宮澤 薫
千葉商科大学サービス創造学部 准教授

千葉商科大学サービス創造学部の教員を紹介する「教えて、センセイ!」第5回は、マーケティング論、消費者行動論を専門とする宮澤薫准教授。大手広告代理店のマーケティング業務を行っていた彼女がなぜ教育者に転身したのか。そのいきさつ、そして、学生たちへの思いに迫る。


転機はご主人の海外転勤

宮澤准教授は大学卒業後、広告代理店の「株式会社博報堂」で、主に食品、教育、通信関係のクライアントを担当し、広告コミュニケーション戦略やマーケティング戦略の立案、商品開発業務等、数多くのマーケティング業務に携わっていた。2009年より、千葉商科大学サービス創造学部で教鞭をとっているが、なぜ広告マンから教員に転身したのか。きっかけは、ご主人の転勤だったという。
「主人のアメリカ転勤に伴い、会社を退職し、1年半程度シカゴに住んでいました。会社員として10年近く働いて、自分の引き出しをさらに充実させたいと思っていたタイミングだったので、向こうにいる間に、現地の大学院に通うことを決めました。大学院の授業は夜間にも多く設置されていたので、就業後に学びに来る学生も多く、年齢もさまざま。いくつからでも学ぶことができるのだなと痛感しました。」
日本に帰国後、さらに知識を深めようと早稲田大学の大学院商学研究科へ。「マーケティング研究の分野で著名な亀井昭宏教授と恩藏直人教授が、ブランド・コミュニケーションを研究する社会人大学院のプログラムを立ち上げたことを知り、門戸を叩きました。はじめは、2年学んだ後、再び実務に戻れたらと思っていたのです。しかし、そこで研究を進めていくうちに、さらに深く学びたいと思うようになりました。」
そして、早稲田大学の大学院で修士号を得た後、学習院大学大学院の博士課程へ進学。消費者行動を専門とする青木幸弘教授に師事した。「実務で携わってきたブランドについて研究をしたいと考え博士課程に進みました。青木研究室では、特にブランド・コミュニティといって特定のブランドを囲んで集まる消費者グループを研究対象としていました。消費者がどのような要因でコミュニティに参加し、ブランドの価値を高めるような行動を行うのか、そのプロセスに関心を向けていました」と宮澤准教授は語る。
 

「学生たちと向き合っていると、日々たくさんの発見があって勉強になります」と、宮澤薫准教授は語る。

 


研究室の先輩の勧めで千葉商科大学の教員に

研究に没頭していた宮澤准教授に、ある時、青木研究室の先輩から声がかかる。「2009年に千葉商科大学でサービス創造学部が立ち上がる予定があり、そこでマーケティングの教員を募集するのでぜひ挑戦してみないか、と言っていただきました。まだ長女が小さかったこともあり迷う部分もあったのですが、新しい学部は、アカデミックだけでなく、社会経験も生かせるのではないかと、背中を押していただきました。教員の道に進むことができ、採用していただいた学部にも背中を押してくださった先輩にも感謝しています。」
2009年、本格的に教員としての道がスタートした。現在は、マーケティング関連科目の講義とゼミナールを担当している彼女だが、とくにゼミでは、企業のマーケティング部門の協力のもと、マーケティングの知識と実践力の向上を目指した活動を行っており、グループワークなどをしながら、企業から与えられた課題に対し、コンセプトワーク、調査、企画書の作成など、社会に出た際に必要な実践力、企画力を身につける取り組みを行っている。実際に、このゼミで行われる現状分析や企画書の作成は、宮澤准教授自身が広告代理店時代に身に着けたというが、海外の大学院でも大いに役立ったと明かしてくれた。
 

宮澤ゼミでは、グループワークを行い、企業の方から与えられた課題を解決していく取り組みを行っている。

 


座学での学びがアウトプットできるゼミ

一方、宮澤ゼミに所属している学生たちは、どのような学びが得られていると実感しているのだろうか。千田万佑花さん(サービス創造学部4年)は、「企業との接点があるというのが魅力的だったので、このゼミに入りました。CMやコンビニの商品棚を見ても、制作サイドの意図を考えてしまうようになりましたし、色々な方向から商品について調べるので知識も増えました」、青木雄大くん(同学部4年)も「グループワークもすごく難しいけれど楽しいです。それぞれが色々なことにアンテナを張り巡らせるようになりました。また大企業の方々の前でプレゼンをする機会があるので、度胸もつきましたし、プレゼンをする力が飛躍的に向上したように思います」と胸を張る。
また、指導法については二人が口をそろえて言うのは、学生たちの意見をつぶすことなく、上手く次にステップアップできるようにアドバイスをくれるということ。千田さんは、「自分が座学で学んだことをアウトプットできるゼミだと思います。ですからももっとインプットしなければと思いましたし、今までやってきたことを生かしたい人はぜひ宮澤ゼミに来てほしいです」と話す。
 

ゼミ生の青木雄大くん(左)、千田万佑花さん(右)とともに。二人とも宮澤准教授について、「先生なのに壁がないというか、近い存在です。お母さんみたいな人(笑)」と語る。

 


目標に向かってモチベーションを高く持つ

同大学の学生たちに対してどのような印象を持っているのかと宮澤准教授に尋ねると、「自分の学生時代よりみんな真面目ですね(笑)。4年間ですごく伸びていく感じが見て取れますので、頼もしいなと感じています」と返事が返ってきた。しかしその一方で、もっと貪欲になってもいい、とも。「商大の学生たちは優しくて控えめな部分があるので、目標に向かってもっとモチベーションを高く持ってもいいかなと感じることがあります。就職活動についてもやりたいことや行きたい会社が見つかったら、その目標に向かって積極的に向かっていくことが大事です。社会に出るとそういった部分も必要になってくるので、在学時代にいろいろなものを自らつかみ取っていく力を持てるようになることは、すごく重要だと思います。」
 
最後に学生たちに向けてメッセージをもらった。
「就職活動中は強く希望していた職種ではなかったけれど、働いてみたら意外と向いているのはないかと思うようになった、という話を卒業生から聞くことがあります。私自身、広告の仕事を辞めて海外に行くと決めた時、周りで止めてくださる方がいたり、自分でも本当にこれでいいのかなと悩んだりしましたが、結果的にはアメリカに行ったことによって今の道が開かれました。もちろん好きなことにこだわることは大切ですが、同時に人生で起こる様々な出来事を柔軟に捉えることも大事だと思っています。恩師である青木先生が『誰にでも必ずチャンスはめぐってくるけれども、チャンスが来た時にそれをつかめるかどうかは、日ごろの努力があるかどうかによります』とおっしゃっていたことが、とても印象に残っています。学生の皆さんにも、経験していることは全て自分が成長するために必要なことだと柔軟に受け止め、目標に向かってひとつひとつ努力を重ねてもらえたらと伝えたいです。」
 

宮澤准教授の研究室には、先生の人柄をうかがわせるゼミの卒業生たちからのメッセージ色紙や写真が飾られている。

 

ゼミ生と企業プレゼンの際の一枚。

 
 

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<プロフィール>

宮澤 薫(みやざわ・かおる)

青山学院大学文学部卒業後、株式会社博報堂に入社。主に食品、教育、通信関係のクライアントを担当し、マーケティング業務を担当する。退社後、アメリカ・シカゴのLoyola University Chicago 教育学部大学院 Research Methodology 専攻にて学ぶ。早稲田大学大学院商学研究科修士課程 修了、学習院大学大学院経営学研究科博士後期課程 単位取得退学(2009年)。同年、千葉商科大学サービス創造学部専任講師を経て、准教授に。「広告論」「マーケティングケースディスカッション1」「サービス・マーケティング」。専門は、マーケティング論、消費者行動論。 ▼詳細はこちら