「ALSOK塾」で学生たちが得た学び

2015年12月19、20日、千葉商科大学サービス創造学部の教員と学生が1泊2日の研修「ALSOK塾」(千葉県印西市・東京研修所)に挑んだ。「ALSOK塾」とは、同学部の公式サポーター企業である綜合警備保障株式会社(ALSOK)が通常1週間行う社内研修を、一般向けに1泊2日(もしくは2泊3日)に短縮した独自のキャリア教育サービスだ。社会人として必要な要素を身につけるこのプログラムから彼らは何を学び得たのか。Kicky!編集部が潜入取材を敢行した。

 


「人間教育」に重点を置いたプログラム

そもそも警備の仕事とは、お客様の命や財産を守る業務。それを遂行するためには、各々が責任を持ち、信頼できる人であることがもっとも重要なことだという。そのため、この「ALSOK塾」では、社会人として必要な挨拶や礼儀、規律の重要性について学ぶ「人間教育」に重きを置いた教育プログラムを行っている。
同学部は2011年秋に初参加。2回目となる今回は、学生たちに加え、教員である今井重男准教授、中村聡宏専任講師も参加、計12人の研修生が受講した。コミュニケーションの重要性を認識する他己紹介(自己紹介)やビジネスマナーなどの講義に加え、防災の仕方や護身術などを実践。これらの研修を通し研修生たちは、「初動全力」(最初から全力で取り組むこと)、「凡事徹底」(当たり前のことを人には真似できないくらい一生懸命やること)の2つの心構えを徹底的に指導された。
 

 


防災を学ぶ講義では、防犯・防災等に対する意識変革の機会を与えられる。


水の入った消火器を使って実際に使用してみる研修生たち。


「自制心」「集中力」「団結力」が養われる修了考査

合宿最終日には、教官たちの前で研修の集大成を実践する「集団行動訓練の修了考査」と呼ばれるテストが行われた。集中力、精神力、団結力が求められ、「右向け、右!」などの号令とともに、一糸乱れず動作する。直前まで、動作が揃わなかったり、大きな声を発することができず、繰り返し注意を受けていた研修生たちだったが、修了考査では研修生がひとつにまとまり、見事合格を勝ち取った。審査した溝田拓巳教官は、「今までで一番よかった。集団行動の目的は精神の鍛錬。一人一人が仲間を思いやり、自分勝手な行動をとらず、歩調を合わせることが大切なのです。社会生活に欠かせない自制心、集中力、団結力を体現して、2日で目標を達成したことは素晴らしかった。今後も忘れず、自信をもって人生に役立ててほしい」と研修生たちを賞賛した。
 

 


集団行動訓練の修了考査では、研修生たちが心をひとつにして挑んだ。


張り詰めた緊張感の中、メンバーの動きもピッタリと揃う。


乗り越えて得たもの

学生長に自ら志願した同学部2年生の増田侑太くんは、「事前に研修のビデオを見ましたが、僕にできるのだろうかと不安になりました」と話す。「人をまとめることの難しさを痛感しました。最初は教官たちの厳しい声が飛んできて心が折れそうになったり、学生長として何もできないことに、自分自身苛立ちを感じたりしました。しかし、皆さんがついてきてくれたおかげで、最後の終了考査に合格することができた。厳しい面はありましたが、みんなと乗り越えていく楽しさもありました。時間、規律を守ることが大事だということを、実習を通して学ぶことができ、今後の学生生活にいかしたいと思います」と充実した表情を見せた。
 
同学部の2期生であり、現在ALSOKビルサービス株式会社に勤務する小田ひとみさんも2日間にわたる研修を受け、「フレッシュな皆さんと一緒に研修を受けることができ、初心に戻れたように思います。正直、初日は時間や規律が守れない後輩たちを見て、すごく不安になりました。しかし、夜になって、教官に注意を受けたことで、それぞれに自主性が生まれたのか、最後の考査の結果にもつながりました。すごく感動しました」と後輩たちをねぎらった。
 


「みんなが最後までついてきてくれて嬉しかった」と、終了証をもらい、ほっとした表情を見せる、学生長の増田侑太くん(サービス創造学部2年)。


教員自ら研修生として参加してみて

「凡事徹底――。ここで教わることは、社会人にとって基本的な当たり前のことばかり。それでも意識しなければできず、私自身も、できていると思っていたことができていなかった。それを痛感するいい機会になりました」と話すのは、研修生として初参加した今井准教授。「学生たちが大きく変化していく様子を見ることができました。このプログラムの優位性を強く感じるとともに、多くの学生たちに受講してほしいと思います。参加した学生たちにとっても、今後の生活に役立つことでしょう」と教員として、また研修生として大きな学びがあったことを明かした。

 


今井重男准教授も研修生としては初参加となった。「指導教員と学生という関係性は一切ありませんでした。次回からは学生たちに自分の体験談として赤裸々に語れると思います」とコメント。

中村専任講師は、「決められたルールを徹底して行うことは、簡単そうですが、実は非常に難しいことを改めて感じました。最初は、学生たちの引率者として、学生たちの自主性を待とうと思っていました。ただ途中で、それが中途半端な考えで、逆に周りの足を引っ張ってしまっているのではないかと感じました。むしろ、学生たちが焦りを感じるくらい、自分が率先して引っ張ってやろうと思い直しました。学生と教員の団結力を高めるためにも一緒に参加するというのはいいことかもしれませんね」と研修を振り返った。
 
報告、連絡、相談、時間や規律を守る、メモを取る、挨拶するといった社会人に必要な要素。そして仲間を思いやり、助け合う心……さまざまな学びを得た1泊2日の研修。彼らたちのすがすがしい表情からは、達成感が見てとれた。
 

 


徒手における護身術の実技では、力がない人でも簡単にできる技のレクチャーを受けた。


二人一組になり、研修生たちは、護身術を実践する。

 


研修生たちは、教官の言葉に真剣に耳を傾ける。


終了考査に向けて、研修生たちは最後の追い込みをかける。なかなか動作が揃わず、教官の怒号が鳴り響いた。

 


閉講式で篠田悦郎東京研修所長は、「長い人生、時間を大切に、皆さんを取り巻く学校や社会といった環境、人生の有難さに気づいてほしい。皆さんには仲間がいて、社会の中で生かし生かされています。健康で素晴らしい人生を送ることを願っています」と研修生たちに向けてエールを送った。


溝田拓巳教官は「皆さんは根をあげずにやり遂げた。本当によく頑張りました」と講評した。