千葉商科大学サービス創造学部
キャンパスマーケット・プロジェクト

若者たちはこの難題に、どのような解決策を提案するのか――。
2015年6月、千葉商科大学サービス創造学部の推し進める事業が、経済産業省の平成27年度「産学連携サービス経営人材育成事業」に採択された。これは、サービス産業の活性化に向け、次代の経営人材・マネジメント人材を育成する専門的・実践的な教育プログラムを産業界と連携して開発する大学に対し、経済産業省が3年間にわたって助成を行うというもの。同学部の公式サポーター企業である「資生堂ジャパン株式会社」と「ぴあ株式会社」の2社の協力のもと、企業と学生が大学キャンパスをマーケットとして新たなサービス創造に挑む「キャンパスマーケット・プロジェクト」もそのひとつである。

 


資生堂ジャパン株式会社「化粧のちから」とは

資生堂は、売上高7,777億円(2014年度実績)、国内シェアNo.1の座に君臨し続ける化粧品メーカーだ。2020年までにはその額を1兆円とすることを目標に掲げ、日々新たなサービスに取り組んでいる。資生堂が目指すべき姿は、「美しさを通じて人々を幸せにする」。生活に密着した事業を展開しているなかで、力を入れているのが「資生堂ライフクオリティー事業(SLQ)」だ。さまざまな対象者や目的に応じて、化粧を通してQOL(クオリティー・オブ・ライフ=生活の質)の維持・向上をサポートすることを目指す。
そもそも、化粧をすることには、どのような「価値」があるのか。「美しくなりたい」「自信をつけたい」などの外面的・内面的な理由のほかにも、健康でいるための根本的な要素が「化粧」にはあるという。
「身体機能や脳機能などが上がったり、生活動作の自立度が高まったり、リラックスにより味覚にも関わる唾液の分泌を促したり
する効果が期待できる」と話すのは、同社の医学博士・池山和幸氏だ。とくに高齢者は、化粧動作によって筋力を上げる効果も期待できるという。握力が強い人ほど死亡率が低く、さらに認知症や脳卒中のリスクが減るとの研究報告もあるのだ。
では、化粧の「価値」を10代、20代の若者はどのようにとらえているのだろう。「モテたい」「スイッチが入る」など、学生たちのインサイトを化粧の「価値」と結びつけ、資生堂のサービス創造につなげるのが、当プロジェクト「資生堂」班のゴールである。

 


「認知症の方は嗅覚が弱ってくるが、化粧品の香りを嗅ぐことで美味しさを感じる能力の維持が期待できる」と資生堂の池山和幸氏は語る。


資生堂の「化粧療法プログラム」を体験する学生たち。


ぴあ株式会社「感動のライフライン」とは

ぴあ株式会社の「チケットぴあ」サービスが始まったのは、1984年のこと。最初は新宿サブナードや、赤木屋など対面販売によるプレイガイド店舗で原券による販売を行っていたが、店舗によって売れ行きが異なるリスクの解消や、多くの店舗でチケットを販売できるようにするため、コンピューターオンラインチケット販売システムを日本で初めて構築した。
同社メディア・プロデュース事業局局長の森直樹氏は「現在のエンタテインメント市場を見ると、CDの売れ行きは思わしくないが、フェスの影響でライブエンタテインメント市場は大幅に伸びている」と語る。邦楽市場1000億強の規模に対し、ぴあ会員の購入金額は84億円。ここには、まだ伸びしろが期待できる。
さらに、チケットぴあWEBサイト利用率の男女別・年齢別構成比を注目して見ると、10代は他の年代の利用率に比べ10%ほど少ない。森氏はこの10%の差を埋めるべく新たなチケットぴあユーザーを獲得するための対策として、「若者が今何に興味を持っているのかを調査したうえで、チケット購入に効果的なアプローチ方法を考えてみたい」と学生たちに課題を与えた。
「エンタテインメントとは、感動のライフラインである」。これが、エンタテインメントにおける「ぴあ」による定義だが、若者たちはいかにエンタテインメントを定義するのか。学生ならではの視点で、どんなアイデアを生み出し、サービスを創造するかが、同プロジェクト「ぴあ」班に課せられる。

 


ぴあの森直樹氏は、学生たちに質問を投げかけながら、エンタテインメント市場の現状をわかりやすく説明。


サービス創造学部の吉田優治学部長(中央)からもぴあ社に向けて質問が飛ぶ。


資生堂班、ぴあ班に分かれて、学生たちがそれぞれの課題を検討していく。講義を担当する西根英一特命講師(右端)も熱血指導。


資生堂班は女性メンバーが、ぴあ班は主に男性中心のメンバーとなった。担当教員の滝澤淳浩准教授(右端)も学生たちの活発な意見交換に目を細める。