重松大輔
株式会社スペースマーケット
代表取締役社長

インターネットインフラの発達やスマホの普及などに伴い、企業や個人がファッション、住宅、車、移動ツールなどモノやサービスを貸し出すビジネス「シェアリングエコノミー」が注目されている。そんな中、球場、寺、映画館など空いているスペースを簡単にネットで貸し借りできる事業を展開する株式会社スペースマーケットもメディアの注目を集めている。なぜこの事業を始めたのか、今後の事業展開など、同社代表取締役社長の重松大輔氏が語った。


結婚式場からヒントを得て

「ビジネスの基本は最初に着手すること。そのためにはこれから流行りそうなサービスを使い倒し勉強しておくことが大事です。」
こう話すのは、2014年1月、日本初となる空きスペースをマッチングする会社、スペースマーケットを創業した重松氏だ。このようなビジネスを思いついたのは、大学卒業後、2社目に勤めたベンチャー企業「フォトクリエイト」勤務時代だという。同社では結婚披露宴の写真を販売するサービスを展開していたが、ある時、「平日の結婚式場は空いているスペースがあってもったいない。それなら空いている時間に誰かに場所を貸して利益をあげることができれば」と式場に提案。多くの賛同を得たことが、現在の事業につながったという。現在、取り扱っているスペースは約7500。古民家、寺、映画館、島、教会など、ジャンルは多岐にわたるが、単に変わった場所を貸し出すだけではない。とくに注力しているのは、イメージが異なるものの組み合わせだ。つまり、寺×コンサート、古民家×会社説明会、古民家×コスプレイヤーの撮影会、映画館×プレゼンテーション……。
「会議室で会議をやるのは当たり前です。ですから、場所とコンテンツの組み合わせによって全く新しい価値を生み出すことを重要視しているのです。」
 

「インターネット系のサービスをするなら、ハッカー、ハスラー、ヒップスターの3人が必要です。ハッカーはプログラミング、ハスラーはビジネスをつくる人、ヒップスターはデザイナー。就職活動する際にも、この3人がそろっている会社が優れている会社だと考えるといいでしょう」と学生たちに話す重松大輔氏。

 


海外で流行している新たなサービスの形

海外に目を向けると、シェアリングエコノミーは急激にシェアを伸ばしている。城、ヴィラ、自宅の部屋などが貸せる「Airbnb」では、現在約200万件が登録されており、ユーザーは累計6000万人。また、専用アプリを使いスマートフォンで予約・決済できるタクシーサービス「Uber」も成長著しい。事前にメールで目的地を指示できたり、事前に運賃の支払いもできたりするので、言葉が通じない海外などでも気軽に利用できる。さらにドライバーにとっても、タクシー免許を持っていなくとも、空き時間を使ってタUber運転手として働くことができる。「近い将来、自動運転の時代になる。そうすれば、ドライバーという職業がなくなるかもしれない。その時代の入口ともいえるサービスです。」
 
そのほか、家具を組み立てたり、食料品の買い出しを手伝ったりするなど家事代行サービス「task rabbit」や、個人所有の車の貸し借りができるプラットフォーム「get around」など、増えつつあるシェアリングエコノミーサービス。とくに日本のように、高齢化が進めば進むほど、“助け合い”が重要視されていくようになるとも重松氏は言う。
一方、こうしたサービスを逆手にとって悪事が横行するのではないかという不安もあるが、その点については、「経歴詐称などもニュースになっていますが、スマホが普及し、評価が可視化され、裏どりがしやすい時代になりました。だからこそ、こうしたサービスが成長していくようになるのです」と笑う。
 

「廃校となった学校をはじめ、空き家の活用が日本中で言われている。その問題を解決しようとこの会社をつくりました」と会社設立の目的を語る。

 


起業には、理解あるパートナーを見つけること

重松氏が起業したのは37歳の時と年齢的にはそう早くはないが、これにはベンチャー投資家である夫人の強い後押しがあったからと語る。「嫁ブロックという言葉がありますが、家族が大体チャレンジを止めます。新しいことを始めることはリスクしかありません。私にも子どもがいましたが、妻が絶対にチャレンジしなさい、その代わり私が稼ぐからと言ってくれた。もし皆さんが経営者になるなら、理解のあるパートナーを見つけることが大事です。」
最後に、「自分の空いている時間でほかの仕事を手伝う、空いている時間を貸し出す、自分のモノをネットで売ってみるでもいい。何か、自分の手でお金を稼いでみるとこれからの人生のヒントが見つかるのではないかと思います」と学生たちへメッセージを送った。
 
スペースの貸し出しだけでなく、イベントのオーガナイズにも積極的に力を入れていきたいと今後の展開を明かした重松氏。既成概念にとらわれず、ニーズに応じて柔軟なサービスを提供し続けていく重松氏のビジネス展開は、これからも話題を集めそうだ。
 

担当教員の中村聡宏専任講師(右)は、「重松さんは、自由な発想力で時代に合わせて臨機応変に対応している。今がどのような時代で、さらに5年後、10年後どうなっているのか、それに対して社会は何を求めるようになっていくのか、そういう視点で考えることを忘れずに人生を歩んでいってほしい」と学生たちに向けて話す。

 
 

<プロフィール>

重松大輔(しげまつ・だいすけ)

株式会社スペースマーケット 代表取締役社長
 
1976年千葉県生まれ。早稲田大学法学部卒業後、2000年NTT東日本入社。2006年に株式会社フォトクリエイトに参画。ウェディング事業を担当し、結婚披露宴の写真を販売するサービスを展開する。2013年7月東証マザーズ上場。2014年1月、全国の貸しスペースをマッチングする株式会社スペースマーケットを創業。