スケジュールが不規則なハードワーク

ようやくの思いで就いた仕事だったが、「想像以上に大変でした」と言う。
朝が早い日もあれば、午後からの出勤で14時にから業務開始ということもある。朝が早い日は、ブリーフィングと呼ばれるフライトのためのミーティングが始まるのが5時だ。4時には自宅を出て羽田空港へと向かう。
「『3時に起きなくちゃ、寝坊してはいけない』と思うと不安でかえって眠れません。」と言う高橋さん。勤務を始めてもうすぐ丸2年を迎えるが「最近になってようやく慣れてきたところです」と笑う。
また冬になると、行き先やスケジュールの変更を余儀なくされることも多い。特に北へ向かうフライトの場合は、雪や凍結などの影響で離陸できなかったり、着陸できず引き返したりするケースもあり、帰宅するのが遅くなることもある。


体力勝負の仕事

通常は1日に2~4便のフライトをこなす。ある日のスケジュールはこのような感じだ。
羽田をたって女満別へ行き、羽田へ戻った後、高知へ飛んで1泊するという。翌日は、高知から羽田へ戻り、そこから宮崎へ飛んで1泊。次の日に、宮崎と羽田を1往復半してようやく羽田に戻る、といった具合だ。2泊3日の行程でようやく自宅に戻ることができる。
滞在先ではホテルの一人部屋に宿泊する。この仕事に就いて、自宅に帰らない日が多くなったが、その生活にもようやく慣れてきたところだ。
「幼い頃からずっと実家住まいなので、やはり初めは寂しかったです。あらためて家族のありがたさを感じています」
また、気圧変化が伴う乾燥した機内での業務ということもあり、体調管理には気を遣う。感染症の予防は常にチーム全体で注意している。
「一見キラキラと華やかに見える職業ですが、就業時間が不規則なことも含めて、体力勝負という面が大きいですね」
高橋さんは、高校時代にソフトテニスで全国大会に出場した経験を持つ。スポーツで鍛えた体力と精神力は、今の仕事にも役立っていると言う。
また、そんなハードな環境だからこそ同期入社の仲間の存在は大きい。時間を見つけて一緒に食事に行くことも多いと言う。
「同期でも年齢の幅はとても広いのですが、とても和気あいあいとした雰囲気です。厳しい試験や訓練を乗り越えた仲間ですし、帰着が一緒になったり、同じ便に乗ることになったりした時はすごくうれしくなります。彼女たちが仕事を頑張っている姿は、私にとっても大きな刺激になっています」


客室乗務員の魅力

日本全国さまざまな都市に行けるのは、この仕事の大きな魅力の一つだ。
「国内線が就航している都市へは、離島を除けば、ほとんど全部行ったと思います。
特に好きな都市は福岡。なんといってもゴハンがおいしいのが魅力ですよね。あと、札幌へのフライトもうれしいですね。」
その日の最終目的地に着いた後で、時間があれば観光に出かけることもある。食事や観光。ほんの少しではあるが旅気分を味わうのが、高橋さんにとってささやかな喜びである。
「富士山が今日はきれいに見えていますね」
窓の外を眺めている乗客に何気なくかけた一言に、「わぁ!きれいね!」と予想以上のリアクションが返ってきて驚かされたこともある。日常的にフライトしている高橋さんにとって、上空から見る富士山の姿はすっかり見慣れた光景だが、乗客にとっては非日常的なものである。
「特に富士山の存在は、皆さまにとっても特別なものだとあらためて感じます。そして感動してくださっている姿や喜んでくださる笑顔を見ると、私までうれしくなります」
乗客の笑顔が、高橋さんにとってなによりのご褒美だ。
2月には客室の責任者である先任客室乗務員となる。さらにステップアップできるように日々勉強だという。
「ママとなっても働いている先輩がいます。子育てしながらの仕事は『大変だ』とおっしゃいますが、私も将来あんな風になれたらいいなって思います」
そう言って細めた目の奥で、瞳がキラキラと輝いた。

4年間、千葉商科大学サービス創造学部でさまざまなサービス業の実態を体験し、体系的に学んだことは高橋さんの強みだろう。彼女の今後一層の活躍に期待しよう。

 
 

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<プロフィール>

高橋 海令(たかはし・みれい)

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2009年千葉県立若松高等学校卒業後、千葉商科大学サービス創造学部入学。大学時代は航空業界を目指しながら学業に励む。2012年株式会社JALエクスプレス入社。JALエクスプレスのスカイキャスト(客室乗務員)として日本全国を飛び回る。

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