです。
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