加藤雄太
京成電鉄株式会社
総務人事部 人事課
新幹線を除くと、日本最速となる最高速度160km/hで走るのが「成田スカイライナー」。上野・日暮里から成田空港を最短の36分でつなぐこの列車を運行するのが京成電鉄株式会社だ。2016年秋、千葉商科大学サービス創造学部がさまざまな企業と連携して行う講義「サービス企業セミナー」に、同社総務人事部人事課の加藤雄太氏が登壇し、交通事業の現況と求める人材について語った。
インバウンド観光需要の取り組み
京成電鉄株式会社は、「お客様に喜ばれる良質な商品、サービスを安全、快適に提供し、健全な事業成長のもと、社会発展に寄与すること」を経営理念とし、1909(明治42)年に設立された。京成電鉄を中心に、東京ディズニーランドを運営するオリエンタルランドを含む125社のグループ会社で、不動産業、ホテル業、レジャー・サービス業などさまざまな事業を展開している。
中でも、京成電鉄の代名詞ともいえる成田スカイライナーは、1978(昭和53)年に成田空港への空港アクセス列車として誕生。2010年には、東京・日暮里―成田空港間を従来の51分から15分短縮する36分でつなぐことに成功した。さらに、近年の訪日外国人増加に伴い、旅行代理店と提携しながら、成田スカイライナーの需要を伸ばす試みも行っている。
「京成電鉄をご利用いただいているお客様は1日平均70万人で、東京オリンピック・パラリンピックに向けて更なる増加を図りたい。」と加藤氏は語る。
経営形態は小林一三モデル
そもそも日本の鉄道会社は、JR、私鉄、公営交通、その他(モノレール、新交通システム、ケーブルカー、ロープウェイなど)の4つに分類される。京成電鉄は大手私鉄(関東9社、関西5社、東海、九州各1社)に属するが、私鉄の多くは「小林一三モデル」という経営形態を採用しているという。
小林一三氏といえば、言わずとしれた阪急グループの創始者。彼がつくりあげた経営モデルは、「鉄道を軸に地域に関連事業(不動産業、小売業、レジャー業、球団経営など)を展開し、収益を上げる」形だ。京成電鉄も、駅および沿線を中心とした街づくりに取り組んでいる。待機児童や高齢化問題を見据え、沿線に保育施設や介護施設を建築するほか、マンションやホームセンターをつくり商住一帯の大規模開発も行う。
「鉄道沿線の魅力を高め、居住者や来訪者を増やしていくかを常に考えなければなりません。今後は少子高齢化やお客様のニーズ多様化への対応がカギを握っています」と加藤氏はその理由を明かした。
京成電鉄が求める人材と今後の展開
京成電鉄沿線に住み、身近な存在だったことから、大学卒業後、同社に入社したという加藤氏は総務部労務課を経て、4年目で現在の総務人事部人事課へ異動した。こうしたジョブローテーションによりジェネラリストとして成長することができるという。同社は、どのような人材を求めているのだろうか。
「わが社の経営理念に共感できる人。リーダーシップを発揮し、周囲を巻き込みながら行動できる人で、耐え抜くだけでなく、自分らしさを発揮できる人を求めています。また、常に目的意識と熱意をもって自分で考えて、最後まで責任をもって、やり抜くことができる人がいいですね。」
ただし、人の命を預かっている交通事業だけに、他業種に比べ、責任と重圧はことさら大きい。「運転でミスを起こすと死亡事故や遅延につながります。採用担当としても責任と重圧に耐えられる方を求めている」と学生たちに語り掛ける。
「現在、都営地下鉄(東京都交通局)と協力して乗り放題のチケット販売に取り組んでいますが、今後は、さまざまな会社を巻き込んだ事業展開をめざしたい。安全、品質の高さ、低廉さ、スピードが交通事業の主なキーワードですが、それらを踏まえたうえで、どのようにコストダウンしていくか。新しいものをつくることはもちろんですが、ソフト面の事業開発もしていきたい」と同社の今後を見据えた。
この日も学生たちは採用担当である加藤氏から、就職活動におけるヒントや入社後の話を直接聞くことができた。こうして現場のプロによる“リアルな声”は、同学部が99%以上の就職率を誇る要因のひとつといえるだろう。
- 加藤氏は採用担当として、「これから就活していく中で今は景気がよくて、就職はしやすくなっていると思う。弊社の総合職としても皆様のOBの方もいらっしゃるので、ぜひ向上心を持って取り組んでほしい」と学生たちにエールを送った。
※なお本記事は、千葉商科大学サービス創造学部の滝澤淳浩准教授が担当する「サービス企業セミナー2」のゲストスピーカーによる講義内容を抜粋・編集したものです。