サービス創造ビジネスフォーラム2015
~千葉商科大学サービス創造学部公式サポーター企業 ビジネス交流会~
2015年3月6日(金)、千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業による「サービス創造ビジネスフォーラム2015」が開催された。会場となったのは、同学部公式サポーター企業のヤマト運輸株式会社の総合物流ターミナル「羽田クロノゲート」。公式サポーター企業の関係者と教職員ら約50人が参加し、「物流サービス創造に見るサービスイノベーション」をテーマに、大人の社会見学と活発な意見交換が展開された。
新しい大学教育を目指して
サービス創造フォーラムは、千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業54社がビジネス交流をするためのプラットフォームづくりを狙い、同学部が企画したもの。2回目となる今回は、ヤマト運輸株式会社が2013年にオープンさせて注目を集めている「羽田クロノゲート」で開催され、意見交換会とともに同施設の見学会も行われた。
フォーラム第1部の冒頭、登壇した同学部の吉田優治学部長は「日本のサービス、世界のサービスを変えたいという思いでやっています。またそんな人材を育成したいと考えております。2014年6月20日の日本経済新聞夕刊にも掲載されたように、現在、経済産業省がサービス人材育成の強化を掲げており、私たちの学部がそのモデル学部として取り上げられました。先日、安倍(晋三)総理も『サービスの生産性向上とサービスの改革が日本の経済成長の鍵になる』と発言していましたが、経済産業省からも『サービス創造学部もいけるところまでいってください』と言われています。皆さんと一緒に、ぜひ新しい大学教育を作っていきたいと思っています。今日は、羽田クロノゲートの中を見学させていただき、サービス創造の手がかりを得ることができたらと思っています」と挨拶し、意欲を語った。
「世のため人のために」ヤマト運輸の取り組み
続いて、ヤマトホールディングス株式会社人事戦略担当シニアマネジャー兼ヤマト運輸株式会社執行役員人事総務部長の大谷友樹氏が、ヤマトが目指してきた姿と将来の姿について、キーノート・スピーチを行った。
全国を網羅する宅配ネットワークの先駆者となったヤマト運輸の創業は1919年。創業100周年となる2019年に向けてヤマト運輸が目指すのは、「アジアNo.1の流通・生活支援ソリューションプロバイダー」。「誰でも欲しいものを欲しいときに、欲しい方法で手に入れられるよう、生活者が地域先にとらわれることなく、豊かで便利な生活を送れるようにしたい」と、新たなサービスを提供すべく事業展開している。
1976年、ヤマト運輸の代名詞でもある宅急便事業が開始。今では当たり前となった「スキー/ゴルフ宅急便」「時間帯お届け」など、顧客ニーズに合わせた商品を生み出し、ヤマト運輸は右肩上がりに成長してきた。「ビジネスとして目指すのは、当然儲けたいという思い。でも、そういう商品は数年でこの世からなくなってしまう。宅急便事業を提案した小倉昌男社長(当時)の言葉に『サービスが先、利益が後』があります。お客様の欲しいものを第一に考えるサービスを追求しています」と大谷さん。その上で、「世のため人のために」「オンリーワン」といったことを考えながら、商品開発を行っていると話す。
原点は、「社員それぞれが代表だという思いで仕事ができるかどうか」。ヤマト運輸では社員一人ひとりが「ヤマトは我なり」という意識で「徹底的に、お客様の立場で考える」ことを浸透するよう日々努めていると語った。
物流の玄関口に「羽田クロノゲート」
第2部では、ヤマトホールディングス誇る最新式の物流ターミナルで、現在、見学予約が取りにくいと言われる「クロノゲート」の実地見学会が行われた。「クロノゲート」とは、ギリシャ神話の時間の神「クロノス」と、国内外をつなぐゲートウェイ(門、出入り口)の二つの言葉を組み合わせて名づけられた造語。「新しい時間と空間を提供する物流の『玄関』であるとともに、物流の新時代の幕開け」となることを目指して誕生した。
大谷氏は、「日本最大級の物流拠点を作ったのは当社として初めてのこと。羽田国際空港から近い場所のも、アジアのゲートウェーとして使っていきたいという思いからです。宅急便の拠点だけでなく、ヤマトグループの戦略的なサービスをここから実現していきたい」と設立経緯を語った。
見学コースでは、宅急便やヤマトグループの歴史をはじめ、物流の仕組み、ヤマトグループの目指す物流改革「バリュー・ネットワーキング」構想が、趣向を凝らした展示やアトラクションで紹介された。
サービスの生産性とリノベーション
最先端の設備見学を堪能した後、第3部では、同学部の公式サポーターの企業の方々によるサービスの創造や革新について活発なディスカッションが行われた。
ヤマトグループの人材確保について、吉田学部長が星野武司人事総務部人材開発課長に問うと、「千葉商科大学をはじめとする大学や高校との結びつきを強化していくこと。そして、定期的に優秀な人材を共有できるような関係作りが大事です」と具体策を挙げた。
新規事業の展開について、星野氏は「現場の声が商品化につながるケースが多い。お客様や社員からの声を本社が受け、実際商品となることもある」と明かした上で、「市場分析をした中でいかにも当たりそうという他社商品が出てきた場合、それを超えるサービスや仕組みになっていなければ商品化できません。基本的には、2番煎じ、3番煎じではなく、オンリーワンであること。そして、世のため人のためになっているか、利益ではなくサービスが優先されているかという理念に合致することが大事」と、ヤマト運輸の基本理念にのっとったサービスを提供していく考えを示した。
「サービスの生産性を上げながらイノベーションを生み出していくにはどうしたらよいか」という問いに対しては、「新商品の開発はなかなか難しい」「オンリーワンをどうやってつくるかが大問題」「新しいものよりも既存のものを進化させていくことが多い」など、企業ごとにさまざまな意見が述べられた。
サービス創造学部の中村秋生教授は、同学部におけるイノベーションについて、「学問から学ぶ(サービスについてのさまざまな科目を配置)「企業から学ぶ(企業の方に大学で講演をしていただく)」「活動から学ぶ(企業と関わりながら行うプロジェクト活動)」の3つを掲げた。
最後に、吉田学部長が「2015年度は、もっともっと企業から学ばせていただきたい。絵空事ではなく、“リアルビジネスラーニング”をコンセプトにします。皆様には、大学の中にもっと入り込んでいただいて、学生と一緒に、商品やサービスをプロモーションしたり、共同でマーケットリサーチをしたりしていただきながら、他大学との差別化を図っていきたいと思っています。それが、日本の大学教育を変えたり、日本のサービスを変えたりする手がかりになればよいと思っています」と、フォーラムを締めくくった。
公式サポーター企業の参加者からも、「こういう機会があると、私たちにとっても大きな刺激になる」という声が数多く聞かれたように、公式サポーター企業間の交流が深まる第一歩になったようだ。