「世界一の朝食」として知られるカフェレストラン「bills」をはじめ、日本初上陸の台湾発・新食感かき氷「ICE MONSTER」やオーストラリア発・メキシカンダイナー「GYG(グズマン・イー・ゴメズ)」など、青山・原宿を中心に行列のできる店を次々と世の中に送り出すトランジットジェネラルオフィスが、学食を初プロデュース。それが、千葉商科大学の「The University DINING」だ。トランジットジェネラルオフィスの中村貞裕社長と、ダイニングづくりに関わってきた同大学の学生チーム「Student Club」が語る“新しい学食”に迫る。

 


学生たちから見た新しい学食

千葉県市川市の新名所ともなりそうな、千葉商科大学の新食堂「The University DINING」。このダイニング建設やコンセプトづくりにあたり、同大学の学生チーム「Student Club」がかかわった。「Student Club」とは、大学キャンパス整備検討委員会「HUB&DINING Bureau」がリアルビジネスラーニングさせるという目的のもと、DININGを企画したい学生たちに召集をかけて、全学部から募集・選抜して集められた学生チームのこと。現在、40人のチームだが、改めて学生を追加募集し、今後、「The University DINING」の隣に建つ瑞穂会館をリノベーションして今秋開館予定の「The University HUB」も、運営する企業各社と連携してリアルビジネスラーニングで企画・運営を行っていく予定だ。
「Student Club」の深沢昇大くん(サービス創造学部2年)は、「今回、ダイニングが完成するまでに、学生なりの意見や提案事項のリサーチ、報告会などを行ってきました。意見が通ることもありましたし、さまざまな視点からご指摘いただくなど、ビジネスのリアルなやりとりを直に体験することができました。今後、Student Clubとしては、ダイニングを中心に、さまざまな活動のプラットフォームとして活用したいと思っています。また、数々の企業とのリアルビジネスラーニングを全学年共通で実現できる環境づくりや、積極的な情報発信を行いたい」と意気込んだ。
 

記者発表会でスピーチした「Student Club」の面々。左から、坂口陽史くん(サービス創造学部2年)、深沢昇大くん(サービス創造学部2年)、井上恭兵くん(サービス創造学部3年)。


コミュニティが生まれる場所を目指して

トランジットジェネラルオフィスの中村貞裕社長は、Student Clubの学生たちについて「今は発言するというよりも、見て、学んでいる最中」とした上で、「できるだけいいビジネスモデル、いい映画、いいインテリアなど、とにかく“いいもの”を見たり触れたりすることが大事。従来からあるような学食で毎日ご飯を食べるのと、今回のようなダイニングのような空間に身をおいて食事をするのでは、人間性が変わってくると思います。何事も積み重ね。いきなりは変わらないので、4年間かけて成長していってほしい」と学生たちにエールを送った。
 
さらに、なぜ学食づくりに乗り出したのかについて尋ねると、「まず、教育の場にかかわるのは楽しそうだと思った、そして、僕らが手をつけていない分野だったから」と答える中村社長。その上で、「世界を見ればいい学食はたくさんありますが、僕らが手がけることで新しくて影響力のあるものが出来上がる可能性があると思いました。たとえば、海外の大学では、その大学があることによって町が形成されている。町のブランディングもできていて、その中心に学校があり、学食がある。そこでコミュニティが生まれる。僕らもはじめのコンセプトは、千葉商科大学の学食というよりも、“市川市の食堂をつくろう”という発想で、いろいろなコミュニティが生まれる場所になったらいいのではないかと考えました。日本にないカルチャー、文化、ライフスタイルが浸透させたいという想いで、カッコいい学食とか、ワクワクする学食をここから発信して、全国の大学に浸透すればいいなと思っています」と話す。
 

「4年間かけて、学生たちに成長してほしい」と、トランジットジェネラルオフィスの中村貞裕社長は語る。


ダイニングを通してリアルビジネスラーニングの強化

千葉商科大学のサービス創造学部は、経済産業省が指名するモデル学部でもある。この分野のリーディング学部として、サービス創造のための「リアルビジネスラーニング」を強化していくと、吉田優治学部長は語る。「ダイニングを通し、トランジットジェネラルオフィスと一緒にフードビジネスを学び、ALSOKと一緒に、清掃マネジメントビジネスを学ぶ。ファーマーズマーケットをやったり、ここでウィークエンドジャズをしたり、皆さんと一緒に企画をして学んでいく。ダイニングに多くの人々が集まってくる様子を学生たちに見せたいと思います。学生たちを巻き込み、教育をしながら、学生と一緒に新しい価値をつくっていければ」と、抱負を述べた。
 
今秋には新学食の隣に建つ瑞穂会館がリニューアルされ、リアルビジネスラーニングの拠点となる「The University HUB」が完成する。そこには、ライブハウスや、ホテル、SOHO、ダンススタジオ、コンビニ、カフェといったさまざまな施設が入る予定だ。
まずは、ダイニングを舞台に、「おいしい学食」「心地よい空間」そして「リアルビジネスラーニングできる場づくり」とさまざまなプラットフォームづくりを目指して、挑戦は始まったばかりのようだ。
 

「伝統的な講義形式を超えた、リアルビジネスラーニングを推進していきたい」とサービス創造学部の吉田優治学部長は熱弁をふるった。


学生記者も記者会見に参加

4月24日(金)に行われたオープニング記者会見には、サービス創造学部の学部メディアプロジェクトの学生記者2人が初めて記者として挑んだ。この春入学したばかり、18歳の平井滋己くん(サービス創造学部1年)は「今までは客という立場でモノを見てきましたが、クリエイターの方々の話を伺い、モノゴトを生み出す背景や意図が垣間見られてよかったです。将来は、広報や企画といった仕事をしたいと考えているので大変参考になった」と、初めての記者会見に興奮気味に語った。また、もう一人の記者、脇保雄飛くん(政策情報学部4年)は、社会人として学生生活を送る38歳。「今日のために2人で5~6時間かけて打ち合わせをして質問を練ってきました。なかなか思い通りに発言はできませんでしたが、大学の学食を越えた仕組みに大変驚きました。あと半年で僕は卒業しますが、なんらかの形で大学とかかわっていきたい。今後リアルビジネスラーニングが主流になってくると思いますが、各大学が競争の中で、新しい価値観を生み出されていくのはいいこと。今日得たことは僕の中では目からうろこが落ちる体験でした」と今後の展開に期待を寄せた。
 

左からサービス創造学部、学部メディアプロジェクトの山内真太郎特命講師と、平井滋己くん(サービス創造学部1年)、脇保雄飛くん(政策情報学部4年)。学生記者の2人は、口をそろえて「初めての経験に緊張した」と語った。
中村社長(左)に積極的に質問をする平井くん(右)。試食後、「学生の健康が考えられているメニューだと感じた」と感想を語った。
建築を手がけたシーラカンスK&Hの工藤和美代表取締役(左)に取材する脇保くん(右)。「機会を最大限に生かして、卒業までいろいろ学んでいきたい」と意気込む。
学生たちもおいしい食事に舌鼓。坂口くん(左から2人目)は「ダイニングは、木漏れ日が入り、居心地のよい空間。コンビニなどで食べるよりも、ここでいい音楽を聴きながらバランスのよい食事がとれることが嬉しい」と語った。
ソファーやテーブル席など、用途によって使い分けられるのも嬉しい点。学生たちも満面の笑み。
DININGの中には、イラストレーター・SHOGO SEKINE氏による印象的な壁画も。
学生たちも、新学食に心躍らせている様子。いよいよ5月11日にグランドオープンを迎える。