千葉商科大学サービス創造学部の教員を紹介する「教えて、センセイ!」第4回は、マーケティングを専門とする松本大吾専任講師。教員を目指したいきさつや大学生と向き合う仕事のやりがい、さらには今年も募集が始まった「サービス創造大賞」の攻略法まで幅広く話を聞く。

 


大学院への進学

――松本先生は元から教員を目指されていたのでしょうか。

松本 いえ、そういうわけではなかったんです。早稲田大学時代には、マーケティングの中でも広告を中心に学んでいたこともあり、マスメディアや広告代理店などへの就職を考えた時期もありました。特に、小学生の頃から慣れ親しんだ日本独自の文化でもある「マンガ」には深く興味があったことから、マンガ雑誌を発行するような出版社の就職試験も受けたりしました。
一方で、締め切りが目前に迫っていた大学院進学という選択肢もつねに頭の片隅にありました。幸い成績も良かったこともあって学内の推薦もいただき、大学院へ進学することができました。

 
――大学院時代のご苦労は。

松本 大学院では商学研究科に所属しました。英語の論文や文献を読み込まなければならず、英語だらけの日々に大変苦労したことを覚えています。
2年間の修士過程の後に、博士課程の試験に合格して、はじめて大学に残る権利を得ることができるのですが、この試験というのが英語で出題される問題で、その出題範囲も広く、専門のマーケティングだけではなく、経済学、会計なども含めて学ばなくてはなりませんでした。さらに、海外でのビジネス経験を持つような社会人の皆さんも受けるもので、例年30人中10人弱が合格できるというような倍率でした。
僕がそうして大学院で学生をしている間に、大学時代の同期たちの服装が変わっていくのがわかるんです。すでに社会人となり活躍する彼らが、成長を遂げていく様子を実感する一方、自分はといえば、1年に1回しかない博士課程の試験に落ちたら浪人ということになるわけですから、それなりにプレッシャーを感じた時期でもありました。

 
――そして見事、博士課程に合格されたわけですね。

松本 ドクターコースに入った後、助手に採用され大学から給料が払われるようになり、ようやく研究者の仲間入りを果たすことができたと実感しました。
研究者としては、論文を書いてはじめて評価されるわけですが、そもそも研究の進め方や論文の書き方がわからないんですよ。そこで、指導教授である亀井昭宏先生や、同門の先輩である諸先生方に話を聞いたり、本を読んだりしながら、こうした研究者としてのイロハを学ぶことから始めました。さらには、学会に参加して周囲の皆さんの振る舞い方を見ながら学んだりもしました。研究者という職業について考える、はじめての機会だったと言えるかもしれません。

 


学生と向き合うこと

――学生に対して「教える」ということについてはどのように感じていますか。

松本 2011年に千葉商科大学のサービス創造学部に着任したのですが、大学院時代から、マーケティング、マーケティング・リサーチ、広告論、英語などの非常勤講師として指導に当たってきた経験があったため、講義をすることに関するベースがすでにできていたことは、自分にとってのアドバンテージだったと思います。

 
――実際にどんなことを意識して講義されているのでしょうか。

松本 元々子どもの頃から、考えることが好きでした。逆に言えば、納得する答えがないと動かない子どもだったんです。中学や高校時代、成績はいい方でしたが、そもそも「なぜ必須科目なのか」「将来、何の役に立つのか」がわからない科目が多くて、勉強をしていても面白く感じなかったんですよ。そういう経験をしてきたから、「なぜマーケティングが必要なのか」「どのように世の中で役に立つのか」という点を意識的に伝えられるように授業をしています。
また、講義はほとんど雑談に近いほど、相当柔らかい内容になっています。教科書を読むだけなら僕が講義をして話す必要もないでしょうし、僕が面白いと感じていることを僕なりの表現で伝えていく、それがライブで講義する意味だと思って話をしています。
マーケティングが面白いものだと感じてもらうことが何よりです。好きにさえなってくれれば、学生たちが自らいろいろと知りたくなるものですしね。最終的には、彼らが本屋のビジネスコーナーに行って、関連書籍を読んでみたいと思ってもらうことが、ある種のゴールと言えるかもしれません。

 
――プロジェクト活動についても指導をされていますよね。

松本 パーティ・プロジェクトというプロジェクトの担当教員をしています。また昨年までは、コミュニティカフェ・プロジェクトも担当していました。このプロジェクト活動は、学生が主体的に考え自主的に活動することを通じて学びや気づきを得ることが重要だと考えていますので、なるべく口を出さずに見守っているようにしています。
こうしたプロジェクト活動は、成功すること自体が目的ではありません。それよりも、悔しい思いをすることの方が大切だと思います。そこで発奮することが、成長につながるからです。ただ一方で、学生たちが相談しに来た時に、事情がわかっていなければ適切なアドバイスができないので、僕自身は学生たちの自主性に任せつつも、注意深く彼らを観察するように意識しています。

 

12

 

Pocket
LINEで送る