千葉商科大学サービス創造学部で毎年恒例となっている「サービス創造大賞」のアイデア募集が今年も始まった(※1)。挑戦者たちはどのようにこの企画に挑んでいるのか、2013年度に受賞した関係者たちに話を聞く。
時代を知り、表現力を磨く。
ひとりは、例年、高校賞受賞者を多数輩出する昭和第一高等学校で21年間にわたり教鞭を執っている戸田修靖先生だ。
「高校2年生を対象にした国語表現という時間割の中で、このサービス創造大賞への応募を生徒たちへの課題として義務づけています。
サービスとはなにか。おもてなしとはどういうことか。人に喜んでもらうためにはどうしたらいいのか。
これらを考えることは、彼らにとって非常に重要な経験になると私は考えています。事実、文章表現の一環として自らのアイデアを他人に伝えることは、表現力を磨くいい機会になっているはずです」と戸田先生は話す。また、賞を目指すことは生徒たちにとっても大きなモチベーションになるため、過去の大賞受賞アイデアの分析も欠かさない。
「高校賞を受賞すると、朝礼の際全校生徒の前で校長先生から表彰してもらえるんです。生徒にとってもやりがいになるはずです。
福祉の要素を含んでいること。コストがかからないこと。お客様に対するおもてなし精神に富んでいること。企業や店にとっても助かること。こうした視点は、生徒たちにも伝え意識してもらうようにしています。」
戸田先生が、このコンテストの存在を知ったのは、教員を対象に開かれた千葉商科大学サービス創造学部の説明会でのことだった。このような取り組みは面白いと感じ、早速教え子たちにチャレンジさせてみると、生徒たちが目をキラキラさせて話し合っている姿が見受けられた。そして今もずっとチャレンジを続けている。
「教室で学ぶことには限界があります。国語表現という授業でも、ただ作文を書かせるだけは教育として十分ではありません。アイデアそのものは未熟な面も多いですが、社会との接点を意識しながら新しいアイデアを創造し表現することによって、彼らの考える力が養われているのだと実感しています。東日本大震災の後、生徒たちと東北の被災地や地熱発電所の見学に行ったのですが、やはりフィールドに出て学ぶことが大切だと感じました。
世の中のさまざまなサービスも昔と今では大きく違います。現代社会のニーズを意識しつつ創造力を育むためにも、生徒たちにはこれからもこのコンテストにチャレンジしてもらいたいと思っています。」
そう言って戸田先生は笑顔を見せた。
体験をいかし、人に優しく。
もう一人は2013年度優秀賞受賞者、現在、千葉商科大学サービス創造学部2年生の犬塚誉さんだ。
「僕が優秀賞を受賞した提案は、『側面開閉式ショッピングカート』というサービスでした。スーパーマーケットのショッピングカートに載せたかごの側面を開閉式にすることで、重いカゴを持ち上げてレジ台の上に載せなくても会計ができるようにするというアイデアです」と犬塚さんは自身の提案内容を説明する。
「僕は普段スーパーのレジでアルバイトしているんですが、お客様は年配の女性がほとんどなんですよね。皆さん、レジ台まで持ち上げるのに苦労している様子を見ていて、従業員として何かサービスできることはないかなと。ですから、思いついたというよりも、不便だなと思っていたことを解決できるようにアイデアとして提出したら、賞をいただけたという感じなんです。」
この点は、千葉商科大学サービス創造学部・松本大吾先生からのアドバイス(※2)にも一致する部分だ。
「優秀賞はうれしいですが、本音を言えば大賞が欲しかったです(笑)。でも、大学で賞をとったことをアルバイト先の店長に報告したら、「なかなかいいじゃん!」とほめてもらったんですよ。それはうれしかったですね」と話す犬塚さんに、賞に近づくコツ、そして今年のチャレンジについて聞くと力強い答えが返ってきた。「自分が体験したことを通して……でないとやはりなかなかアイデアも思いつきませんよね。また、賞に近づくためには、お年寄りや障がいを持った方々に優しいサービスといった視点も有効なように思います。
自分自身が賞をとるためには、応募者が少ない方がいいのかもしれませんが、アイデアそのもののレベルを高めるという視点で考えると、たくさんの応募があった方がいいとも思っています。そしてその中でも、今年こそ大賞をとれるように、僕もまたアイデアを考えて参加してみたいと思っています。」