大学生意識調査プロジェクト FUTURE2016

いまどきの大学生はどんなことを考えているのか――。
2016年12月、公益社団法人東京広告協会が主催する「大学生意識調査プロジェクト FUTURE2016」の結果報告会が行われた。FUTUREとは、千葉商科大学をはじめ、青山学院大学、駒澤大学、上智大学、専修大学、日本大学のマーケティングを専攻する6大学・30人の大学生たちが、東京広告協会指導の下、企画・実施・分析などを行うもの。今回のテーマは「『大学生と消費』に関する意識調査」となった。今回で22回目を数える同プロジェクトに、千葉商科大学サービス創造学部の松本大吾ゼミナールの学生2人が参加。彼らがこの企画を通して得た学びとは。

 


他大学との交流で、視野を広げる

昨年から松本ゼミでは、このプロジェクトをゼミ活動の内容に取り入れている。松本大吾准教授は、「私自身も学生時代にこのプロジェクトに参加し、自分の好きなこと、嫌いなこと、向き不向きを改めて知ることができました。広告が好きで広告の研究室に入りましたが、実際に広告会社の現場と同じようなことを行い、業界の方のアドバイスを受けることで、自分は広告マンに向かないと感じました。このプロジェクトに参加することは本当に大変な面もありますが、学内の学びだけでは気づけない、自分には知らない世界があることを、社会に出る前に身をもって体験してほしいと思ったのです。」
 

松本大吾准教授は、「大企業の大会議室に行って力のなさを感じる、でもいいと思います。参加することで普段の生活が大きく変わると思いますね」とこの活動の狙いを語る。

 

実際、今回松本ゼミからに2人参加することで、他の学生に対しても大きな刺激があったようだ。「参加した学生たちの姿を見て、自分もやればよかったと思っている学生もいます。一歩踏み出す勇気が大事ですね」と松本准教授は他の学生たちにもエールを送る。
 
参加した松本ゼミの清水雄飛くんと前谷遥菜さん(ともにサービス創造学部3年)は、ともに学外の活動を行うのは初めてだった。「ゼミで鍛えられた論理的思考力と、入学当初から続けているオープンキャンパスの活動で培った課題解決力を一度に試せると思いました」(清水くん)、「松本先生や先輩に勧められたこと、また、他大学の学生と交流できるという理由で参加しました」(前谷さん)と、いう思いで2人は参加した。
 

清水雄飛くん(サービス創造学部3年)は、全大学から6人のみ選ばれるプレゼンターの大役も果たした。「同ゼミの前谷さんから、『みんなの8カ月を背負ってるんだから、寸暇を惜しんで練習しろ』と常にプレッシャーをかけられました。そのおかげで、本番ではミスなくプレゼンができました。」


結婚、恋愛、合コンはコスパが悪い

広告代理店のアドバイザーによる指導の下、8カ月という長い期間にわたって、他大学とともにPDCAを週単位で行ってきたという本プロジェクト。週1回のアドバイザーとの定例会議の前日は、メンバーとともに寝る間を惜しんで追い込みをかけた。
「先の見えない議論ほど楽しいものはないと感じました。メンバーとともに脳に汗をかきながら繰り広げられる決して妥協しない議論は、単に『最適解を導くための議論』ではなく、メンバーとの『絆を強固にするための議論』であったとも思います」と清水くんは笑顔で振り返る。
そして今年のメンバーたちは、大学生たちの間でもコスパが良いと言われる商品の人気が高いことに着目し、首都圏の大学生816人を対象に、大学生の消費に関するアンケート調査を実施することに決めた(*)。調査結果は、「コスパにウルサイ方だ」と思う学生が70%近くに上り、中でもコスパの良いものとして 「中古品(78.3%)」「資格の勉強(75.2%)」「アルバイト(69.9%)」がベスト3に挙がった。金銭的にも時間的にも余裕のない大学生たちは、効率化と節約することで金と時間を生み出し、手元に残った金の多くは、仲間との絆づくりのための“オツキアイ消費”や“サプライズ消費”をしていることが分かったという。つまり、大学生たちの多くは、単にコストだけを追い求めるのではなく、自分に対するリターンとしてのパフォーマンスを重視しているというのだ。この意識こそが大学生ならではの新しいコスパであると同時に真のコスパであるとして、今年ヒットした映画“シン・ゴジラ”になぞらえ、“シン・コスパ”と結論づけた。
 
こうした分析結果を受けて、「結婚、恋愛、合コンなど、学生にとっても身近であるものをコスパが悪いととらえているのが面白いと感じました。結婚に至っては、将来をイメージして高いパフォーマンスを期待する、夢見る大学生像が浮かび上がりました」(清水くん)、「『あなたはケチだと思いますか』という質問があったのですが、自分自身ケチなのでほとんどが同じ意見と思っていましたが、半分程度という結果に驚きました」(前谷さん)と、同じ大学生でも思考や価値観が異なる部分に発見があったという。
 

清水くんは他の記者からの質問にも積極的に回答。「プロジェクト終了後、博報堂のアドバイザーから『今後はコスパが悪いことにもトライして欲しい』というアドバイスを受けました。それはコスパが良い方法を選ぶことはつまり楽をすることなのであり、血をにじむような努力もしてほしいという意味が込められていたと思います。自分自身、コスパが悪いことにも挑戦できる人間になりたい」と語った。


FUTUREを通して得られたこと

他大学との交流で何か発見があったのだろうか。学生二人とも口をそろえてPCを扱う点においては、千葉商科大学が頭ひとつ秀でていたと自負する。清水くんは、「ゼミをはじめ座学で学んだアカデミックな視点と、オープンキャンパスの学生活動で培ったマネジメントの経験がいかせたと感じました。他大学の中には、研究・リサーチといったものや、プロジェクトの参加経験がない人が多く、その点に関しては率先してミーティングを進めることができました。偏差値では測れないものを、千葉商科大学では学べると実感できた」と語る。一方、前谷さんは、「他大学の学生は情報処理能力が高く、ボキャブラリーも多いと感じました」と現状の課題も実感できたようだ。
 
この経験を通して学んだこととは。
「物事を多角的に見る力がついたと感じます。目の前にある就職活動、その先の社会でこの力をいかし、建設的な意見を言えるような人になりたい」(清水くん)、「『おざなりにしないこと』。全ての過程において中途半端は許されないので、何事も全力で行いました。今後、社会に出ても当たり前のことですが、この活動を忘れずいかしたい」(前谷さん)と、それぞれ大きな財産を得たようだった。
 
2人は後輩たちにも「積極的に参加してほしい」とメッセージを送る。「学外に出ると、自分の考えや価値観が一気に広がり、自分自身の成長につながると感じました」と前谷さん。一方、清水くんは「学内でやり切った人、不完全燃焼で終わってしまった人、どんな人でもFUTUREに参加すると必ず何かを持ち帰ることができると思います。最初の一歩を踏み出すことは抵抗がありますが、『先を見越した価値』がこの活動には沢山あると伝えたい。FUTUREは最高に『コスパが良い』ものであると断言します!」とこの調査結果になぞらえて後輩たちにエールを送った。
 
他大学との交流や第一線で活躍するビジネスマンからの学びにとどまらず、自分自身を見直す機会にもなったFUTURE。活動を終えた2人の言葉のひとつひとつから、充実と自信が満ち溢れている様子がうかがえた。
 

前谷遥菜さん(サービス創造学部3年/左)は、「質問を考えていた際、『調査票とは質問の順番や形式によって出てくる結果が変わる』と言われました。普段アンケートに答える機会がありますが、深く考えることがなかったので、些細なことですが、こうしたことも非常に勉強になりました」と学びがあったと話す。

 

本プロジェクトにかかわったメンバーとともに記念の一枚。