大学生意識調査プロジェクト「FUTURE2017」

2017年12月、公益社団法人東京広告協会が主催する「大学生意識調査プロジェクト FUTURE2017」の結果報告会が行われた。今回で23回目を迎える本プロジェクトは、千葉商科大学をはじめ、青山学院大学、駒澤大学、上智大学、専修大学、日本大学のマーケティングを専攻する6大学・30人の大学生たちが、東京広告協会指導の下、企画・実施・分析などを行っている。今回のテーマは、「大学生のマナーに関する意識調査」。千葉商科大学サービス創造学部の松本大吾ゼミナールから参加した学生に、活動の中で得た学びについて聞いた。

 


学外との交流が刺激的な機会に

松本准教授が学生時代に本プロジェクトに参加していたこともあり、2015年より松本ゼミではこのプロジェクトをゼミの活動内容に取り入れてきた。「学内だけでなく、学外からの刺激を得てほしいと考えています。とくにFUTUREでは他大学の学生と半年にわたって密に作業をします。それが、他の活動にはない特徴的な部分」と松本准教授はゼミの活動に取り入れる理由をこう語る。今回、松本ゼミからは同学部3年の押尾樹くんが参加した。「昨年参加した先輩がゼミの中で、このプロジェクトでどのようなことを行うか教えてくれました。内容がとにかく難しそうで、自分にできるのだろうかと不安だったのですが、先輩が楽しそうに話しているのを聞いて、まずは4月のキックオフミーティングに参加してみようと思いました。実際に行ってみると、広告代理店のアドバイザーの方や他大学の学生がいて、すごく刺激的な機会になるのではないかと感じたんです。」
プロジェクト開始当初は同大学からも4人参加していたが、最後まで参加し続けたのは押尾くんのみだった。毎週月曜日に定例会があり、週2~3回、参加大学で集まりがあるなど、時間や経済面でも続けていく難しさがあったという。しかし、押尾くんは「もとはといえば、松本先生が僕たちに与えてくださった機会。先生に対して感謝の気持ちもありましたし、自ら参加しようと決めたことなので、途中で辞めてしまうのはもったいないと感じました。他人よりも少しでも秀でた部分や経験が欲しかったこともあり、何としてでもこのプロジェクトにしがみついてやろうと思った部分もありますね」と照れながら話す。
 

結果報告会を終えて、安堵した表情の押尾樹くん(サービス創造学部3年)。「調査をしていて、大学ごとのカラーの違いというのも純粋に面白かった部分ですね」と振り返る。


マナーが悪いのは大学生

千葉商科大学を含む6大学が調査し続けてきた本プロジェクトの今回のテーマは、「大学生のマナーに関する意識調査」。4月から8か月間にわたったこのプロジェクトではアドバイザーとの定例会があり、そこでは自分たちが仕上げた課題に対する意見をもらう。「メンバーで必死に課題に取り組んで、僕たちの中では自信を持って出したものも突き返されることも多くて。一体何が正しいのか分からなくなったこともありました。ですが、こうしたアドバイスもすごく新鮮でした」と押尾くんは振り返る。

マナーをテーマにした調査は、2007年にも実施されていたが、SNSやスマートフォンなどが登場し、この10年でマナーを取り巻く環境も大きく変わった。ここに着目したメンバーは、再度、大学生のマナーは変化したのか、参加大学の1~4年の男女1,008人を対象に意識調査を行った(*)。調査の結果、マナーが悪いのは「大学生」と答えた大学生が65.1%。とくにSNSや携帯電話におけるマナーが悪くなったと答えた大学生が6割に及んだ。さらに、ついついやってしまうマナー違反の第1位は「LINEや地図アプリ利用で歩きスマホ(29.6%)」、「イヤホンを着用しながらの走行や二人乗りなど自転車のマナー違反」(11.3%)など。
中でも注目は、大学生の73.3%が、友人・知人の目を気にしている点だ。LINEの既読スルーについて、80.0%の大学生が「自分はしない」と答え、そして、76.6%が「周囲がやると気になる」と回答した。また、板書・スライドをスマホで撮影したり、譲るべき人がいない場合は優先席に座ったりといった無駄・非効率を嫌う「合理的なタイプ」が半数を超えた。こうした調査結果から、「友人・知人の目線を気にする」「合理的であること」といった大学生ならではの新しいマナー意識があり、それらを“忖度”と“損得”と結論づけた。
 

6大学30人のメンバーの中から、学生が発表を行った。


得られるものの大きさ

今回プロジェクトに参加して一番大変だったことを押尾くんに聞くと、「他大学とのコミュニケーション」という答えが返ってきた。しかし、他大学の学生とも積極的に声をかけあい、何度もグループを変えながらグループワークをしたため、こうした不安はすぐに取り除かれたという。一方で、他大学と比較し、パワーポイントやエクセルといったPCを扱う点においては、千葉商科大学が優れていたのではないかと言う。「とくに、マーケティングのゼミに入って分析などの仕方も学んできたので、それを生かすことができたように思います。プロジェクトの中の合宿で、一人ひとりプレゼンをする機会があったのですが、嬉しいことにアドバイザーの方から一番うまい発表だと褒められました。それはゼミで培ってきた成果だと感じています。実務的な部分でいえば、他大学との差はまったく感じなかったです」と話した。
 

この経験を通して具体的にどのような学びがあったのか。
「技術面や知識的な面で成長できたと思います。ロジカルに考えることは、就職活動でも生かせるのではないかと思いました。またグループワークの仕方も、自分の意見を持ちつつ、人の意見も尊重するとか、そういうノウハウも学びました。それが生かせるのはこれからなので、自分が学んだことが就職活動などでどのように発揮できるのか楽しみです。」
そのうえで「興味があるなら、まずは一度取り組んでみることが大事。そしてある程度経った段階で、一度この活動が自分に向いているのか振り返って考えてみる。FUTURE自体、学内では味わえないような経験ができて、自分の成長に確実につながったので、8か月間ひとつのことに集中して頑張るのは、得られるものが大きいですね」と後輩たちにメッセージ。こうした言葉には経験に裏打ちされた自信がみなぎっていた。
 

松本准教授は「自分のできること、できないことを知ることができたのではないでしょうか。とくに自分のできないこと、不足していることを自覚し、それを高めようという意識が生まれたと感じています。それ以外にも、量的なデータに対する意識も変わったと思います。今後のビジネスの世界では、データから物事を考えることは必須。ですから、ゼミでもデータを取り、分析をするような活動に取り組んでいますが、より実務に近いデータを取り扱うことで、その意識も高まったのではないでしょうか」とねぎらった。
 

報告会を終えた後、改めて押尾くんに感想を聞くと、「3日連続寝ずに課題に取り組んだチームもあったようです。終わった後の懇親会で、みんなで振り返って話をしたのですが、大変だったけれど、今思い返すと泣けてくると言っていました。僕もですが、とにかくこれで活動が終わりかと思うと、寂しかったですね」と他大学の仲間との絆が深まったことを明かした。

 

(*)
調査期間/2017年7月10日~31日

調査対象大学/千葉商科大学、青山学院大学、駒澤大学、上智大学、専修大学、日本大学
 
 
※関連記事
FUTUREは最高に『コスパが良い』/大学生意識調査プロジェクト FUTURE2016

他大学との交流で、己を知る/大学生意識調査プロジェクト FUTURE2015