千葉商科大学サービス創造学部
就職率5年連続99%超の裏側【前編】

2017年6月7日発行の日経CAREER MAGAZINE『価値ある大学2018年版 就職力ランキング』(日経HR発行)にて、千葉商科大学サービス創造学部が商・経営系の第14位(*1)に入った。2009年に創設して以来、5年連続で就職率99%超を誇るサービス創造学部だが、なぜそこまで就職に強いのか――。Kicky!編集部ではその秘密を前編・後編にわたってお届けする。前編では、キーマンとなる庄司祐子就職担当顧問に話を聞いた。

 


専属の就職担当顧問=「就職の女神」

2009年に開設した千葉商科大学サービス創造学部は、2013年の1期生卒業時以来、つねに高い就職率を誇ってきた。昨今、大学生の就職は売り手市場・短期決戦となっているが、2016年度の同学部も、就職希望者171人中、170人が内定。就職率は99.4%となった(*1)。この高い就職率の要因のひとつが“就職の女神”とも呼ばれ、同学部の専属の就職担当である庄司祐子就職顧問の存在である。
庄司就職顧問はそもそも外資系の企業に勤めながら、立教大学の社会人大学院に進学。その後、若者の人材育成・キャリアコンサルティング事業を手掛ける会社を起業した。そんな時、現在、同学部の学部長であり、立教大学大学院時代にともに学んでいた今井重男教授からの声掛けにより、大きな転機を迎えることになった。
「2009年にサービス創造学部を立ち上げる際に、吉田優治元学部長や今井学部長など先生の間で、学生の就職の出口問題を解決するために、専属の就職担当をつけたらどうかという話が持ち上がったそうです。そこで、人材カウンセリングの仕事をしていたこともあって、私に声がかかりました。最初は不安な面もあったのですが、実際に学生たちと話してみるとみんな元気で素直で本当に可愛いので、親のような気持ちになって“絶対に就職させたい!”と強く思うようになりました。私の力だけということではなく、教職員も含めて一丸となって就職活動をサポートしています」と庄司就職顧問は振り返る。
 

就職ガイダンスで学生たちに説明をする庄司祐子就職担当顧問。学部設立当初は就職難だったこともあり、かなり厳しい状況だったと語る。「どうにか学生に合った企業とマッチングさせたい、絶対に100%をめざすんだという強い気持ちを持って、自分のこれまでのネットワークを駆使した結果、3月ギリギリにはなってしまいましたが、初年度から99.3%までなんとかたどり着くことができました。以来、年を追うごとに、私自身もコツをつかんできました」と語る。

 


アライアンス企業は700社以上

同大学ではアライアンス企業(企業と大学が連携して社会に貢献できる人材を送り出すという趣旨に賛同する学生の採用や育成に積極的な企業)との連携も行っている。700社を超えるアライアンス企業は、大企業から中小企業まで、業種もさまざま。これらの企業に内定する割合が4割、残りは学部卒業生が活躍している企業や同大学出身者が代表を務める会社などに就職するケースが多いという。
「卒業生が活躍している会社だと、直接OB・OG訪問ができることもあり、学生たちにも安心感があるようですね。競争率が激しい大手企業をめざす学生ももちろん多いですが、中小企業の中でもっと自分に合った幸せな就職ができるところをめざそうと考える学生もいます。卒業生がより活躍できる企業の幅が、今後もっと増えていけばいいと思います。」
実際行っている指導について話を聞くと、「なるべく学生には優しく、一緒に頑張ろうといった気持ちをもてるように指導を心掛けています。また、約150人の学生全員を知るため、ゼミナール訪問をして学生の雰囲気を肌で感じるようにしています。その後、1人5分ずつの面談を進めていくのですが、なかにはゼミにも参加していない学生もいるので、そういう学生には直接電話をかけたり、先生にも協力をいただいたりしながら、指導を行っています」と笑顔で話す。
 
さらに、3年生の春学期からは講義も行う。「ディスカッション実践」という講義では、コミュニケーション能力やリーダーシップ、チームワークを身に着けるためのグループディスカッションを、「マナー面接実践」では、ビジネスマナーを学んだり、自己分析や業界・企業研究、履歴書の作成をしたり、集団面接や個人面接のロールプレイングをしたりするという。
「今年の就職活動は、昨年に比べて早まっています。企業が促進しているのはインターンシップで、これを利用して就職が決まるという現状です。人気企業は抽選で参加できないということも多いのですが、とにかく企業、業種、職種を知ることが大事。広い視野でインターンシップ先を選んでほしいと思っています。元気で明るく素直で協調性がある人材を求める企業が多いですが、もちろん全員がそうだとは限りません。たとえば、プロジェクト活動(*2)を行っていたり、オープンキャンパスの手伝いをしていたりする学生は前向きで一歩踏み出す力がありますが、アルバイトも含めて活動を一切行っていないという学生は、いざ企業の方と面接をする段になると緊張してしまって熱意を伝えることが難しいこともあります。ですから、こうした講義やインターンシップに積極的に参加することが重要だと伝えています。」
 

就職ガイダンスに参加し、庄司就職顧問の話に熱心に耳を傾ける学生たち。

 


人はなぜ就職するのか

一般的に大学を卒業したら当たり前のように就職活動をして社会人となるが、なぜ就職しなければならないのだろうか。そして絶対に就職しなければならないのか。そんな素朴な疑問を庄司就職顧問に投げかけると、「なかなか難しい質問ですね」と前置きした上で、「4年間という限られた時間の中で、その答えを見つけ出すのは容易なことではありません。“何のために、誰のために働くのか”を真剣に考えた時、生活のため、世の中のため、遊ぶためなど、さまざまな答えが出てくるかもしれません。この答えに正解はないかもしれませんが、人生において主体性を持って働くことが大切です。マズローの欲求五段階説の中の自己実現欲求である、一人ひとりの自己実現を達成するために働くこと、が各自の答えを解く鍵となるかもしれません。自己実現欲求はいわゆる仕事の面白さ、といえます。企業の新卒者採用は、未だ社会経験のない現役大学生を対象としています。大学を卒業した後の就職活動となると、学生時代の就職活動と比較して難しいものになるかもしれません。日本では、新卒者で就職すること自体が、ひとつのブランドと見られているのが現実だからです。大学卒業時に就職するのは、人生の節目のひとつでもあり、自分が将来に向けて成長・飛躍する大きなチャンスともいえます。多くの企業は新入社員を一人前にするために、多額の投資をして丁寧に教育・指導していきます。新人研修もそのひとつですが、こうした研修を受けることができ、社会人として身につけなければならないことや必要とされる知識・スキルなども学べるのも、新卒者であればこそ。中途採用ではなかなかこのような機会はおそらく与えられないでしょうから、皆さんに新卒で就職してほしいと願っているのです。新卒というタイミングを逸することなく、人生最初のキャリアを大事に、主体性をもって果敢に挑戦してもらいたいと思います」と述べる。
 

「サービス創造学部なので、サービス業に就職する学生が多いです。しかし、最近の学生の傾向として、福利厚生や年間休日などを気にする学生が多く、かなり保守的と感じています。また、マーケティングをやりたいという学生も多いのですが、会社の根幹を担う人材になって初めて部署に配属されるケースが多いので、会社の仕組みや職種を理解できていない学生が多いのも事実ですね」と庄司就職顧問。

 


就職率の先に

今後はどのような展開をしていく予定なのだろうか。
「いわゆるキャリア教育の必要性を感じています。今は、3年生から就職ガイダンスが行われていますが、できれば、1年生の時から学生と接触できる機会があったらいいと思っています。職業観、なぜ人は働くのかといったことを浸透させていくと、就職がスムーズにできるのかなと思っています。」
最後に学生たちにメッセージをもらった。「企業から“学生時代、一番頑張ったことは何ですか”という質問は必ず聞かれます。学生の時しか経験できないことだったり、何か壁にぶつかって乗り越えた経験だったり、企業はそこを重視しています。それはなぜかというと、社会に出るともっと大変な壁にぶつかることがあるので、乗り越えた経験のある胆力がある学生をほしいからです。あとは、英語や簿記といった就職につながる資格などの勉強もしつつ、なるべく早い段階で働くとはどういうことか、漠然とでもいいから自分が働きたいと思える業界を絞り込んで研究していってほしい。そして、自分の強みを見つけてほしいと思います。就職意欲が高い学部ですから今後の学生にも期待しています」とエールを送った。
 

「自分にとって大事なミッションであり、やりがいのある仕事として、ありがたく思っております。最近、ミスマッチで簡単に辞めていってしまう卒業生を見ると、長期インターンシップの重要性を感じますね」と語る。

 
 
*1就職率の算出方法
・『価値ある大学2018年版 就職力ランキング』では、2015年4月~2016年3月(2015年9月卒業を含む)卒業生を対象とし、就職者数÷卒業生-大学院進学者数×100で算出。94.8%の就職率と記載している。
・千葉商科大学では、2017年3月時点の卒業生を対象とし、就職内定者÷就職希望者×100で算出。
 
*2プロジェクト実践と名付けられたカリキュラムの中で、同学部の公式サポーター企業の協力のもと、学生たち自らが企画・実践してさまざまな学びを得ている。
 
 
【後編】 今井重男学部長が考える「就職率の先」。内定を得た学生たちの手応えとは。

<プロフィール>

庄司祐子(しょうじ・ゆうこ)

千葉商科大学サービス創造学部就職担当顧問兼非常勤講師
公益財団法人日本生産性本部認定キャリア・コンサルタント
 
青山学院大学文学部卒業後、日商岩井、International Paper Company Japan Limited他3社の外資系企業等に勤務後、独立。2005年2月に国内MBAの価値向上をめざし、MBAホルダーのキャリア支援をする「NPO法人MBAキャリアデザイン研究所」を設立・主宰。2006年5月に若者の人材育成・キャリアコンサルティング事業を行うセドナ株式会社を設立・代表を務める。立教大学大学院ビジネスデザイン専攻修士課程(MBA)修了。2012年1月より千葉商科大学サービス創造学部就職担当顧問を兼任し、2016年4月からは、千葉商科大学サービス創造学部非常勤講師を兼任。