神野嘉一
株式会社スポーチュア
代表取締役社長
社名の「sporture(スポーチュア)」は、sports(スポーツ)とfeature(特化する)・future(未来)・venture(ベンチャー)を掛け合わせた造語だと代表取締役社長・神野嘉一氏は言う。学生時代、黎明期のIT業界でいち早く起業し、その後、スポーツ産業に活躍の場を広げた彼が、スポーツ産業の明るい未来について語る!
スポーツに特化したIT企業
「縁あって千葉ロッテマリーンズのWebサイトを作成した際に、他業界に比べてスポーツ業界のIT活用が非常に遅れていることに気づきました。業界が未成熟な分、一からつくり上げられる魅力がある。そう考えてスポーツに特化したIT企業を新たに興したんです」と、創業当時を神野氏は振り返る。2006年8月9日、「野球」の日の語呂に合わせて同社を設立した。
それから10年。私たちが置かれているIT環境は目まぐるしく変わった。同社が求められる業務や技術も日々進歩が求められる中、現在は自社メディア(オウンドメディア)をもっていないスポーツチームのために公式サイトを立ち上げたり、ファンが楽しめる動画や写真、記事やデータなどのコンテンツを作成して、それらをオウンドメディアやソーシャルメディアなどで配信したりするサービスの提供が業務の中心となっている。クライアントには千葉ロッテマリーンズ、埼玉西武ライオンズ、PLM(パシフィックリーグマーケティング)などプロ野球チーム、リーグのほか、サッカー(Jリーグ)の横浜F・マリノス、ラグビー(スーパーラグビー)のサンウルブスなども名を連ねる。
「うちの業務の根幹は、デジタルメディアを使って、チームとファンをつなぐこと。魅力的なコンテンツを配信することで、ファンがオウンドメディアに訪れる環境をつくり、チケット購入、ファンクラブ入会、グッズ購入などのアクションにつなげ、最終的にはチームのビジネスに貢献することをめざしています。今後はコンテンツがチームのビジネスにどのような影響を与えるのか、一段踏み込んだ分析とマーケティング戦略を強化していきます。」
スポーツ業界は就職先としてアリか?
現在、同社の社員は約15名、さらに約70名のアルバイトスタッフを抱える。ファンの心に刺さるコンテンツやサービスを日々つくり出しているスポーチュア社だが、就職を控える学生たちからは「スポーツ業界を就職先として考えてもいいのか?」という質問をよく受けるという。
神野氏は、「今は自信をもって、イエスと言えます。スポーツ産業は10年前とは比較にならないほど成熟してきています。また、あらゆる面で追い風が吹いており、これからは日本で数少ない成長産業になるだろうと考えています」と話す。
実際、アベノミクスの第三の矢である成長戦略「日本再興戦略2016」の中で、スポーツ産業は成長産業として指名されている。2020年の東京五輪・パラリンピックに向け、国策として力が注がれることが約束されているのだ。ソフトバンクが4年間約120億円でバスケットリーグ「Bリーグ」の試合をライブ配信する独占契約を結んだことや、DAZNがJリーグと高額で放映権契約を結んだことなど、国内のスポーツビジネスではポジティブなニュースが増えている。
「海外に目を向けると、スポーツ産業は大きな市場となっています。例えば野球。米・大リーグの市場規模は2015年に1兆円を超え、実に日本の7倍近くになっている。しかし、20年前は日米の市場規模に大差はなかったのです。裏を返せば、日本でもそれだけの成長余地はあるということ。外部環境を考えると放映権料はまだまだ高くなることが見込まれますし、デジタル領域でも、米国の事例なども参考にやれることはまだたくさんあると思います。」
そのひとつがSNSだ。日本国内では、炎上を恐れる球団や選手はSNSの利用にやや消極的だ。
「スポーツの最大の魅力はライブなので、モーメントを共有するSNSとの親和性が高い。全世界のフェイスブックの利用者約3億5000万人の約半数は何らかのスポーツのコミュニティに属しているというデータもあるように、日本のスポーツ界もSNSの利用をもっと生かすべき。こうした課題があることは成長の余地があるということ、とも考えています。」
最後に、神野氏は学生たちに、「どうせ仕事をするなら、楽しくやりがいのある仕事の方が自分自身も成長できる。スポーツが好きで、スポーツ産業の発展にやりがいを感じられる人は、ぜひスポーツ業界をめざしてください!」とエールを送った。