ジャズピアニスト 嶋津健一氏
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DJ兼プロデューサー KAZUMA TAKAHASHI氏

芸術の秋――。千葉商科大学の講義「ユニバーシティー・アワー」では、この季節にふさわしい音楽を楽しむ講座が開催された。ジャズピアニストの嶋津健一氏と、DJ兼プロデューサーのKAZUMA TAKAHASHI氏が登壇。「音楽サービスを届ける」をテーマに、異なるジャンルの二人が実演しながら、学生たちに刺激を与える内容となった。

 

嶋津健一氏(右から2人目)、KAZUMA TAKAHASHI氏(左から2人目)が、同大学サービス創造学部吉田優治学部長(右端)、同商経学部の太田三郎学部長(左端)とともに。

 


原子力研究からジャズピアノへ

7月に同大学の学食「The University DINING」で開催された第1回、音楽イベント「THE UNIVERSITY JAZZ LIVE」でもジャズを披露した嶋津氏は、東京大学工学部原子力工学科を卒業後、ジャズピアニストになったという異色の経歴。「子供のころからピアノを習っていて、大学時代にジャズ研究会に入ったことがきっかけです。一度しかない人生、自分のやりたいことをと、親を説得してジャズの道を歩むことになりました。」
大学卒業後は、ジャズの本場ニューヨークで音楽を学ぶため、名門・マンハッタン音楽院に進む。「体系化された音楽を学び直したのはよい経験でした。さらに、本場のニューヨークのミュージシャンに交じって研鑽し、演奏を通して学んだことも大きかった。また一生の師匠となるミュージシャンに出会い、伝説的なシンガーのグループに入ることもできた。そこで学んだことは言葉では言えないくらい今の自分に大きな影響を与えている」と振り返る。
10年間、ニューヨークでジャズの演奏活動をしていたが、1995年に帰国。その理由は、日本人が世界で活動する意味を考え直したからだ。「日本人として海外で活動するうちに、日本人のアイデンティティを問い直される場面が増えてきました。永住権の取得が大変だったこともありますが、それよりも日本人としてどのような音楽をつくったらいいか、日本の伝統に再度触れてみたいと思ったのが大きな理由です。」現在は、日本の伝統芸能、能の大鼓の稽古も行っており、自身の音楽制作に大いに役立っているという。
 
 

ベースの加藤真一氏とともに、ジャズの演奏をした嶋津氏。

 


ジャズとは即興音楽

言葉としては馴染み深いジャズだが、改めてどのような音楽なのか。「一言で答えるのは難しいが、前提として即興演奏、アドリブであるということ。ほとんどのジャズは即興演奏が含まれます。黒人特有のブルースがジャズの根本に存在していることも確かです」と嶋津氏は説明する。こうした説明を踏まえたうえで、『枯れ葉』というタイトルの曲をもとに、即興音楽を実演。コード進行が決まっている曲に従って、オリジナルのアレンジを加えていくことで、即興演奏は成立する。「最初にテーマを引いたら、テーマに従ってアドリブ演奏をする、そして最後にテーマをひいて終わる。さらに、主に即興演奏では、演奏者が順番にアドリブのソロを回します。アドリブで腕比べをするようなこともあります」とジャズの楽しみ方を教えてくれた。
 

「普段はクラシックを聴いている」と語る学生は、ジャズの魅力に引き込まれた様子。

 


DJは、自信をもって演奏することが大事

続いて、DJの世界大会で日本人初となる最終選考6人に選出されたKAZUMA氏が登場。現在、同大学では「HUB&DINING 公認DJ育成プログラム」が始動しており、KAZUMA氏はその講師も務めている。DJとはそもそも、ディスコやクラブなどで、ダンスミュージックを選曲してかけたり、音を止めずに複数の音楽をつなぎ、ひとつの曲としてつくりあげたりしていく人のことだが、彼がDJに魅了されたのは大学生の時だという。「クラブに遊びに行ったのがきっかけ。DJが見ている景色を自分も見てみたいと思ったんです。」
曲のセレクトをはじめとする、センスもカギとなりそうだが、「自分が自信をもって好きだと思える音楽を演奏することが大事。センスも人ぞれぞれですからね。ある曲が違う形で耳に入ることで、好きではないと思っていた曲を好きになってもらうきっかけがつくれたらいいのではないでしょうか」と、パフォーマンスのヒントを与えてくれた。
 

KAZUMA氏のDJプレイに学生たちも真剣な表情。KAZUMA氏のプレイを聴き、嶋津氏は「すごくクリエイティブで、素晴らしい音楽ですね」と称賛した。

 

嶋津氏のジャズ演奏、そしてKAZUMA氏のDJパフォーマンスを通し、「鳥肌が立つ素晴らしい演奏でゾクゾクしました」「すごくかっこよかった」「心臓がバクバクした」「すごいなと思って聴き入りました」と学生たちも興奮した様子。満足した彼らの表情から、音楽の持つチカラを改めて感じた瞬間となった。

 

同講義の冒頭、「K-1カレッジ2016 ~大学生日本一決定トーナメント~」決勝戦で、-55kg級で優勝した同大学サービス創造学部4年の桑田裕太くんが凱旋。「プロのキックボクサーになるためにこのベルトをとったので、今後はプロとして活動していきたい。皆さんも好きなことに熱中して学生生活を送ってもらいたいと思う」と後輩たちにエールを送った。
 

 

今年リノベーション予定の複合施設「The University HUB」の正面入り口近くのアートを手掛けるアーティスト、ミキタイプ氏。「嶋津さんのジャズとKAZUMA氏のミックスした演奏も聴いてみたい」とコメントした。

 
 

7月のジャズライブでファンになったという同大学商経学部1年の安藤めぐみさん。「ピアノを弾きますが、これまではクラシックでしたが、嶋津さんの音楽を聴いて最近ジャズの譜面も買いました。ゴージャスというものありますが、とにかくキレイな演奏が魅力です」と笑顔で語った。

 
 

DJ育成プログラムにも参加する門下生がKAZUMA氏とともに記念の一枚。

 

<プロフィール>

嶋津健一(しまづ・けんいち)

1960年神奈川県横浜市生まれ。6歳からピアノを始める。東京大学工学部原子力工学科卒業後、85年に渡米。ニューヨークのマンハッタン音楽院ジャズ科修士課程入学し、同時にニューヨーク郊外のクラブで演奏活動を開始。グロリア・リン(Vo)や、ジミー・スコット(Vo)のグループなどにレギュラーピアニスト、音楽監督として参加し、95年に帰国した。現在はトリオで、加藤真一(b)、岡田佳大(ds)らと活動中。
 
 

KAZUMA TAKAHASHI(たかはし・かずま)

福岡県生まれ。2008年、大学時代にDJとして活動を始める。14年、「burn WORLD DJ CONTEST 2014」の決勝で優勝を果たし、日本代表DJとして選出。スペインのDJの世界大会に出場し、日本人初となる最終選考6人に残る。翌年、国内最大級のフェスティバルelectrox2015に出演。現在は、DJ、プロデューサーを行うほか、ブランドのミュージックディレクションを担当するなど、国内外で活動している。
 
 
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