「大沢伸一特命教授塾」トライアル開講

2015年9月、千葉商科大学サービス創造学部の特命教授に就任した音楽家の大沢伸一氏。1993年に「MONDO GROSSO」としてデビューして以来、ミュージシャン、DJ、プロデューサーとして多方面に活躍している。16年4月より、同学部では大沢伸一特命教授による特別講座を開講予定だ。それに先駆け、大沢特命教授と音楽好きな同学部の学生たちによるトライアル講座が、同大学の丸の内サテライトキャンパスで開催され、それぞれが音楽に対する思いを語った。

 


学生たちが覚醒することを願って

4月に開講される「大沢伸一特命教授塾」では、大沢特命教授のこれまでの音楽活動を踏まえて、音楽業界の現状や可能性を伝えるとともに、学生たちと音楽における新たなサービスを創造していく予定だ。同学部の吉田優治学部長は「大沢先生は、これまで音楽を通じて多くの人たちに興奮をサービスとして提供してきました。この塾を通して、学生たちが刺激を受け、さらに覚醒してほしいと願っています」と狙いを語る。一方、大沢特命教授は、「僕は基本的に、大多数の反対にいる人間。でも、音楽をどうやって広めていくのか――たとえば、素晴らしい音楽だけれどマイノリティの人にしか支持されない楽曲があった時に、どのようなサポートができるか――に興味があって、このお誘いを受けました」と、講座を開講する理由を明かした。 
 

学生たちと教員、そして大沢伸一特命教授と、活発な意見交換が行われた。

 


音楽とは、「自分を表現するもの、代弁しているもの」

音楽業界は、この10年で大きく様変わりをした。CDが売れなくなり、その一方で、手軽にインターネットで手軽にダウンロードできるようになった。大沢氏は、「90年代後半は、日本における音楽シーンのひとつの黄金期でした。音楽的にも豊かで、新しい表現、深い表現をしようと思ったアーティストが報われて成功した時代でもあります。しかし時代を経て、音楽が素晴らしくても売れない状況がやってきました。CDを買ってくれる人たちだけを相手にした音楽にシフトしてしまい、最後は御用聞きになってしまったようにも感じます。今はすぐに音楽がダウンロードできる聴き放題の時代。音楽は芸術の一ジャンルととらえていますが、そういう音楽が聴き放題になってよいのかという疑問も感じています」と音楽業界に警鐘を鳴らした。
 
また、トライアルの中では、参加者それぞれが好きな音楽や音楽に対する思いを語った。大沢特命教授は「音楽の魅力とは、自分を表現するもの、代弁しているもの。誰もみな音楽の才能を持っているわけではない。あるとするなら、感受性だけです。僕が音楽をつくる原動力は好き嫌いなだけで、10代の頃に出会った映画や音楽、痩せ我慢をしてわざと難しい文学を読んだり、難しい映画を見たりしたことが今になって刺さっていて、それが僕の感受性につながっていると思います」と持論を展開した。
 

「最近はインターネットに1時間向き合って、知らない音楽を探しています。たった1週間、蓄積するだけで僕にとっての宝物になる。音楽に対してそういう地道な努力も行っています」と大沢伸一特命教授。

 


動機は純粋で不純な方がサービスにつながる。

最後に、学生たちに「大沢伸一特命教授塾」で何をしたいか問うと、「大沢先生に意見を言って、音楽をつくってもらう」「自分自身が見えていない学生が多いので、そこを大沢先生に引き出してもらいたい」「新しい音楽に出会う場を提供してほしい」などさまざまな意見が上がった。
それに対し、大沢特命教授は、「どうしたら女の子にモテるか、友達にかっこよく思われたいとか、何でもいいんです。逆に、動機は純粋で不純なほうがいい。経済的なことは考えずに、培養させたほうが大きなサービスになっていくと思う。たとえば、大学に6,000人の学生がいるなら、その中だけで流行っている音楽ができるとか。今後の方向性についてはまだまだ答えは出ませんが、最後に形になるようなことができればいいと思っています」と締めくくった。
 

音楽漬けの日々を送るサービス創造学部の吉田優治学部長は、「今は3000万曲聴き放題の中から自分で選べる状況になり、アーティスト自身も自らネットなどで発信できる時代になりました。今、音楽業界は大きな分岐点を迎えているんでしょうね」と語る。

 
 
参加した学生たちは、「自分の価値観だけで物事を考えている部分もあったので、参加してみて視野が狭いと実感した」(大巻遥加さん/サービス創造学部3年)、「音楽業界に従事したいと考えているので、初めてプロの音楽プロデューサーから話を聞けて、音楽業界の現状を知ることができたのは、すごくいい機会になりました」(島根大典くん/サービス創造学部3年)、「いろいろな方の考えが知れたと同時に、価値観が広がりました」(森祐太朗くん/サービス創造学部4年)、「何かを成し得た方とお話できる機会を得られて楽しかったです。一方で、自分の考えは子供っぽいなと思いましたし、知識不足を痛感しました。ただ、大人の方たちと会話すること自体、非常に勉強になりました」(一木昌也くん/サービス創造学部4年)と、プロの音楽家との意見交換の場は、大きな学びになったようだ。
 

EXILE三代目 J Soul Brothersが好きだという一木昌也くん(サービス創造学部4年)は、物怖じすることなく、音楽に求めることを語った。

 

参加者とともに、最後に記念撮影。

 

<プロフィール>

大沢 伸一(おおさわ・しんいち)

1967年滋賀県生まれ。93年のデビュー以来、MONDO GROSSO、ソロ活動を通じて、革新的な作品をリリースし続けている音楽家、DJ、プロデューサー、選曲家。クラブサイトiLOUDのDJ人気投票国内の部3年連続No.1(2009〜11年)に輝くなどDJとして活躍するかたわら、作曲家、プロデューサー、リミキサーとしても活躍。UA、Chara、bird、安室奈美恵、若旦那、AFTERSCHOOLなどのアーティストにそれぞれの新境地となるようなプロデュース楽曲を提供。また多数のCM音楽を手掛けるほか、代々木ヴィレッジのミュージックバーをプロデュースするなど音楽を主軸として多方面に活躍する。2015年9月には、同学部の特命教授に就任。
 

 
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