石井亜矢子
株式会社JTBコーポレートセールス 総務部 総務人事課 リーダー

JTBと聞いて思い浮かぶのは、「赤い看板の大手旅行会社で、店舗があって、そこで旅行を申し込んで……」といったところだろうか。もちろん、正解。だが、それは、同社の事業のほんの一部に過ぎない。今回、JTBコーポレートセールス総務部 総務人事課でリーダーを務める石井亜矢子さんが、個人にとって馴染みの薄い、同社の法人向けの事業について具体的に話してくれた。


アジア市場における
圧倒的No.1ポジションの確立を目指す

現在、JTBのグループ会社は173社、従業員数約26,000人、グローバルネットワークは37カ国100都市に及ぶ。同社は、旅行業界で国内ではもちろんNo.1。2020年までにはアジア市場においても圧倒的No.1ポジションの確立を目指している。と同時に、出版、広告、福利厚生、イベントプロモーションなど、様々な分野に特化した事業も展開しており、グループ企業全体の事業規模は2015年3月現在、1兆3239億円にのぼる。
「かつて私たちは、自らを総合旅行産業と言っていましたが、2006年の分社化と同時に事業ドメインを『交流文化事業』に変更しました。JTBは、地球を舞台に人々の交流を創造し、平和で心豊かな社会の実現に貢献する。こんな経営理念を元に、人と人だけでなく、学校と企業、地域と地域、国と自治体など、いろいろなものを『交流』させることでビジネスを創造している会社です」と石井さんは明快に語る。
 
その中で、石井さんは入社以来12年半、法人営業で様々な仕事を経験した。
「入社時、女性社員には制服が支給されますが、法人営業担当は制服を着用せず、このようなスーツ姿で毎日仕事をします。社員旅行や会社の団体旅行を提案、手配し、添乗も行っていましたが、それだけが『法人営業』の仕事ではありません。大切なのは、お客様が抱えている課題を聞き出し、旅行という手段を使ってその企業の課題を解決するような企画を提案、実行することです。」
 

「感動のそばに、いつも」は耳馴染みのあるJTBのスローガン。

 


「アーティストのファンクラブツアー」も法人営業の仕事

たとえば、マーケティングプロモーション事業。旅行会社がプロモーション?と聞くとピンと来ないかもしれないが、旅先の記憶は残りやすいことから、旅行のシーンは商品をプロモーションするにはもってこいの場だという。
「あるお菓子会社のプロモーションでは、富士山の登山口でその会社の板チョコを配りました。登山客が疲れた時にその板チョコを食べれば、どんな高級なものよりもおいしく感じるはず。ましてや、広大な景色の中ですから、その景色と共に心に残り、その商品のファンになるでしょう。このようなプロモーションは、大手の広告代理店よりも我々の方が地域との人脈を活用し実施することが可能です。」
他にも、ファンを拡大したい、囲い込みたい、というファンクラブの課題を解決、目的を達成するため、ファンクラブツアーも法人営業では手がけるという。アーティストのライブツアーや周年記念イベントなど、様々なファンクラブツアーを成功させてきた。
 

学生の質問にひとつひとつ丁寧に答える石井さん。

 


求める人物像は、自律創造型社員!

また、地域活性化という課題を解決するためにツアーを企画する。
「長野県阿智村には、環境省に認定されている日本一の星空があります。しかし、スキーシーズン以外は観光客が減り賑わいが無くなる、という大きな課題が村にはありました。そこで、地域の宝である『日本一の星空』をブランディングし、ツアーを企画することで、オフシーズンにも人の交流を生み出し、成功事例になりました。こうしたビジネスを提案、創造していくのが、法人営業の仕事なのです。」
 
こうした仕事の数々は、自分の心意気次第で入社後すぐにでも任されるという。
「仕事のやりがいは、自分でアイデアを考え、足でいろいろなお客様に会って、新しいフィールドを切り拓き、お客様の笑顔を現場で直接見られること。自ら考えて積極的に行動し、そこにホスピタリティ精神を加えることで、お客様から信頼を得て仕事を生み出す。我々はこうしたことができる『自律創造型社員』を求めています」と石井さんは、溌剌とした笑顔で学生達に語りかけた。
 

石井さんに大学の団体旅行について質問する井上義次教授。

 

※なお本記事は、千葉商科大学サービス創造学部の井上義次教授による講義「サービス企業セミナー1」のゲストスピーカーとして登壇された石井氏の講義内容を抜粋・編集したものです。
 

<プロフィール>

石井 亜矢子(いしい・あやこ)

株式会社JTBコーポレートセールス 
総務部 総務人事課 リーダー
 
2000年、日本交通公社(現JTB)に入社。以来12年半、法人顧客を担当。2012年に総務部総務人事課へ異動。入社6年目、10年目で出産。ダイバーシティを推進する同社で、育児休暇を取りながら第一線で活躍を続ける。