仙石泰一
株式会社三技協 代表取締役社長 

株式会社三技協は、日々われわれが使っている携帯電話やパソコンなどのインターネット通信に欠かせない事業を行っている企業だ。千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業である同社代表取締役社長を務める仙石泰一氏が、「通信事業の変貌とサービス」をテーマに、事業内容と通信サービスの将来像について語った。


「最適化」で1世紀企業をめざす

宇宙航空研究開発機構(JAXA)が打ち上げた小惑星探査機「はやぶさ」が2010年に帰還したニュースは記憶に新しい。はやぶさが小惑星イトカワに着陸し、サンプルを回収して地球に帰還することを目標とした大規模なプロジェクトである。成功すれば世界初の快挙となるこのプロジェクトに株式会社三技協も参加した。飛行途中、行方不明になって帰還が危ぶまれた「はやぶさ」、それを執念で発見したのが三技協のエンジニアだったというから驚きである。
 
三技協の設立は1965年4月。グループ会社をあわせて1,000人の社員を抱える企業である。全国に24カ所の拠点を持っており、高速道路のETCや衛星通信システム、携帯電話の基地局設置など、私たちの生活に欠かせない通信インフラ事業を行っている。仙石泰一代表取締役社長は、「私たちは“無線”という名のつくあらゆるシーンに携わってきました。この会社は祖父が立ち上げた会社ですが、祖父は戦後、日本全国に電話線を張り巡らせた事業にかかわりました。それが会社を発展させたきっかけです。企業理念は『The Optimization Company(R)』。日本語では“最適化”。どこにいてもつながりやすい場所にするというのが、私たちが求める最適化です。昨年で50周年を迎えましたが、次の目標は1世紀企業。目の前にある課題を常にとらえ、最適であることをめざしています」と語る。
 

「はやぶさ」の発見はニュースにも大きく取り上げられ、映画化もされた。

 


三技協、独自のシステム

現在、300社以上の企業と取引をしている三技協。1,000人いる社員のうち、実に60%が取引先企業に入って仕事を行っている。仙石社長は、「ナレッジ・データベース(知識の総和)という活動を行っています。アンテナ網をつくっていくのには、システム設計、工事、調整など、さまざまな会社が携わります。社員を各企業に投入して、私たちが調整役を引き受けることで、仕事を円滑に進めることができるサービスになるのです」とその理由を明かす。
  
また、三技協では営業部、総務部、人事部など、組織で分けないのが特徴。社員一人ひとりがオールマイティに業務実行できるよう指導されている。それを可能にしているのが、「サイバーマニュアル」と呼ばれるシステム。これは社内に散在する知識やノウハウが集約・蓄積されているデータベースで、全社員が集い、誰でも簡単に書き込むことができるうえ、これを見れば誰でも情報を把握することができるという。
 

講義の途中、学生たちに質問を投げかける場面も。

 


暮らしはどう変わるのか

私たちの暮らしは、どこでも通信できる便利で豊かなものになった。近未来、生活はどのように変化していくのだろう。「2010年まではICT、それ以降はIOT/IOE時代と言われますが、その先にはGNR(遺伝子工学、ナノテクノロジー、ロボット工学)時代が到来するでしょう。つまり、将来は人間がロボットを操作するのではなく、ロボットが人間を操作するようになるかもしれない。ロボットと人間がどう共存していくか。それが、私たちのめざすサービスになっていくと思っています」と将来を見据える。
 
「身の周りで当たり前になっていること、それはサービスだと認識してほしい」と仙石社長。「何を提供しているかよりも、自分たちがその利便性を追求し、それを実現するためにはどうしたらいいか。学生のみなさんには、好奇心と信念を持ってほしい。これからの時代、“気づきの多い人”が社会に必要だと思っています」と学生たちにメッセージを送った。
 

「未来は、PCもスマホもタブレットもない。ジャスチャーをすれば伝わったり、言葉に出したことが映像化されたりするようになるかもしれない」と仙石社長は未来予想図を述べた。

 

講義終了後には、学生たちから続々と質問がなされた。

 

※なお本記事は、千葉商科大学サービス創造学部の井上義次教授による講義「サービス企業セミナー1」のゲストスピーカーとして登壇された仙石氏の講義内容を抜粋・編集したものです。
 

<プロフィール>

仙石 泰一(せんごく・やすかず)

株式会社三技協 代表取締役社長 
 
1972年東京都生まれ。大学卒業後、1996年にコスモ石油株式会社入社。2007年、株式会社三技協に入社後執行役員となり、その2年後、同社専務取締役/株式会社三技協イオス代表取締役社長に就任。三技協代表取締役副社長を経て、2015年8月より、代表取締役社長に就任。慶應義塾大学大学院経営管理研究科、修士MBAコース修了。