2012年に結成した千葉商科大学チアダンスチーム glitter’s。チーム結成のいきさつと、立ち上げメンバーがチーム名に託した想い、そして彼らの「現在」に迫る。
チアダンスチーム、作っちゃえばいいじゃない?
安村美咲さんは、千葉商科大学サービス創造学部への入学審査面接で、高校時代に取り組んでいたチアダンスへの熱意を吉田優治学部長に語った。当時、千葉商科大学にチアダンスチームはなかったが、吉田学部長は「自分でチアのチーム、作っちゃいなよ!」と安村さんに言って笑った。
入学後は高校のチアダンス部のOGチームに参加して活動していた安村さんだが、大学2年の春に転機が訪れる。学部の同級生、髙橋真実子さんとともに、プロバスケットボールチーム「千葉ジェッツ」のチアリーダーズ「STAR JETS」のオーディションに合格したのだ。千葉ジェッツは、サービス創造学部の公式サポーター企業でもある。吉田学部長にその報告をすると、「大学にチアのチーム作って、STAR JETSと練習すればいいんじゃない?」とあらためて声をかけられた。
千葉商科大学はかつて応援団が有名だったが、いつしかそれもなくなっていた。そんな中、かねてより「大学を元気にするための存在は大切」と考えていた吉田学部長が中心となり、大学全体でバックアップすることが決まった。安村さんと髙橋さんは、チアダンスチーム結成に向けて、メンバー募集を開始した。
まだメンバーも決まっていない状況で、デビューの舞台が用意された。千葉ジェッツの試合での出演が決まったのである。
メンバー集めは簡単ではなかったものの、周囲への懸命の声がけが奏功し、ようやく7人のメンバーが揃った。愛称は「glitter’s」。7人全員で案を出し合いながら考え名づけたこのチーム名には、「(学内外や地域の方々から)キラキラ輝く存在になりたい」という想いが込められていた。
もっとも、安村さんと髙橋さんの2人を除けばチアの経験のないメンバーばかり。練習は週5、6日にも及んだ。「なんとかカタチにしたい」という安村さんの想いに、メンバーも必死に応えた。
こうして迎えた2012年3月17日。市川市塩浜市民体育館で開催された千葉ジェッツの試合で、彼らは華々しくデビューを飾った。緊張の中でのパフォーマンスは課題も多かったようだが、この舞台にたどり着いた達成感が彼らを包んでいた。
男子も輝くチアチーム
glitter’sの大きな特徴の一つが、男子メンバーの存在だ。
久永隆仁さんは、元々ヒップホップダンスなどに取り組んできたが、メンバーに誘われてglitter’sに参加することになった。女子の中で男子一人。難しさはなかったか、と尋ねるとこんな答えが返ってきた。
「まだ結成からそれほど間もない時だったのですが、いつもどおり教室での練習を終えた後に、パフォーマンス自体のことをはじめ、練習の取り組み方や考え方など、いろいろ話し合ったことがあったんです。いろいろと議論したその日を境に、打ち解けたというか、この人たちとなら一緒にやっていけるなと思いました。」
一方で、周囲のダンス仲間からの「なんでチアなんかやってるんだよ」という視線が気になっていた時期もあったと久永さんは打ち明ける。
「ある時、『いま、俺、チアやってんだ』って自分から胸を張って言うようにしたんです。そしたら、周りも『へえ、そうなんだ』って普通に受け入れてくれて。それからは完全に吹っ切れました。」
女子のチームワークで魅せるのが常のチアリーディングだが、その中で男子が見せるキレのいいダンスやバク宙は、glitter’sのステージに強いアクセントとインパクトを与えてきた。
「ひさぽん(久永さん)に一番おいしいところを持っていかれてしまうんですけど(笑)、それもglitter’sのウリだと思っていました」(髙橋さん)と言うように、男子メンバー・久永さんはglitter’sにとって欠かせない存在となった。
大学卒業後の現在は、「ダンスはもちろん、人として成長したい」とカナダに留学中の久永さん。成長した彼に再会できる日を、チームメイトたちも楽しみにしている。
glitter’sとともにあった学生生活
数々のイベントから声がかかるようになり、さまざまなステージで踊る機会が増えていったglitter’s。千葉ジェッツと同様に、サービス創造学部の公式サポーター企業である「千葉ロッテマリーンズ」の公式戦という舞台が用意され、QVCマリンフィールドでも毎年踊っている。
7人のメンバーも2013年には19人になった。2014年春には、初期メンバーを中心とした8人のメンバーが卒業し、社会へと旅立っていった。
リーダーの安村さんは「ゼロから立ち上げ育ててきた分、思い入れが大きいです。大学生活が充実していた、と私が他人に胸を張って言えるのは、間違いなくglitter’sのおかげだと思います」と笑う。
「辛かった記憶はほとんどありません。舞台でのパフォーマンス以上に、チームで作り上げる練習過程がとにかく楽しかったなって思います。」(板倉永実さん)
「学校がキライで辞めたいと考えた時期もあったんですが、glitter’sに出会って変わりました。勉強が苦手だった私が、チームの中で成績が一番だった時期もあって。それはちょっと自慢なんです(笑)。」(大川慧莉さん)
「みんなの前でパフォーマンスするのは緊張するんですけど、結果的にダンスを通して自信がつきました。多くの人に見られるからこそ、意識が高くなったと思います。」(菅原加奈子さん)
メンバーたちはglitter’sで過ごした約2年間の学生生活をこう振り返る。
副キャプテンを務めてきた髙橋さんは、「チアやダンスの経験者である私たちは、常に指導する側だったので、下級生への指導が厳しくなってしまった面もありました。でもそれは、上達してもらいたい、という一心だった」と話す。そして「彼らに任せてみたら、意外と自分たち以上にしっかりしている、と思う面も多く、頼もしい」と、残された後輩たちに期待を寄せた。
新生・glitter’sに受け継がれる想い
2014年7月14日。千葉商科大学マッチデーを迎えたQVCマリンフィールドのグラウンドに、千葉ロッテマリーンズのチアパフォーマー「M☆Splash!!」とともにパフォーマンスをする新生・glitter’sの姿があった。スタンドの観客から飛ぶ大きな声援に応え、満面の笑みを浮かべてダンスを披露するメンバーたち。先輩たちが抜けた穴を全く感じさせない堂々たる演技ぶりだった。
8人の先輩たちの卒業後、新入生8人が加わり、現在19人のチームに戻った。しかしその8人中6人はダンスやバレエなどの経験もない全くの初心者だ。メンバー全体で行う週2回の練習に加えて、各自が個人練習を自主的に行いながら、今年度最初の大舞台に備えてきた。
今年新キャプテンを務めることになった高柳亜衣さん(商経学部4年)は、「スタジアムで行うパフォーマンスは、踊る舞台が広くて他のメンバーとの距離が遠いので、一体感を出すのが難しいんです」と話す。ほぼ360度全方向が観客席になるため、目印がつけづらいのも自分のポジションを見失いやすい要因だという。
千葉ロッテマリーンズのマッチデーへの出演は、glitter’sにとってもっとも大きな舞台の一つ。前年は9月だったのが今年は7月開催と準備期間が短かったことが、彼女たちにとって大きなプレッシャーになった。「それでも、なんとかカタチにできたことは自信になったかなと思います」(高柳さん)と手ごたえも掴んだ様子だ。
さらに、glitter’sの特徴でもあった男子メンバーとして、小川幸祐さん(サービス創造学部1年)が加わった。「大きな存在だった久永さんと比較すると、自分はダンス経験があるわけでもないので道のりは遠く感じます」と話す小川さんだが、glitter’sらしさを受け継ぐためにも、彼の今後の成長に期待がかかる。「課題は尽きることはありません。先輩・後輩関係なく、みんなでアドバイスしながら今後もいいパフォーマンスができるように、チーム力を高めていきたい」と、彼らを見守りチームをまとめる高柳さんも前を向く。
輝く存在であり続けるために……。glitter’sの想いは、これからも後輩たちへと確実に受け繋がれていくことだろう。