井上晴貴
千葉テレビ放送株式会社 総務局総務部次長

「チバテレが地元とどんなかかわりを持っているか、今日は皆さんに伝えたい」と話すのは、千葉テレビ放送株式会社総務局総務部次長の井上晴貴氏だ。千葉商科大学サービス創造学部の「企業セミナー」にゲストスピーカーとして登場した井上氏が、独立テレビ局、地域テレビ局とは何か、そして、同社が目指す将来像を語ってくれた。


「独立局」とは何か

千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業でもある同社は「千葉県民に愛されるテレビ局であること」を目標に掲げ、開局45周年を迎えた。そもそも地上波テレビ局は、東京を拠点とするネットワークの中心「キー局」、大阪を拠点とする「準キー局」、キー局のネットワークに加盟している地方系列局「ネットローカル局」に大別されるが、千葉テレビはこの3つの中には属さず、「独立局」と呼ばれる。「キー局は関東全域がエリアであるため、地元1都6県分、すべてを話題にするのは難しい。そこで、地元の話題を伝えるため、各エリアに独立局ができました。全国で13局あり、キー局の番組の影響を受けないため、キー局とは違った番組の編成を行っており、チバテレでは千葉県域に特化した情報を伝えています。」
 

「開局45周年にあたり、これまで支えていただいた地域の皆さまへの感謝と、これから先も身近に愛されるテレビ局であるために、『スマイル with You(スマイル ウィズ ユー)』をキャッチコピーに、現在さまざまなキャンペーンを実施しています」と井上氏。

 


「テレビ局の柱」編成の仕事

井上氏は大学卒業後、さまざまな部署を経て、編成局編成部に配属された。「テレビ局の柱」とも呼ばれる編成の仕事について、「ショッピングセンターのフロアマップ」だと語る。何階(曜日)の、どの場所(時間)に、どんなお店(ジャンル・内容)を開けば、お客様(視聴者)が来てくれるか――、つまり編成部が目指すものは、顧客(視聴者)のニーズと店舗(番組)をマッチングする(「視聴率」が上がる)ものと解説。店舗(番組)については、①プライベートブランドを売る店(自社制作)、②ブランドショップなどの誘致(番組購入)、③お店を開きたい方への店貸し(持込番組)の3つに大別されると言い、この組み合わせの仕方が、各局の個性を表すという。
また、局内の「法の番人」でもある編成部は、視聴者の方に錯誤を与えないか、視聴者の方の不安をあおる表現となっていないか、人権を侵害したりしていないかなど、法令や法律をもとに考査していくという重要な部署。同社での就職をめざす学生たちにも人気の高い職種だと明かした。
 

7月のチバテレは「高校野球一色」。高校野球の組み合わせ表と番組表を切り離して使えるようなチラシやポスターを作成し、県内で希望するお客様に配っていると言う。

 


チバテレの将来像

昨今のインターネットやスマートフォンの普及により、ライブや動画、即時性などテレビ局がウリにしてきたものが取って代わられてしまう時代。そんな中、地元ローカルテレビ局として何ができるか、を日々模索している。
その中で、2011年3月の東日本大震災からの教訓は大きい。「震災の際、断水に困っている県内の人たちが多くいる声を聞き、チバテレでは銭湯やコインランドリーに電話をして使用の可否を確認し、情報として伝えた。つまり、地域の皆さまが安心できる情報を伝えることが、地域メディアに必要だと思ったからです。SNSも活用しながら、テレビだからこそできることを地道に続けていていくことが重要だと考えています。」
 
また、地域メディアは「地元」「ふるさと」を実感する場でなければならないとも。地元に根付いたイベントや独立局同士で手を組んで行うイベントなどを企画・実行し、そこに地域の皆さまが参加することによって、ふるさとへの回帰、さらには自分のアイデンティティを見直すきっかけにつながるのではないかと言う。「地域の生活情報を浸透する立場として、チバテレは歩んでいきたい」と井上氏は力強く語った。
 
最後に、「将来、どんな業種に就きたいか希望を持っていると思いますが、いきなり希望通りにその職に就ける可能性は低いと思ってほしい。自分がやりたいことに対してどんな道があるのか、直接的ではなくとも、違う方向から携われることができるのではないか、ぜひ企業を研究しながら調べてほしいと思います。また、配属先が直接的にやりたいことにつながらない、という場合もあるかもしれない。しかし任された場所で地道にコツコツとやっていくことが評価につながり、いつか夢への道が開けるはず」と、自身の経験談を交えながら就職活動を直前に控えた学生たちにエールを送った。
 

<プロフィール>

井上晴貴(いのうえ・はるき)

千葉テレビ放送株式会社 総務局総務部 部次長
 
1973年山梨県甲府市出身。筑波大学卒業後、千葉テレビ放送株式会社に入社。事業局県番組部で県の広報番組を制作。その後、報道制作局スポーツ部、編成局制作部、編成局編成部などを経て、2014年より現職に就く。