2015年2月6日(金)、一般社団法人日本新聞協会は「イマドキの大学生×新聞~大学生が新聞・新聞広告を考える~」と題したプレゼンテーション大会を開催した。参加したのは千葉商科大学をはじめ、青山学院大学、駒澤大学、専修大学、東海大学の5大学で広告やマーケティングを専攻する60人の学生たちだ。新聞協会広告委員会が実施した「2013年全国メディア接触・評価調査」の統計データを学生たちに提供、その分析結果をもとに、新聞業界が抱える課題を抽出するとともにそれらを解決するアイデアを練り、新聞社や広告主、広告会社など、約250人の関係者たちを前に発表した。


「価格が高い」イメージを払拭して新聞を身近に

大学生とともに新聞の未来を探るというプレゼンテーション大会は今回が初開催。5大学、計8チームが「新聞を学生に読んでもらうための提案」および「新聞広告の活性化策」を学生ならではの視点で分析し、発表した。
 
学生が新聞を読まない理由について、学生にとって大きな出費であるというデータに注目した大学が多かった。
千葉商科大学(サービス創造学部・松本大吾専任講師)チームは、ネタからニュースを検索できる無料の新聞検索システムを提案。社会人がニュースから情報を得るのに対して、現在の大学生はツイッターやまとめサイトから情報を収集することが多いことに着目し、ネタからニュースに無料でアクセスできるルートを作るべきだと説いた。荻久保翼くん(サービス創造学部2年)は、「新聞を読んだ方がいいとは感じているものの、今はインターネットに依存してしまっています。学生と一般人との新聞に対する視点の違いに注目していただきながら新聞づくりを行ってもらえると、学生たちにも興味を示してもらえるのではないか」とまとめた。
 

「大勢の前での発表は初めてで緊張しました」と振り返る加藤春香さん(千葉商科大学サービス創造学部2年)。


「堅苦しさ」を打破する、コーヒーハウスや新聞アイドル

東海大学(文学部広報メディア学科・小泉眞人教授)Aチームは、学生を対象に独自の調査を実施。学生たちが新聞を必要とする時期は就職活動前という点に注目し、「現代版コーヒーハウス」の設置を掲げた。「CAFE DE NEWS」と題したこの学生版コーヒーハウスでは、無料で新聞閲覧ができるほか、解説員としてチューターを配置し時事問題対策や学生同士の情報交換が行える場とする。「新聞社が中心となって、大学生の就職活動を支援することで、多くの学生たちに新聞の必要性を訴えることができるのではないか」と説明した。
また、同大学Bチームは、新聞が持つ「堅苦しい」「難しい」というイメージを払拭するためのアイデアとして、中高生をターゲットにした「新聞アイドル」誕生を提案。読者の投票により選出し、新聞を通して応援する新たな形のアイドルで、アイドルをきっかけに新聞に触れる機会を創出し、新聞への親しみを持たせるという。
さらに、専修大学(経営学部・石崎徹教授)Bチームは、新聞の閲読を必修科目にする案を提言。学生割引も設定し、読む機会を半ば強制的に与えることで、新聞に触れる機会を増やしていくという。学生時代に新聞閲覧を定着させることで、新聞を起点にした情報探索ができるようになるとともに、マスメディアを読み解いていくためのメディアリテラシーも身につくと話した。
 

学生たちが考える新聞像に、新聞社、広告主、広告会社など250人が注目した。


新聞広告の活性化策

もうひとつの課題である「新聞広告の活性化策」では、ツイッターをはじめ、ソーシャルメディアを利用する案が多く上がった。
駒澤大学(経営学部市場戦略学科・中野香織准教授)チームは、学生はテレビよりもツイッターで流行や情報を知ると分析。そこで、紙面とツイッターを連動したクイズを企画した。回答募集期間を当日に限り、結果を翌日に発表するというスピーディなクイズ企画によって、盛り上がりをさめにくくするというのが狙いだ。また新聞は一般的に1カ月近く保存しているということに注目し、カードゲームにちなんだ「エグゾディア広告」を提言。毎日分割で広告を掲載し、それらを集めることで特大ポスターが完成するという仕組みだ。
 

金山達也広告委員長も「すぐにでも始められる」と注目した、駒澤大学「エグゾディア広告」の提案。

 
千葉商科大学チームは「テレビCMに比べると新聞広告は印象に残る広告や楽しさについて評価が低い」と分析し、「新聞広告×日めくりカレンダー」を提案した。これは、カレンダーの左半分に興味の沸くような面白い広告を掲載、右側の日付の下には、国で認定されている記念日や祝日などを入れるというもの。「今日は何の日と過去のニュース、この2つと広告とを連動させることで、新聞広告に関する視点の変化や新たな気づきを提供できると考えています」と企画意図を説明した。
 

日めくりカレンダー企画をプレゼンする千葉商科大学サービス創造学部のメンバー。


変革の時を迎える新聞メディア

学生たちの発表を振り返り、慶応義塾大学商学部の清水聰教授は、「新聞は認知媒体ではなく、情報収集媒体だという点は面白かった」と講評した。「なぜ学生が新聞を読むのかというと、就職活動に役に立つからというのが出発点になっています。新聞というものは、昔は認知媒体だったが、インターネットの広まりによって瞬時に情報が入ってくるので、認知媒体ではなくなってしまった。新聞は、探索とか裏を知るための媒体としての意味を考えていかなければならないのではないでしょうか。私が新聞社にやってもらいたいのは、スマートフォンのポータルサイト。インターネットにアクセスする際に、新聞社が玄関口となるウェブサイトにすることで、料金を安く抑えるとか、そういう方策も考えて欲しい」と締めくくった。
新聞について考え直し、大勢の前で自分たちのアイデアをプレゼンテーションしたこの大会、学生たちにとっても貴重な機会となったようだ。
 

総括として全体について講評する慶応義塾大学商学部・清水聰教授。

 
 
【参加大学】
 
・青山学院大学経営学部マーケティング学科(久保田進彦教授)
・駒澤大学経営学部市場戦略学科(中野香織准教授、2チーム)
・専修大学経営学部(石崎徹教授、2チーム)
・千葉商科大学サービス創造学部(松本大吾専任講師)
・東海大学文学部広報メディア学科(小泉眞人教授、2チーム)
 

千葉商科大学サービス創造学部の松本大吾専任講師は「各大学、情報のとらえ方が違ったのが面白かった」と振り返った。ゼミメンバーも、発表を終えてほっとした表情だ。

 
千葉商科大学サービス創造学部 松本大吾ゼミナール発表メンバー:
下野栄裕、伊藤洋輔、兼平和也(サービス創造学部4年)
加藤春香、川村汐美、荻久保翼、土屋雄平(同2年)