松浦耕二
加賀電子株式会社
電子事業本部 ゼネラルマネージャー

近年、サービス業に限らず、付加価値を高めるために何かと注目されるのが「サービス」だ。千葉商科大学サービス創造学部の滝澤淳浩准教授が担当するのが、さまざまな企業人を講師に「ものづくりにおけるサービス」を考える15回シリーズの講義だ。このたび登壇した加賀電子株式会社の電子事業本部・ゼネラルマネージャーの松浦耕二氏が語るモノづくりの醍醐味とは。


すべてはお客様のために

同学部の公式サポーター企業でもある独立系エレクトロニクス商社、加賀電子株式会社の設立は1968(昭和43)年。2014年3月31日現在、売上高単体945億円、連結2,578億円、グループ会社を合わせて社員数4,752名を数える大企業である。「すべてはお客様のために」を経営理念、電子部品・半導体ビジネス、EMSビジネス、情報機器ビジネス、ニュービジネスといった4つのコアビジネスを展開しながら、時代のニーズに合った新たな挑戦を続けている。
「サービス創造学部のみなさんには、有形、無形問わず、今までにない新しいものに用いる“創る”をテーマにお話ししたいと思っています。“創る”とは、今までにない発想、手法、サービス、商品、ビジネスモデルなど、お客様に新しい価値を提供することです」と、松浦氏はモノづくりについて話し始めた。
 
学生時代には、大学の友人4人と学習塾を経営していたという松浦氏。「経理的なこと、授業のカリキュラム、そしてどうやって子供を集客できるかなどを自分たちで考えていました。この経験は、今の仕事に役に立っていると思う」と話す。
 

学生時代には、大学の友人4人と学習塾を経営していたという松浦氏。「経理的なこと、授業のカリキュラム、そしてどうやって子供を集客できるかなどを自分たちで考えていました。この経験は、今の仕事に役に立っていると思う」と話す。

 


モノづくりをするうえで必要なものとは

長い間エンジニアを務め、重ね撮りができるMP3録音機、ぷりんとごっこJET、TAXAN 防水BTスピーカーなど、数々の人気商品を生み出してきた松浦氏。彼が考える、新しい価値を提供するために必要なことは、「①基礎知識 ②柔軟な発想とこだわり ③一歩を踏み出す勇気 ④折れない心と撤退する勇気」だという。
「思いついたアイデアも、根拠がなければ、それは新しい発想とは言えません。必要なのは基礎的な知識で、そういうことを大学で学ぶのです。自分が何かをはじめようとした時に、その分野で何が起きているのか、それを理解すること。そしてそれを実現するためにどういう技術が必要か、そして市場の動向はもちろん、誰が競合なのかを検証することが大事です。そして、なぜ世の中にないのか、その理由も考えてほしい」と松浦氏は語る。 

新しいデジタル放送に対応した「TAXAN 防災ラジオ」に力を注いでいる、と話す松浦氏。地震や津波などの際、いち早く警報を鳴らしてくれるという。

 


失敗を恐れずチャレンジを

モノづくりにあたっては、チームづくり、つまり“人のチカラ”が重要だ。「たとえば野球で例えると、4番バッタータイプの選手ばかり集めてもチームは勝てません。それと同じで一番大事なのは、プロジェクトの中で、同じ方向に向かって頑張ることができる情熱のある人を選んでいます。一方、時代は成果主義。会社の組織にいながら、起業できるくらいのスキルを持っている人が求められるようになっています。」
 
「失敗が多い人生だった」と学生たちに話す松浦氏。「周りから羨ましがられることもあるけれど、自分には一歩を踏み出す勇気がありました。モノをつくることはすごく楽しいですし、皆さんにも色々チャレンジしてほしい。」
まさに、失敗は成功のもと。努力はもちろんのこと、失敗を恐れず成功をめざして踏み出す勇気の大切さを改めて感じる講義となった。
 

同学部2年の佐々木傑くんからの「20歳の頃の自分に言いたい事はありますか?」という質問に「基礎知識をしっかり学んでおけ、と言いたいです」と笑いながら答える松浦氏。

 
 

<プロフィール>

松浦耕二(まつうら・こうじ)

加賀電子株式会社 電子事業本部 ゼネラルマネージャー
 
1956年大阪府生まれ。同志社大学工学部卒業後、株式会社ナムコに入社。1986年、加賀電子株式会社に入社し、1993年まで米国カリフォルニア州に駐在。同社では、一貫して新規事業の開発、TAXAN商品の開発に携わる。現在は、V-Lowマルチメディア放送事業の立ち上げに従事。