大沢伸一特命教授塾

「大沢伸一×大学生」――。
千葉商科大学サービス創造学部では2016年4月より1カ月に1回のペースで、同大学の丸の内サテライトキャンパスにおいて、同学部の特命教授である音楽家の大沢伸一氏による「大沢伸一特命教授塾」を開講している。同講義では、学生たちが大沢特命教授から与えられた課題に対してイベントを企画。講評を受けながら、最終的にイベントを実現しようというものだ。大沢特命教授と学生がつくり出す、既成概念を超えた新たなサービス創造のプロセスに迫る。

 

音楽家の大沢伸一特命教授。

 


アイデアは自分事としてとらえよ

講座開講時に、大沢特命教授から学生たちに与えられた課題は、大学の学食「The University DINING」とその隣に今年の秋にリノベーション完成予定の複合施設「The University HUB」を利用した「非常識なイベントを考える」というものだった。
学生たちは、毎月アイデアを持ち寄り、大沢特命教授の前でプレゼンをする。たとえば、プロアマ関係なく、互いがオリジナルな音楽を演奏する場を設けるというディスコや、毎週開催の教員と学生が交流を持てるパーティ、味覚・聴覚・視覚で楽しむパーティなど。しかし、大沢特命教授自身、さまざまなイベント企画を手掛けているだけに、「今日、発表されたことは、創造の枠を超えているものがひとつもなかった」と学生だからといって手加減はしない。「実現できるかどうかから考えるのではなく、遠いところから考えてみることも大事。何か物事を始めるときの最初の原動力は自分。今回皆さんを見ていると熱量が希薄な感じがした。本当に自分がやりたいことなのか、もっと自分事にして考えてほしい」と訴えた。
 

大沢伸一特命教授塾の門下生たち。

 

参加する学生たちそれぞれ、真剣な表情で大沢特命教授と対話する。

 


教員とかかわるきっかけづくりのイベント

プロの厳しい評価を受けた大沢塾の門下生たちは、さらに1カ月間、「日常的なことを考えたうえで、非日常とは何か」について掘り下げた。プレゼンの発表を行った井上恭兵くん(サービス創造学部4年)は「前回の最後に、学生と教職員がもっと深く接する機会を設けたい、仲を深めたいという話が出ましたが、本当にそうだろうかという部分から見直してみました」と話す。学生たちにアンケートを取り、学生と教員の関係性を示したマトリクスを作成。縦軸は「教員と気持ち的に仲良くなりたいまたは、仲良くしたくない」、横軸は「実際に教員と仲がいい人と、そうではない人」に分類して検証した結果、学生が教職員とかかわるきっかけづくりをするイベントを企画したいという結論に到達した。
 
出された主な案は以下の通り。
1.バルーンパーティ
DININGを風船でいっぱいにして楽しむ。参加者全員で風船を膨らまし、風船の量でギネス記録に挑戦、名実ともに「世界一の学食」の称号を得る。
 
2.サービス創造祭
学部のマスコットキャラクターである「サービス創造くん」という白い大きい象を、神輿代わりに教職員に担いでもらう。学生たちは象をめがけてカラーボールを投げて、色をつける。
 
3.ユニバーシティオーシャン
DININGを中心に、水合戦、ウォータースライダー、シャンパンファイト、夜はファイヤーダンスショーなど、学生・教職員関係なく、大学内で大いに騒ぐ。
 
4.公式デモ隊大会
学内で学生たちが大学に向かって行う。
 
5.大学教職員と学生の一対一デート
大学の先生と学生が強制的に一対一でご飯へ行く。
 
抱腹絶倒な内容のプレゼンを受け、大沢特命教授は、「みんなフラストレーションがたまっているのかな。前回と比較し、進化が見て取れた。公式デモ大会も面白い。これをもとにブラッシュアップしていってほしい」と笑いながらコメント。「大学生活にコミットしてないということは学生にとって面白くないことだと思いませんか。大人になると余計に学びたいことがたくさん出てくる。学問は、学ぶ・問うと書きますが、そう考えるとありとあらゆることが学問。こうしたきっかけを通じて、日本の大学を少しでも変えていくことにつながれば」と今後の大きな目標を語った。
 

発表後、達成感からか晴れやかな表情を見せた門下生たち。今後、実現するためにさらに内容を精査していく。果たしてここからどのような展開を見せ、 “非常識なイベント”が実現していくのか、楽しみになってきた。
 
 

‟非常識”なアイデアが出始め、大沢特命教授も納得の表情。プレゼンを聞きながら笑顔を見せた。

 

サービス創造学部4年の井上恭兵くんを中心にプレゼンが行われた。

 

「この講義に参加している学生たちがパイオニアになって、大学をよりよく変えてほしいと願っている」とサービス創造学部の吉田優治学部長は語る。

 

<プロフィール>

大沢 伸一(おおさわ・しんいち)

1967年滋賀県生まれ。93年のデビュー以来、MONDO GROSSO、ソロ活動を通じて、革新的な作品をリリースし続けている音楽家、DJ、プロデューサー、選曲家。クラブサイトiLOUDのDJ人気投票国内の部3年連続No.1(2009〜11年)に輝くなどDJとして活躍するかたわら、作曲家、プロデューサー、リミキサーとしても活躍。UA、Chara、bird、安室奈美恵、若旦那、AFTERSCHOOLなどのアーティストにそれぞれの新境地となるようなプロデュース楽曲を提供。また多数のCM音楽を手掛けるほか、代々木ヴィレッジのミュージックバーをプロデュースするなど音楽を主軸として多方面に活躍する。2015年9月には、同学部の特命教授に就任。
 

 
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