増田努
セントラルスポーツ株式会社 経営企画室 次長
「世界に通用するアスリートを育てたい」と1969年に設立したスポーツクラブのセントラルスポーツ株式会社。今年のリオデジャネイロ五輪にも競泳女子日本代表として寺村美穂選手(千葉商科大学付属高校出身)が出場するほか、競泳男子日本代表の鈴木大地氏、体操競技男子日本代表の冨田洋之氏、同・鹿島丈博氏ら金メダリストを含む、延べ25人の五輪選手を輩出し続けている。同社の経営企画室次長、増田努氏がフィットネスクラブの現状と、求める人物像について語った。
創業者は「オリンピアン」
「スイミングスクール」の先駆けとなる同社が誕生したのは1969年のこと。1964年東京五輪の競泳男子日本代表だった後藤忠治氏が、体操競技男子日本代表の小野喬氏、同・遠藤幸雄氏、同・女子日本代表の小野清子さんらの協力を得て設立した。現在206カ所(直営店144、受託店舗62)でスポーツクラブを展開している。
「0歳から一生涯の健康づくりに貢献する」を経営理念に、スクール事業、フィットネス事業、レジャー関連事業、法人事業、介護予防事業などさまざまな事業を行っている。
フィットネスクラブ業界は、年間4000億円と非常に小さい市場だと明かした増田氏。少子高齢化の時代だからこそ、今後は健康食品、リラクゼーション、介護サービスなど、健康をキーワードに市場規模を拡大していくと言う。
昨年から同社は、新たなサービスとして移動式フィットネスクラブ「フィットネスエクスプレス」を開発。バスやトラックの中で、ホットヨガやマシントレーニングができるようにしたものだが、近くにフィットネスクラブのない地域などにも健康を届けられる新たな取り組みにも挑戦している。
- 1988年ソウル五輪、競泳男子100m背泳ぎ金メダリストで、現スポーツ庁長官の鈴木大地氏は、幼少期から同社のスイミングスクールに通っていたという。「ソウル五輪の金メダルは、日本中に感動を与えたと同時に、わが社の創業者の夢がかなった瞬間でした」と増田氏。
サービスとは何か?
「皆さんが所属している学部は『サービス創造学部』で、私の会社もサービス業と言われる業種ですが、サービスとはどういうものだと思いますか?」という増田氏の問いに、学生たちからは「あったらいいなというものを有料で提供する」「予測していた期待値よりも上回ったときの幸福感」など、さまざまな意見が上がった。「お客様に満足していただくことを提供することがサービスだと思います。無料と有料のサービスがあり、もちろん無料でできればよいですが、お金をいただかないと満足してもらえないものであれば有料で提供する」と話し、「人間はサービスを一回受けるとそれが経験値になり、何回か続くと当たり前になっていく。ですから常に期待を上回るサービスを提供し続けていかなければならないのです。」
求める人物像は情熱を持っている人
新たなサービスにチャレンジし続け、業界のトップクラスを走り続けるセントラルスポーツはどのような人材を求めているのだろうか。
「安心・安全・信頼を当社では掲げていますが、中でも信頼が一番大切。一度信頼をなくすと、その先回復するのは難しいからです。たとえば、マシンのメンテナンス、施設の清潔さ、子どもたちへの丁寧な指導などといったことは、安心・安全につながります。そこから初めて当社に対する信頼が生まれる。お客様の心と体を健康にし、喜んでいただけるサービスを常に考え、行動できる方を求めています。お客様に感動していただけるサービスの提供をするには、まずは信頼していただける人材が重要。そして、情熱のない人はどのような職業に就いても長続きしません。情熱、目標、夢をはっきり持つことで、いい人材になれると思います。我々も、2020年で創業50周年を迎えますので、ますますいいサービスが提供できるように頑張っていきます」と学生たちに語りかけた。
※なお本記事は、千葉商科大学サービス創造学部の中村聡宏専任講師が担当する「サービス企業セミナー3」のゲストスピーカーによる講義内容を抜粋・編集したものです。