株式会社伊藤園
能力開発部 採用課長 石原彰夫

「お~いお茶」で知られる株式会社伊藤園の歴史は茶葉を販売するお茶屋から始まっている。常に「お客様が不満に思っていることは何か」を考え続けているからこそ、数々の「世界初」「業界初」を生み出し、右肩上がりの成長を続けてきた。
同社の成長の秘訣や今後の夢を、採用課長を務める石原彰夫氏が語った。


清涼飲料業界は成長市場

「『お~いお茶』を知っている方!」という石原氏の問いかけに、教室内全員の手が挙がる。今でこそ、ペットボトル入りのお茶は簡単に手に入るが、「当たり前」となったのはつい最近のこと。このペットボトル入りのお茶の登場は、清涼飲料業界全体の成長のきっかけになった。
「少子高齢化の影響で、食品業界は人口や消費量が減り、縮小していくといわれています。しかし、そんな中でも清涼飲料市場は拡大傾向にあります。現在では、食品業界でかつてトップだった酒類業界を抑えて、売上No.1の業界となり、中でも茶系飲料は飛躍的に売上を伸ばし、コーヒー飲料に次ぐ2番手に大きいカテゴリーとなっています。さらに、ミネラルウォーターや野菜飲料への注目が高まっている背景を考えても、清涼飲料業界は今後も伸びが期待できる成長市場です」と、石原氏は力強く説明する。

 


伊藤園の成長の鍵“STILL NOW”

革新的な改良を重ねてきた同社のお茶の販売方法の変遷に成長の秘密がある。
業界初の「パッケージ茶」を販売、世界初の「缶入り煎茶」を発明・販売、世界初の「PETボトル入り緑茶飲料」を販売、業界初の「ホット対応PETボトル製品」の販売。これら全て、業界に先駆けてお客様に提供してきたのが同社なのだ。
 
発想の原点は、“STILL NOW”。「お客様は“今でもなお”何を不満に思っているのか」を社員全員が考えていることだ。
「伊藤園は、職種に捉われず、社員全員が商品や販売促進等についても提案できる『Voice制度』を設けています。1人で年間200件を越えるアイディアを出す社員もいるほどで、良い提案が多い年は、新商品のうち4割くらいが採用につながっています。
また、営業が直接お店へ商品をお届けするルートセールスを大切にしているのも伊藤園の特徴です。担当地域の中で、商談、納品、売場管理を全て1人で担当することで、お客様との距離が近くなり、さまざまなニーズを捉え、Voice制度へ反映することができます。他社にはない地域密着の営業スタイルは大きな強みです」と石原氏は胸を張った。
 


伊藤園の夢は「世界のティーカンパニー」

同社は、さまざまな活動に取り組んでいる。九州地方の耕作放棄地に大規模な茶畑を展開し、「お~いお茶」に適した茶葉をつくる新産地事業や、茶殻を配合した自社の封筒や名刺作成をはじめ、茶殻の抗菌消臭作用を利用して畳や靴の中敷などを開発する「茶殻リサイクルシステム」がある。また、社内外への茶文化の普及などを目指した「ティーテイスター制度」と呼ばれるお茶に対する高い知識と技能を持った社員に与えられる社内資格制度を設けるなど、お茶に関するあらゆる事業に取り組む同社。そんな同社が目指す未来は何か。
「世界中でいつでも、どこでも、誰にでもお茶を飲んでほしい。『世界のティーカンパニー』を目指したいと思っています。『日本のお茶』を世界に広めて、世界中のお客様に健康で豊かな生活を提案したい。そんな夢と目標を持っているのが伊藤園という会社です。」
それはそのまま伊藤園が求める人材像にも繋がっている。
「伊藤園は『お茶を世界に広める』という夢と目標を持っています。そういう意味では、お茶を世界に広め、グローバルに活躍を目指す方や、仕事でもプライベートでも『こんなことをやりたい』という夢や目標を持った方を歓迎します。加点方式で評価するので、失敗を責めるのではなく、チャレンジする気持ちを大切にしています。『失敗をおそれずにチャレンジできる方、前向きな方』をお待ちしています!」と学生達に熱いメッセージを送る。
「私もこの会社でたくさんの失敗をして、今があります」と言って石原氏は笑った。

 

茶殻を利用した封筒。

 

封筒の香りを確かめる学生達。

 
※なお本記事は、千葉商科大学サービス創造学部の井上義次教授による講義「サービス企業セミナー1」のゲストスピーカーとして登壇された石原氏の講義内容を抜粋・編集したものです。
 

<プロフィール>

石原 彰夫(いしはら あきお)

株式会社伊藤園
能力開発部 採用課長 グリーンティーテイスター3級
 
1971年東京都生まれ。94年 株式会社伊藤園入社。
東京地区の5拠点にて営業職。ルートセールス、支店次長、地区推進課長、支店長を
経験後、2011年から事務職。経営管理部を経て12年から現職。