島田達人
株式会社千葉ロッテマリーンズ 事業本部営業部部長 

千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業でもあるプロ野球チームの「千葉ロッテマリーンズ」。現在、同学部で行っている「プロジェクト実践」と呼ばれる「活動から学ぶ」カリキュラムでは、さまざまな分野で、学生たちが企画・実践し多くの学びを得ているが、この千葉ロッテとも連携して活動を行っているプロジェクトもある。株式会社千葉ロッテマリーンズの事業本部営業部部長、島田達人氏が「プロスポーツチームにおける営業活動と観客動員を伸ばしている理由」について語った。


観戦者を増やすことが課題

千葉市美浜区にあるQVCマリンフィールドを本拠地とする千葉ロッテマリーンズ。1949年に創設した同チームは、これまでに日本一4回、セ・パ交流戦では2005年から2連覇、アジアチャンピオンでも優勝を果たしている。チームの特徴といえば、なんといってもファンが20~30代の若い層ということと、独特の応援スタイルということ。ファンが選手の応援歌を口にしながら、球場でタオルを振り回してジャンプをする姿は千葉ロッテの代名詞でもある。
マクロミルと三菱UFJリサーチ&コンサルティングの共同調査によれば、2015年度のスポーツの市場規模全体は、2兆5,000億円と言われる。そのうち、スタジアム観戦市場は5,900億円。2014年度の7,351億円と比較して減少していることをとらえても、「観戦者を増やすことが課題」と島田氏は語る。この課題を解決すべく、営業マンはファンに対する“おもてなし”を考え、日々チャレンジをし続けている。
 

「(マリーンズの本拠地である)QVCマリンフィールドでは、野球以外でも勝負する。音楽イベントやコンサートを行ったり、野球以外のこともやるために調整したりするのも営業職の仕事」と島田達人氏は語る。

 


新しいチャレンジが集客に

「野球のオフシーズンは暇と思われがちですが、営業職にとってはオンシーズン。お客様に満足してもらって、そのお金を頂戴しないと事業が続けられなくなります。翌年の営業活動やチケットの価格決めなど、1年中忙しいのが営業職です」と島田氏は言う。他の業種の営業マンと基本的には業務は変わらないが、大きく異なるのは、選手の翌年の参稼報酬(年俸)が前年度に確定することだ。そのため、プロスポーツチームの営業マンは翌年の選手人件費を含めた支出に見合った売上を確保しなければならない。
「勝敗依存、成績依存といった、勝ち負けに左右されすぎるのはよくありません。実は、成績がよくなればお客様が増えるかというとそれほど即効性がない。それよりも、ファンに球場に来て大きな声を出して楽しかった、また行ってみたいと思わせることが我々の仕事なんです。」
実際、8月20日時点でチームはパ・リーグトップではないが、新しい価値を生み出すことによって、課題である観客動員数を伸ばすことに成功している。たとえば、球場で野球観戦をしながらバーベキューができたり、オシャレなカフェ風の個室やお座敷で野球を楽しめたり、「マスターズドリームシート」と呼ばれるバックネット裏の特等席で観戦ができるVIP向けのシートを新設したり、すっかりおなじみとなった「挑発ポスター」を交流戦用に用意して話題づくりをしたり、ビール半額デーというイベントを行ったり……。これまでの野球の世界では考えられなかったさまざまなチャレンジや話題を提供し続けることが集客へとつながっている。
「モノを買っていただくという意味では、ほかの営業となんら変わりがありません。お客様により高い価値を感じてもらうために、面白いと言ってもらえるようにチャレンジする。ですから、単に営業をするだけでなく企業と企業を結ぶアイデアを生み出す“プロデューサー”のような方をわが社では求めています。今までの慣習や習慣にとらわれないことが大事。これからも新しいサービスを提供していきたいと思っています」と締めくくった。

 

小林尚平くん(サービス創造学部3年)は「企画が採用されるためにはどのようなことをすればよいか」と島田氏に尋ねる。

 
 

「就職試験の面接官をしていて、やりたいことだけを語る人を大勢見てきました。しかし、やりたいこと、だけでなく、自分がやれることをきちんと説明できることが大事だと思います」と学生たちにメッセージを送った。

 
 

<プロフィール>

島田 達人(しまだ・たつと)

株式会社千葉ロッテマリーンズ 事業本部営業部部長
 
1965年、東京都生まれ。1989年に就職。その後、2005年に株式会社千葉ロッテマリーンズに入社。2012年12月より事業本部営業部部長に就任。営業活動全般の責任者を務める。