若者が考える化粧のサービス/「資生堂」編
千葉商科大学サービス創造学部 キャンパスマーケット・プロジェクト

千葉商科大学サービス創造学部では、秋学期より同学部の公式サポーター企業の「ぴあ株式会社」「資生堂ジャパン株式会社」の協力のもと、学生が新たなサービス創造に挑む「キャンパスマーケット・プロジェクト」というプロジェクト活動がスタートした(※1)。このプロジェクトは、同学部から「サービスビジネスの新しい手法、新しい用語をつくる!」をゴールに、大学キャンパスをマーケットとして調査・分析を行うもの。ぴあ社に対して行った発表(※2)に続き、今回、資生堂に対して学生たちが取り組みの成果を報告した。

 


化粧の価値とは、「いまのワタシを変えるもの」

学生たちが資生堂から与えられたテーマは、「若者世代の『資生堂』ハート(ラブ)を獲得するためのサービス創造」。4カ月間かけて、学生たちはこの“難問”を解決すべく、さまざまな調査を行ってきた。
まず「化粧」の価値について、若者たちにとって「いまのワタシを、いまを変える、という行為そのもの」と定義づけた。顕在化しているニーズは、「モテる」「印象を変える」などの見た目の変化であり、アンメットニーズは、「スイッチが入る」「スイッチを切り替える」といった心理的変化を求めていると考察。つまり、資生堂が掲げる「資生堂は一瞬も一生も健やかで美しくあり続けるためにある」とはベクトルが異なり、さらに若者世代にとって「一生」という言葉は、自分とは遠いものと分析した。
その上で、若者たちはどのような場面で化粧のスイッチを切り替えるかを検証。
 
1)ONからOFFに単純に切り替える。
2)目的(デートやバイト、遊び)を選択してから、MAXメイクにするのか、雑メイクにするのか選ぶ。
3)行く場所(デート、買い物、美容室、バイト、学校)を選択してから、濃い目のメイクにするのか、うすめのメイクにするのかを選ぶ。
 
これら3つのパターンがあることが分かった。
 

リーダーの都坂仁美さん(同学部3年)は、「行く場所によって、チークやリップの色を変えています。化粧方法は、ネットで調べることもあります」とコメント。

 

岡部優さん(同学部3年)は、「ライブやフェスに行く時は、誰よりも目立ちたいという気分になり、メイクやファッションにも気合をいれます」と話す


化粧に興味あるモノ、第1位は化粧水

若者は化粧に関する情報や話題の何に「興味」をもち、いつ、どこで、誰から(誰と)、何を、どんな風に「収集」し、「行動」するのか。その構造を、X軸(期待)、Y軸(満足)、Z軸(共有)に分けて図示。これらを掛け合わせ、「感動消費量」(※3)の値を算出することで、売れる(当たる)サービスを見つけることができると考察した。
その上で、感動消費のアルゴリズム化に向けた試作として、学部120人の女子学生を対象としてアンケート調査を実施した。
 
(X軸)「化粧に関連して、情報や話題として興味のあるモノは何ですか?」
(Y軸)「(化粧に限らず)情報や話題として収集するコトは何ですか?」
(Z軸)「(化粧に限らず)情報や話題を共有するトコはどこですか?」
 
アンケートをもとに、X軸、Y軸、Z軸を組み合わせた結果、生み出された企画は全部で6つ。特に、10~20代の女性にとって、資生堂=高価なもの、資生堂=OLというイメージを持っており、実際に試す機会を持つことで、品質の良さにつながるのではないか、というアイデアが多く挙げられた。その上で、再度、学生たちは“化粧をする本心”を検討。すると、化粧に“一瞬の変化”を求めるのではなく、“24時間365日可愛くいたい、綺麗でありたい”が若い女子たちのインサイトであることが分かった。
 
資生堂ライフクオリティー事業Gのグループマネージャーである宮入潤氏は、「化粧に関連して興味のあるモノの第1位が化粧水というのは驚きでした。肌が綺麗というのは、若い女性にとっても一番大事なことなんですね」と感想を述べた。このコメントを受け、メンバーの佐股恵さん(同学部3年)は、「化粧をしている日中だけでなく、化粧を落としても綺麗でいられたら嬉しいです。ですから、基礎化粧品が上位に来たという理由だと思いますし、24時間可愛くいたいというスローガンにつながりました」と持論を述べた。
 

佐股恵さん(右/同学部3年)は、「資生堂=高いというイメージがあるので、使わないのかもしれない」と若者らしく主張した。

 

資生堂ライフクオリティー事業Gのグループマネージャーである宮入潤氏をはじめ、資生堂の方から続々と質問がなされた。

 
 
リーダーの都坂仁美さん(同学部3年)はこのプロジェクトを通し、「自分が一番内容を理解しないと、みんなから意見が出てこないと思い、授業の前に下準備を行っていました。徐々にみんなが打ち解けて意見を言い合えるようになったのは、よかったことです。発表をするにあたって、内容はもちろん専門的な用語を理解していないと、感情も込められません。どのような言い方をしたら大人たちに伝わるか、このプロジェクトを通し、学ぶことができたと思います」と学びが大きかったことを口にした。
 
若者世代のサービス創造は走り出したばかり。これからどのようなアイデアが誕生するのか、期待される。
 

「何をもって可愛いのか、何をもって綺麗なのか。その部分を今後掘り下げて探っていきたいと思っています」と担当する西根英一特命講師は語る。

 
 
【「資生堂」班メンバー】
都坂仁美(リーダー/同学部3年)、左股恵(同学部3年)、岡部優(同学部3年)、川中嶋千佳(同学部2年)、宮下梨奈(同学部2年)、稲田英里佳(同学部1年)
 

資生堂班のメンバーが、資生堂の方たちとともに。

 
(※1)若者の心をキャッチせよ/キャンパスマーケット・プロジェクト
(※2)ぴあの発表「ただ寝るだけのフェス?」
(※3)「感動消費量」は千葉商科大学サービス創造学部の「キャンパスマーケット・プロジェクト」が創造したサービス概念。