国内に530店舗、海外に27店舗出店する、日本一のたこ焼きチェーン「築地銀だこ」。この事業を展開するのは、千葉商科大学サービス創造学部の公式サポーター企業であり、2014年9月には東証マザーズに上場を果たした「株式会社ホットランド」だ。11月には、同学部の特命教授でもある同社の代表取締役社長・佐瀬守男氏が日本の起業家を表彰する「Entrepreneur Of The Year 2014 Japan」 の大賞を受賞し、日本代表に選出された。今もっとも熱いホットランドの「快進撃の理由」について、銀だこ事業部北海道エリア・マネージャーの佐藤勇希氏が語る。


無形文化遺産に登録された「和食」

千葉商科大学サービス創造学部の特命教授をさせていただいている佐瀬守男が株式会社ホットランドの設立したのは1991年6月。現在504名の社員がいます。
「ホットランド」という社名は、社長の佐瀬が若い頃におむすびと焼きそばの店を立ち上げた時に、温かい食事を提供したいという「ホット」と、笑顔いっぱいの団欒を作りたい「ほっと」した安らぎをお客様に体感していただきたいという意味を込めて「ホットランド」と命名しました。
ホットランドは、「世界的な“和”のファーストフードチェーンを築き上げ、家族や世代をつなぐ日本の良き『共食』文化を真心とともに後世へ伝え、世界へ広げてまいります」というビジョンをもっています。第1次創業期は、日本一のたこ焼きチェーンになることを目標に掲げていましたが、佐瀬は徐々に「世界に目を向けなければ企業の発展はありえない、日本の食文化は海外に伝えていくべき」という思いを抱き始めました。
近年、和食が世界遺産の無形文化遺産に登録されました。海外では、和食がブームになっており、特にすし屋、天ぷら、ラーメンなど、日本の食文化が注目されています。我々が主力商品として扱うたこ焼も和食のカテゴリに分類されますので、和食が無形文化遺産に登録されたことは、会社にとって追い風となっているのは事実です。現在、銀だこは香港に1店舗、台湾に3店舗、タイに3店舗、シンガポールに2店舗、カンボジアに1店舗とアジア圏のみですが、今後はアメリカやフランスなどに出店していく計画が進んでおり、拡大を目指しています。
 



スイーツ界にも進出

銀だこグループは、たこ焼のほかに最近では、スイーツにも力を注いでいます。1日に1000枚近く売れると人気店と呼ばれるたい焼業界の中で、我が社の「薄皮たい焼」のお店で1日に3000枚も売れるたい焼を販売するなど、一時期ブームにもなりました。さらに、皮がクロワッサンの生地で、さくさくとした食感が特徴の「クロワッサンたい焼」と呼ばれる新商品も爆発的なヒットとなり、現在は薄皮たい焼を上回るほど人気を博しています。
また、2014年1月には、アメリカのアイスクリーム専門店として人気の「コールドストーンクリーマリージャパン」がグループの一員となりました。たい焼は、寒い時期に売り上げが伸びますが、夏になると売り上げが減る。そこで、夏に売り上げが伸びるアイスクリーム専門店を招き入れたことで、1年を通して高い水準で売り上げを保つことができるようになりました。
 



たこの原料調達と養殖

ヨーロッパでたこが高級食材として取り上げられるようになってから需要が高くなりました。実は、全世界で水揚げされるたこの10%を銀だこが使っています。つまり我が社は、世界でも有数のたこを使用する外食企業なのです。ですから、たこが取れなくなってしまったら、危機に立たされてしまいます。そこで、たこの漁場を拡大していくことにも力を入れています。
東日本大震災で人的被害が大きかった宮城県石巻市は、水産業が盛んな町でした。我が社は石巻に、たこの研究しながらたこを養殖する水産研究所を設置。この町に産業を作り上げることで、復興の手助けになればいいなと思っています。さらに、将来、世界中でたこが取れなくなったときに、自分たちが育て上げたたこが我々の強みになるかもしれませんね。
 



ホットランドを成長させてきた「数多くの失敗」

社長の佐瀬は実に失敗の多い人間です。さらに、ホットランドも失敗を繰り返している会社で、「失敗から学ぶ」が社風にもなっています。佐瀬は、「チャレンジをしないことが一番の悪」だと言い、失敗をしても新しいことや難しいことにチャレンジしようと、社員に常日頃話しています。ただし、失敗しても諦めず、なぜ失敗したのか、次にどうしたら失敗しないかを考えることが大事。こうした経験を通し、「強い単品力」「幅広い客層」「自社製専用機械」「実演販売」「小スペース低コスト出店」という5つのキーワードを生み出しました。お客様の満足が川下とするなら、原料の調達や機械の製造、人の教育を川上とし、川上から川下までの流れをすべて自社で完結してマーチャンダイジングを行うことで、非常に強い業界に成長したのです。
この5つのキーワードを、我々は「銀だこスタイル」と呼んでいますが、こうした強みを生かすことで、創業してからわずか25年のホットランドは、ここ10~15年の間に急速に店舗数を増やすことに成功したのです。
 


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「企業が成長するプロセスの中で身を置いていると、休日になっても店舗が心配になって出勤してしまう、なんてことが当たり前でした」と言って笑う佐藤氏。彼のような社員に支えられて、ホットランドは成長を遂げてきたのだろう。佐藤氏はこんなエピソードも明かしてくれた。「かつて、北海道でマイホームを買った3か月後に、佐瀬(社長)から新しい事業を立ち上げるから東京本社に戻って来いと呼び戻されたことがありました。でも、その時も疑問に感じるどころか、言われた張本人が新しい事業に携われることにワクワクしていたんですよね。それだけ、凄い経営者の下で仕事をしていると感じています。」
築地銀だこをはじめ、サラリーマンやOLをターゲットにハイボールとたこ焼を飲食できる「ハイボール酒場」や、ホットランドのオリジナルフードコートの「ハイボール横丁」、ドライブスルー、キッチンカー、コーヒーチェーン店など、さまざまな業態の飲食店を手がけるホットランド。2011年度調べによると、世界で店舗数トップを誇るのは、サンドウィッチを主力商品とするファーストフード店のサブウェイである。「サブウェイはマクドナルドを抜いて1位になり、3万8400店舗あります。銀だこは世界中にまだ550店舗しか出店していないので、将来的にはここを目指したい。まずは下から順に店舗数を拡大していって、日本国内だけではなくて、世界的に築地銀だこが並ぶようなチェーン店になりたいと思っています」と、佐藤氏は今後の展開に意欲を示す。「たこ焼」が日本の文化のひとつとして世界に根付く日もそう遠くないはずだ。
 

授業後も佐藤氏の周りには続々と学生たちが集まり質問が続いた。
 

<プロフィール>

佐藤 勇希(さとう・ゆうき)

株式会社ホットランド 銀だこ事業部 北海道エリア マネージャー
1984年生まれ。2005年、株式会社ホットランドへ入社。現在は北海道エリア・マネージャーとして同社・佐瀬守男社長を支えている。
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