千葉商科大学サービス創造学部のインハウスメディアとしてスタートした「Kicky!」に、9月、学生編集部が発足する。その初代編集長に任命されたのが山田絢美さんだ。この学部に入ったいきさつとこれまでの取り組み、そして新たに挑む学生編集長としての意気込みを、彼女に聞く。
周りを理解し、自分自身を伝える
「小・中・高と、座学よりも活動しながら学ぶ方が好きだったこともあり、アクティブラーニングに力を入れている大学を中心に進学先を探しました」と語る山田さん。いろいろ調べる中で行き当たったのが、千葉商科大学サービス創造学部だった。「他に興味を持った大学もありましたが、学内の施設が整っているこの大学は魅力的でした。大学生活は個人戦、自分自身でどこまで頑張るかが勝負だと考え、実家から近くて通学時間が短く、勉強や活動に十分時間を費やせるこの大学を選ぶことにしました。」
出身高校は進学校。やっとなんとか滑り込んだという感じだったと言う。「赤点をとるほど勉強に苦労しましたし、私が底辺の生徒という感じでした。でもだからこそ、大学に入ったらしっかり勉強して成績もとって、その上でやりたいことはすべて挑戦しようと決めました。」
有言実行、彼女は入学以来、毎年成績優秀者として表彰されている。学内の印象を尋ねると、「教職員の方々のサポートがとにかく厚い、というのがサービス創造学部の印象でした」と即答する。その一方で、入学当初は学生たちの意欲に温度差を感じた時期もあったと正直に打ち明ける。「大学では向上心の強い学生同士で刺激をし合い、自分を成長させ続けたいと考えていました。でも周りの学生たちを見ていて、生意気な言い方をすると物足りないなって思ってしまった自分がいたんです。」
しかし、その考えは徐々に変わっていく。「自分自身の心に余裕ができてきたことが大きいと思います。周りの友人たちは、私とは違う環境で育ってきたからこそ、私が持っていない視点や考えを持っていることに気づきました。何をやるにしても、決して一人ではできません。周りの人を巻き込む必要があるということは、みんなのことを理解しなければなりませんし、私の考えに興味を持ってもらえるように周りに伝えないといけない、ということです。当たり前のことですが、それに気づいて自分自身が大きく変わったと思います。」
こうして彼女には、自ら思いを伝えたいと思える仲間が徐々に増えていった。
目的意識と傾聴力
「学部内だけではなく、他学部の友達もつくりたい」と考えた山田さんは、学部内のプロジェクト活動には参加せず、全学部からメンバーが集う「オープンキャンパススタッフ」として4年間活動してきた。就職の内定もとり4年生となった今、この活動に多くの時間をさいてサポートしていると言う。
「私自身は、何事をやる時も『目的から考えること』を心がけてきました。後輩たちを見ていると、現状分析や目標・理想もないまま、目の前の作業に打ち込んでいるケースが多いと感じます。そんな時は彼らから、どういうスキルを伸ばしたいのかを聞き出し、それに見合った仕事を担当してもらえる組織づくりを進めるとともに、なぜその仕事が必要なのか、目的を意識してもらうようにアドバイスしています」と彼女は語る。
これまでに受けてきた中で最も印象に残っている講義を聞くと、堀口卓志先生による「経営学ケースディスカッション」だったと言う。「会社で起こるさまざまな人間関係のトラブルなどをケース題材にして、登場人物の頭の中を想像しながらディスカッションを行う授業なのですが、この講義を通じて、他人の意見を分析しながら聴く力が身についたと思います。ただ相槌打ちながら話を聴いているだけだったら、今の私ではなかった気がします。」と話すように、彼女の思考の礎になっている。事実、就職内定先となったヤマト運輸でインターンシップをしていた際も、「傾聴力がある」という評価を受けた。人の話を聴きながら突っ込む癖がつき、傾聴力が上がったことを彼女自身が自覚している。
率先して挑む気持ちとやり遂げられないジレンマ
幼いころから、バスケットボール、ソフトボール、硬式テニスと数多くのスポーツに挑戦してきた。また、学級委員なども積極的に務めてきた。
「母から、『何でもやれることはやりなさい』と言われて育ってきたことが影響していると思います。誰もやりたがらないことであれば、自分が率先してやるようにしよう、ということは常に考えてきました。」
かつて、彼女は学内情報を発信するフリーペーパーを作りたいと訴えた。先生たちと相談しながら企画を練ったものの、残念ながら実現には至らなかった。そんな時、彼女に声をかけたのが、サービス創造学部の吉田優治学部長だった。
「学部内の情報を発信するWEBメディアをつくるという趣旨で、学部長勉強会が開催され、私もそのメンバーに加えていただきました。学部長は、サービス創造学部の象徴的存在でありながら、学生たちとも近い位置でいろいろと話をしてくださいます。この人に認めてもらいチャンスをものにしたい、その一心で向き合ってきました」と語る彼女だが、「学部長の期待には応えられていません」と自戒する。「吉田先生からは、『いつも山田は最後までやり遂げない』という指摘を受けています。悔しいですが、興味が移りやすく飽きやすいというところは確かに私の弱点だと思っています」と言うと、山田さんは口を結び直した。
就職活動の際に内定に至るプロセスにおいても、新たなそして大きな発見があった。
「サービス創造学部には50社を超える公式サポーター企業が存在します。私は身近に良い企業をたくさん知っているのだということをあらためて実感する一方で、一体どの企業で何の仕事をしたいのかを説明することができない自分に気付いたんです。」
解決の糸口は、熊谷智宏氏の就職活動に関する著書を読んだことだった。さらにその後、熊谷氏のセミナーを生で聴きに行って確信を深めた。
「恥ずかしい話ですが、自分自身について理解していなかったことが全ての原因でした。物事を達成できないという弱みも、そうやって数多くチャンスをいただき転ばせてもらったのは自分しかいないと前向きに捉えれば、強みと考えることもできると気づきましたし、そういう自分のダメな部分も話せるようになったことで、面接などに対する恐怖心は全くなくなりました。」
自分自身を知る。簡単なようで難しいことに取り組み一皮むけた彼女は、見事にヤマト運輸株式会社から総合職での内定を得たのである。
新たな挑戦で自分の殻を打ち破る
こうして自分自身を理解できるようになったからこそ、彼女にはあらためて乗り越えたい壁がある。
「吉田学部長は決して適当なことをおっしゃらないんですよね。面白くなければ『面白くない』、読みづらければ『読みづらい』、足りなければ『足りない』と、なんでもズバズバ言ってくださいます。でも、そうしてうまくいかなくても、失敗しても、何度もたくさん転ばせてくださいました。それでも、成し得られなかったことばかりです。だからこそ、卒業前になんとかきちんとカタチにしたものを残して認めてもらいたいという気持ちもあります。そして、学部長の下でいろいろ重ねた経験を、友達や後輩に分け与えたいんです。」
その一つの形が、商経学部の友人と2人で立ち上げた「日本を知ろうの会」だ。
「うちの学部にも留学生はいますが、その割合は圧倒的に少ないのが事実です。授業の中でグループワークをしていても、言葉の壁もあって深い友達関係にまではなかなか至らないですし、日本語でコミュニケーションを取れる場がないから、結果的に外国人留学生は留学生同士で集まってしまうというのが実情なんです。折角の機会なのにもったいないな、何か私にできることはないかな、と。」
そこで彼女が考えたのは、日本国内での活動を通じて驚きや感動を味わいながら日本の歴史や文化を知り、留学生も含めた学生たちの交流機会を提供する「場づくり」だった。国内の魅力あるスポットを訪問するなどして、あまり知られていない日本文化を知ってもらい、視野を広げようという趣旨で会を発足した。活動資金を工面するため、大学の教育後援会が主催する「春学期チャレンジ応援奨学金」に応募したところ、書類と面接による審査の末、奨学金10万円を獲得した。「卒業までもう時間が少ないから仕方ないよね、という周りからの目にも負けずやっていきたいです」と彼女は意欲を語る。
そんな彼女が挑むもう一つの新たな取り組みが、Kicky!学生編集部だ。「元々やりたかったメディアづくりのチャンスをいただき、嬉しく思うと同時にプレッシャーも感じています。とにかくやりきりたいですね。」
もっともっと貪欲に……。大学生活も残り僅かとなった彼女のチャレンジは、まだまだ続く。
就職後はどんな未来を想像しているのだろうか。
「会社には1年目から地方に飛ばしてくれ、とお願いしています。新しい土地での生活はつらさもあるんでしょうが、私自身はどのような環境でも楽しめるタイプだと思っていますので、ぜひ知らない土地で仕事に挑んでみたいです。
サービス創造学部で過ごしてみてあらためて感じたことは、”サービス創造”はすごく難しいということ。私自身、まだまだ知識や経験値が少なく、つまらないところで躓き、迷ってしまっているのが現状です。もっといろいろな人にお会いして、さまざまな立場に立ってみて、経験値をどんどん上げていきたいですね。」
そう言い終えると、山田さんは目をキラキラとさせた。
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8月、夏休み。昨年体験した中国・上海立信会計学院への留学に続き、学生生活最後の夏休みを、台湾・国立中正大学で約1ヶ月に及ぶサマープログラムに参加している。さまざまな環境で学び続ける彼女が、学生編集長として9月から当メディア「Kicky!」上で始める新企画にもぜひ注目だ。
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