日本の大学界で「サービスを学ぶ」機運が高まりつつある。そんな中、先行事例として政府も注目するのが千葉商科大学サービス創造学部だという報道もされている。同学部の吉田優治学部長に、6年目を迎えたここまでの苦労と今後の展望を聞く。


政府も注目する学部

6月20日の日本経済新聞夕刊一面に、サービス経営学に関する大学を増設するという記事が掲載されました(*)。日本の産業界に必要な「人材」を、政府が本腰を入れて育て始めたのだと思います。そしてこの記事の中では、政府が参考例として注目するのが、就職率99.3%を誇る千葉商科大学サービス創造学部であるとしています。
 
*サービス経営学、50大学で 京大院に専門課程
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教員人材と企業連携

千葉商科大学サービス創造学部は、創設して丸5年がたちました。ここまで紆余曲折、さまざまな苦労がありましたが、ここにきてようやく想いが形になってきたなと実感しているところです。
50大学でサービスに関連した学部・学科をつくるという目標のようですが、教育内容、教育方法、適切な教員採用、企業との連携のあり方、学生募集などを含めてどの大学にも簡単にできることではないと思います。
また私たちの学部では54の公式サポーター企業と提携し、企業の方々による学生に向けた講義や、プロジェクト活動など企業と連携したさまざまなプログラムを実施しています。これも、私たちの教育の理念と企業の想いが合致してはじめて実現できること。私たちをサポートしてくださっている企業の皆さんには大変感謝しています。


サービス経営の意味

今から遡ることちょうど50年前、1964年に開催された東京オリンピックをきっかけに、新幹線や首都高速などのインフラが整い、カラーテレビが普及し、2次産業を中心にした日本の高度成長期を迎えることになりました。
一方6年後、2020年に東京オリンピック・パラリンピックが開催されます。このメガイベントを終えた後の日本に求められるのは、インフラや技術革新ではなく、「おもてなし」に代表されるような日本の優れたサービスマインドをいかにグローバルに広めることができるか、そしてそれを支える優秀な日本人たちがいかに海外で活躍できる場が広がるか、ではないかと思っています。
事実昨今、サービスの価値に対する注目が高まりつつあり、サービス関連の研究も活発になってきたように感じています。
しかしながら、このような話に出てくる「サービス」というコトバは、「サービスサイエンス」という意味合いで使われることが多く、ほとんどの場合、サービスの生産性を向上させる管理工学系のジャンル、あるいはマーケティングの視点で扱われているように思います。
一方で、私たちがこれまで扱ってきたのは、そうした視点だけではなく、経営学的な視点を含めた「サービス」です。このような「サービス経営」という観点で研究されているケースはほとんど見られません。
私たちはこのジャンルの先行者として、「サービス創造」というテクストで私たち独自の教育スタイルを追求しながら、学生たちとともにますます成長していきたいと思っています。

 
 

<プロフィール>

吉田 優治(よしだ・ゆうじ)

000790専門:経営管理論・経営教育論・サービス創造論

1987年青山学院大学大学院経営学研究科博士課程修了。同年、稚内北星学園短期大学経営情報学科専任講師。1989年千葉商科大学商経学部専任講師に就任、助教授、教授を経て、2009年新設の「サービス創造学部」初代学部長・教授に就任、現在に至る。アメリカ経営学会・経営教育部会日本担当理事、2013年8月より全国ビジネス系大学教育会議会長。アメリカ経営学会よりアワード(2001~2008年)、韓国経営教育学会より学術賞(2009年)、日本マネジメント学会から国際貢献表彰(2013年)など。2000年ボストン日本人研究者交流会(Boston Japanese Researchers Forum)設立。

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