研究成果を競い合い成長を遂げる場、MRGP 

――大学のゼミではどのようなことに取り組んでいらっしゃるのですか。

安藤 私たちのゼミでは4年前から「マーケティング・リサーチ・グランプリ(MRGP)」に参加しています。MRGPは、千葉商科大学をはじめ、東洋大学、成蹊大学、駒澤大学、九州産業大学の5大学でマーケティングを学ぶ8つのゼミが参加する合同研究発表会です。テーマは毎年かわりますが、2013年度は、「食」「スポーツ」「インストア」「CSR」「サービス」の中から1つを選び、関連する課題を設定して研究し発表しました。
4~5人が1グループを作り、昨年の参加数は32チームに上りました。9月中旬に行われる中間発表までに研究課題を決め、関連する資料・論文を読み、仮説を設定します。その後、調査、分析、考察を行い12月初旬の本発表会に備えます。
本発表会は予選と本選の2部制です。予選は午前10時から午後2まで、全グループが5教室に分かれて発表を行い、その教室でもっとも優れていた1チームが本選に進みます。勝ち残った5チームは、教員、参加者、外部審査委員合わせて200名の近い聴衆の前で改めて研究結果をプレゼンし、本選審査を受けます。その結果、最優秀賞、優秀賞、学生賞が決まります。外部審査員には、知り合いの大学教員、企業人、博士課程の大学院生お願いしていますが、「想像以上にしっかりした研究発表で驚いた」と言っていただいています。

 
――本格的な研究発表会ですね。

安藤 学生たちはグル―プごとに研究課題を設定し、先行研究を調べて仮説を立て、調査・実験を行って検証し、結論を導き出すという一般的な作法にのっとったプロセスを踏み、研究を進めることが求められます。はじめて取り組む2年生は、手探り状態が続き、頭をかかえることもしばしばですが、頑張って形にしています。一生懸命とりくむ気持ちがあっても、研究の進め方、グループでの進め方に戸惑い、必ずしも納得いくものになるとは限りません。一方で、優れた発表を目にすると、自分たちのふがいなさを実感することも少なくないようです。「来年こそは…」と雪辱を誓い、成長していく姿は、私が見ていても頼もしく映ります。

 
――そのプロセスが学生たちの成長につながっていそうですね。

安藤 そうですね。資料を熟読して理解し、それらを積み上げて1つの考えにまとめあげるには我慢が求められますし、そうした研究のプロセスを通して、論理的な思考力が身につきます。またグループワークでは、時間を調整しあったり、意識レベルや理解度を合わせたりしなければなりませんので、協調性やコミュニケーション能力が鍛えられます。
「場が人を育てる」とよくいいますが、同世代の学生たちと競い合うことや、その競争の中で悔しい思いや嬉しい思いをする経験は、学びの意欲を高める刺激になっています。私の千の言葉より彼らのやる気に火をつけるようです。MRGPを一緒にできる教員仲間がいてくれることもありがたいことだと思っています。
吉田学部長を中心に私たちの学部が、プロジェクト活動や公式サポーター企業との連携などさまざまな取り組みを実践しているのも、さまざまな学びの場を提供するためです。経験から知識や知恵を得て、実績を積むことで「がんばればできる」という自信につながります。
今年の正月、私はこのウェブサイトの年賀状に、「コツコツ努力して成果を出しましょう」と書きました。今年は成果を出すことにもこだわろうとゼミ生にはっぱをかけています。

 

真剣に取り組む、その先に成長がある 

――プロセスだけではなく成果にこだわるということですね。

安藤 はい、そうです。プロセスを通じて学生は多くのことを学ぶわけですから、プロセスが重要だという思いで指導をしてきました。その思いに変わりありません。ただ、仕事を通じて、結果に結びついたときに人は自信が持てるということを学びました。なので、頑張ったということで終わらせず、成果にもこだわってほしい。そして自信に結び付けてほしいのです。

 
――千葉商科大学サービス創造学部は高い就職率も誇っています。

安藤 はい、2期生も職を得て巣立ってくれました。すでに3年生の活動が始まっていますが、就職活動の厳しさを認識しているようで、早くから真剣に取り組んでいます。
今と昔を比べることはできませんが、いつの時代も就職活動は大変です。不安なものです。はじめに話したように、私が就職活動をした頃は、男女雇用機会均等法施行直前でしたから楽ではなかったように思います。また父と話しても、上司や後輩社員と話しても、経済環境、社会情勢の要因をあげて、みな大変だったといいます。ほんの一時期を除いては、いつでも苦労を強いられるものなのではないでしょうか。なので「自分たちだけが大変」とは思わずに、置かれた状況の中で自分のできる活動を粛々と進めてもらいたいと思っています。悲観的になる必要はないとゼミ生には伝えています。

 
――最後に、社会に出て行く学生たちにメッセージを。

安藤 社会人になるにあたっては、「しなやかであってほしい」と伝えたいです。最初にお話ししましたが、私も配属から思い通りにはなりませんでした。多くの人にそうなる可能性があります。でも今になって考えると、広報の仕事に就かせてもらってよかったと思っていますし、仮に管理部門を目指していてブランド部門に配属されていても、同じように思ったのではないかと感じています。仕事としてやるべきことの本質はそれほどかわらないと思っているからです。
どうしてもプレスの仕事(雑誌社対応)をやりたいと希望していた同期は、配属されなかったことを理由に早い時期に退職しました。別の会社でプレスをやれているかもしれませんし、彼女にとってそれが間違った選択だとは思いません。ただ、私は自分の経験から、まずは与えられた場でやってみよう……という柔軟な姿勢でいることを勧めたいです。自分が思い描いていたものとは違う環境に身を置くことで、自分自身、知らなかった能力や、仕事の楽しさが見えてくることもあると思うからです。
そして、繰り返しになりますが、「目の前のことを頑張って」ということです。いやなことがあったり、苦難にぶつかったりすると、他の人のこと、よその環境が気になります。そんなときこそ、目の前のことに集中してほしいと思っています。我慢をして1つ突破口がみつかると、見える景色が変わってきます。
モチベーションを維持するためには、一つ一つの仕事に結果を出すことが大切です。背伸びをしてすごく大きな成果を出そうとする必要はありません。些細に見える目の前の課題に対して、真剣に取り組んでやり遂げることです。そのプロセスを楽しめれば、仕事は面白くなってくるはずです。みなさんの成長と活躍に期待しています。

 

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<プロフィール>

安藤 和代(あんどう・かずよ)

0007901986年立教大学文学部卒業。同年(株)ワールド入社後、主として広報業務を担当する。2001年退社後早稲田大学大学院商学研究科修士課程に進学、2009年同博士課程修了。同年より千葉商科大学サービス創造学部専任講師を経て、2012年より准教授。「マーケティング入門」「マーケティングケースディスカッション」「マーケティングリサーチ」などを担当。専門はマーケティング論。

▼詳細はこちら
http://www.cuc.ac.jp/achievements/teacher/001231.html

 

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