若者が考えるエンタメサービス/「ぴあ」編
千葉商科大学サービス創造学部 キャンパスマーケット・プロジェクト

千葉商科大学サービス創造学部の新しい教育プログラム開発への取り組み「In-Campus Real Business Learning」が、経済産業省の平成27年度「産学連携サービス経営人材育成事業」に採択された。同学部では、この秋学期、公式サポーター企業である「ぴあ株式会社」「資生堂ジャパン株式会社」の協力のもと、学生たちが大学キャンパスをマーケットととらえ新たなサービス創造に挑む「キャンパスマーケット・プロジェクト」という活動を行った(※1)。「ぴあ」社が取り組むエンターテインメントビジネスについて、学生たちがこの4カ月間考えてきた成果とは。

 


大学をマーケットして新サービスを創造

「ぴあ」から学生たちが与えられた課題は、「若者世代の『チケットぴあ』ユーザー獲得のためのサービス創造」。それに対し、学生たちはまず、「エンタテインメント」の価値について考え、「“共有して共感を求める”という行為そのもの」と定義づけた。
では、若者はエンタテインメントに対し、何に「期待」し、どのような欲求を満たすと「満足」し、誰といつどんな風に「共有」するのか。その構造を、X軸(期待)、Y軸(満足)、Z軸(共有)に分けて図示。これらを掛け合わせ、「感動消費量」(※2)の値を算出することで、売れる(当たる)サービスを見つけることができると考察した。
その上で、サービス創造学部の男女の学生150人を対象にアンケート調査を実施した。
 
(X軸)「エンタテインメントに関連して期待するモノは何ですか?」
(Y軸)「(エンタテインメントに限らず)満たしたいコトは何ですか?」
(Z軸)「(エンタテインメントに限らず)共有するトコはどこですか?」
 
選択肢回答型アンケート方式で行った調査で、それぞれの上位に上がった回答を掛け合わせて生み出された企画は全部で5つ。その中で大人たちが注目したのが、(X軸)フェス、(Y軸)寝たい、眠りたい、(Z軸)Twitterの企画。それはつまり、「集まって眠るだけのフェス・エンターテインメントサービス」だった。
日本人は世界一眠らない人種ともいわれる。若者たちが眠るためのフェスを企画、Twitterで拡散し、参加者を多く募って、ギネス記録に挑戦する若者向けエンタテインメント、それが「ねむ(寝夢)フェス」というわけである。
 

担当する西根英一特命講師は、「X軸は、大人も学生も変わらないものだと思う。Y軸でトップに来たのが、寝たい、眠りたい。Y軸の掛け合わせ方が、大人と若者の大きなギャップとなったのではないでしょうか」と推測した。

 
 
ぴあの木本敬巳取締役は、「この企画は非常に面白い」と興味を示した上で、「皆さん、もっと自信を持って発表をしてほしい。私は、1、2年目の社員に、今のうちに思ったアイデアを貯金しておきなさいと常々言っています。大学生の発想はすごく面白い場合が多いので、それを温めておいて3、4年後に実行に移す。大学生活の間に経験していること、授業で学んでいることは尊いこと。よく考えて、失敗してもいいから自信をもってぶつけてみようと、トライしてみることが大事です」と学生たちにエールを送った。
 

ぴあの木本敬巳取締役は、「個人的には、サービスとものづくりは違うものだと思っている。それぞれが機能して、うまく走らすことができれば、サービスは重厚なものになる」とコメント。


最終ゴールは、若者の利用率をプラス10%上げること

「キャンパスマーケット・プロジェクト」は発展途上の段階。今後は、同大学6,000人の学生を対象とした調査を行っていく予定だ。本格始動に向けて、メンバーたちは今後の課題を挙げた。
 
「エンタテインメントを享受することは生活の中で優先順位化されているか」
「大学生はエンタテインメントの何に注目するのか」
「エンタテインメントの評価、評判はどのように生まれるのか」
「エンタテインメント行動は促進焦点なのか、予防焦点なのか」
「何を持って『ぴあ』に学生たちが介入できるのか」……など。
 
ぴあのメディア・プロデュース事業局局長、森直樹氏は、「私たちがサービスをつくる時、異質なものを掛け合わせて出てくる科学反応的なものを提示しなさいといわれます。今回、皆さんはXYZ軸のポイントを明確にし、アンケートを基にしてサービスを考えた。この企画の最終ゴールは、若者のチケットぴあ利用率をプラス10%上げることですから、これから市場に受け入れられるサービスをもっと追求していってほしいと思います。私が考えるサービス創造は、色々な人にヒアリングして、失敗しないサービスをつくり出すこと。楽しみにしています」と今後の展開に期待を寄せた。
 

参加されたぴあの方たちも学生たちの発表に興味津々の様子だった。

 
 
リーダーを務めた唐崎夏子さん(同学部2年)は、「普段得られない経験ができて、非常に勉強になりました。本格的に何かをやるということは必ず、結果も出さなければならないこと。ですから、一人ひとりがもっと頑張らないと結論までたどり着けないと改めて痛感しました。今後、もう少し具体的に詰めていき、最後は企業のみなさんにも納得してもらえるような結果にしたいです」と意気込んだ。
 

リーダーを務めた唐崎夏子さん(同学部2年)は、「緊張した」と語りながら、発表を終えてほっとした表情を見せた。

担当する滝澤淳浩准教授は、「普段マーケティングの勉強をしていない学生たちが、必死にくらいついて頑張ってくれました。今やっていることは、社会に出てからも非常に役立つこと。来年以降もぜひ参加してほしい」と学生たちに呼びかけた。

 
 
【「ぴあ」班メンバー】
唐崎夏子、甲斐悠太、堀田悠理、西村裕希、平野達哉、武内みはる(以上、同学部2年)、廣瀬玲(同学部1年)
 

ぴあ班のメンバーが、ぴあの方たちとともに。

 
(※1)若者の心をキャッチせよ/キャンパスマーケット・プロジェクト
(※2)「感動消費量」は千葉商科大学サービス創造学部の「キャンパスマーケット・プロジェクト」が創造したサービス概念。