千葉商科大学サービス創造学部長
今井重男
 
2017年4月1日、千葉商科大学サービス創造学部の2代目学部長に就任した今井重男教授。新リーダー・今井学部長の学部教育・運営にかける想いに迫る。

 

2017年4月、千葉商科大学サービス創造学部の学部創設から学部の顔として、縦横無尽に走り続けてきた吉田優治教授から、学部長のバトンが今井重男教授に渡された。学部創設9年目に突入した学部は、新たな学部長を迎え、今後どのように発展していくのか。学部にかける想いと学生たちへのメッセージを今井新学部長が語った。

 

2017年4月、サービス創造学部の初代学部長である吉田優治教授(左)から、2代目学部長の今井重男教授(右)に学部長のバトンが渡された。

 


3つのマニフェスト

2009年にサービス創造学部は新設されましたが、構想段階から含めると約10年もの間、サービス創造学部のフロントマンとして学部長の吉田が活躍してまいりました。吉田の後を受け継いで学部長という大役を拝命したことに不安を感じているものの、850人もの学生たちをお預かりしていますので、しっかりと責任をもって学部を引っ張っていけるよう努めたいと思っています。その中で、3つのことを中心に学部を発展させていきたいと考えています。
 
1) 学生の発展を通じた、学部・教職員の発展
学生が学部の学びに満足しない限り、教育のカリキュラムや授業内容、環境、そして教職員が充実することはない、と考えています。裏を返せば、彼らの発展を通じて、私たちの発展につながるということです。学生たちが大学4年間を通して、確実に成長し、この学部に入ってよかった、と思えるような環境づくりを行いたいと考えています。
 
2) 「デリバラブル」の考え方
私の専門分野の人的資源管理の理論の中に、「ドゥアブル(Do able)」、「デリバラブル(Deliver able)」という考え方があります。ドゥアブルは「何ができるか、何をするかということ」、デリバラブルは、「何が提供できるか」ということです。私たち教員に何ができるのかを考えるだけではなく、デリバラブルの考え方、つまりどういう立ち居振る舞いをすることが皆にとってプラスに寄与するかを考えながら行動したいと思っています。
 
3) 進化ならぬ、深化する
2017年3月に5期生が卒業し、その卒業生たちの就職率も99%を超えて、志願者数も順調に増加しています。これは、私たちの教育を通し、サービスマインドやサービスマンシップという能力を学生たちが体得したことの結果だと思っています。しかし、それに満足するのではなく、これからさらに“進化”し、“深化”したい。つまり、これまで積み重ねてきた教育のシステムを深堀していくということです。
学部の公式サポーター企業も入れ替わりはあったものの58社に増えました。企業側からも表面的に付き合うのではなく、大学と実行性のある連携がしたいと言っていただいています。その形や内容、関係性も、ひとつにとどまるのではなく、つねに見つめ直しながら進めていく必要があるでしょう。学部教職員がコミュニケーションを取り合って、それぞれの立場で深化していきたいと考えています。
 

「8年間である程度の形までできてきたので、これからは、プロジェクト活動も含めた教育のカリキュラムの中身もすべて、深化していかねばならないと考えています」と今井学部長。

 


サービスを学問として研究すること

サービス創造学部の教員の方たちは、総じて器用です。そしてサービス創造学部だけに、サービス精神が旺盛で奉仕の気持ちが強いと感じています。この点についても、これまで以上に、そのチカラを伸ばしていきたいと考えています。
一方で、前学部長の吉田も常々申しておりましたが、学問としてサービスを研究することは、ここから本格的に着手しなければならない課題だと思っています。学部も9年目を迎えますし、学部名が「サービス創造学部」ですし、サービス創造を教育・研究する唯一の機関として、各教員がそれぞれの分野で研究を進めていってほしい。大学においては教育と両輪である研究活動を、学部内でもあらためて積極的に進めていきたいと思っています。
 

2017年4月、サービス創造学部241人を含む、1,649人の新入生が大学の門をくぐった。今井学部長は、新入生たちに「さまざまなチャンスをつかんでほしい」とメッセージを送る

 


なぜ大学に来たのか、考えること

サービス創造学部では、「学問から学ぶ」「企業から学ぶ」「活動から学ぶ」の「3つの学び」を掲げています。企業から学ぶという部分では、公式サポーター企業の方をはじめとするさまざまな企業の方々が寸暇を惜しみ、ゲストスピーカーとして毎日のように講義をしに来てくださっています。その結果学生たちは、就職活動はもちろん、社会に出てからも気後れせず、企業人たちと接することができていると思っています。しかし企業の方たちから学びを得られることが当たり前と、学生たちが感じてしまうのは問題です。1年生の時からこうした多くの学びの機会を与えられていますが、来てくださっている方々への敬意と感謝の気持ちを常に忘れないようしてほしいですし、私たちも学生たちにしっかりと伝えていきたいと思っています。
またひとつ別の危惧は、企業や活動からの学びを学生たちが活用しきれていないのではないか、ということです。利用しきってはじめて、先輩たちと同じようなチカラが身につくと再認識してほしい。
まだ創設したばかりの学部に、チャレンジ精神をもって飛び込んできた1期生、2期生の学生たちは荒削りでしたがパワフルでした。一方で、今入ってきている学生たちは、彼らと比べるとしっかりしていますが、大人しく感じるのも事実です。なぜ大学に来たのか、なぜ大学で学ぼうと思ったのか、1年に1回でいいから振り返ってほしい。大学で過ごす4年間は、決して少なくない時間とコストがかかりますから、「なぜ?」と考えることを忘れず、有効な学生生活を送ってほしいと思います。
 

2016年3月に就任した原科幸彦新学長。入学式では、「皆さんには現代の侍になってほしい。正しいことをしっかり発言し、疑問に思ったことは質問し、意見をすること。大学をコミュニケーションの場として大いに活用してほしいと思います」と新入生たちにエールを送った。

 


あらゆるチャンスをつかんでほしい

よく私は、「たかが千葉商科大学、されど千葉商科大学」と言います。私自身この大学の卒業生だから実感しているのですが、社会に出ると「商大はすごい」と思われることが多かったのも事実。それは、社会に通用するかしないは、偏差値だけでは計れない事実を見てきているからです。この大学で学び、実は知らないうちにいろいろなチカラを身につけて社会に出られたことを私自身経験していますので、自信をもってしっかりとここで学びきってほしいと思っています。
私は、大学2年の時に吉田の講義に衝撃を受け、感化され、吉田ゼミナールに入りました。今思えば、この出会いが自分にとって大きなターニングポイントでした。その後社会人を経て、大学院で学びましたが、それもまた刺激的でした。こうした自分自身の経験もあって、学生の皆さんも、今の若い時期に将来の“萌芽”を感じとってほしいと思います。
この4年間に人生を変えるような機会が必ずあると思いますので、さまざまなチャンスをつかんでほしいですね。
 

サービス創造学部9期生として入学した宮崎玲奈さん(左)とお母様とのツーショット。玲奈さんは、「学部のカリキュラムに興味があってこの大学を選びました。たくさん勉強したいです」と意気込むと、お母様は「本人が入学したいと選んできた学部ですが、社会に出たときに役立つようないろいろな経験を積んでほしいと思います」と語る。

 

岡本周くん(左)は、プロサッカークラブと連携する「ジェフ千葉・プロジェクト」に興味を抱いてこの大学入学を決めたという。「その活動を通して、自分の将来の夢につながればいいなと思っていますし、サッカー部にも入部してチームに貢献したい」と抱負を述べた。一方、お母様は、「就職率の高い学部と聞いています。さまざまなことを身につけて、将来自分の希望するところに就職してほしいと思います」と期待を寄せた。

 
 

<プロフィール>

今井 重男(いまい・しげお)
000790専門:経営学、人的資源管理、ブライダル産業

1968年東京生まれ。1992年千葉商科大学商経学部卒業。同年(株)ヤナセ入社。営業職対象の商品研修担当に従事した後、1998年労働組合専従役員(労働協約に基づく休職)となり委員長を務める。2006年に復職し本社営業推進部、リージョンHQ、その後子会社へ出向し総務課長を務める。18年間の企業勤務中に、立教大学大学院ビジネスデザイン研究科(修士課程)、筑波大学大学院システム情報工学研究科(博士後期課程)で学ぶ。2010年より千葉商科大学大学サービス創造学部准教授、教授を経て、2017年4月よりサービス創造学部2代目学部長・教授に就任。ブライダル産業・サービス、労働市場(雇用戦略、労働市場分析)、多様就業、キャリア形成、労使関係、社会経済の構造変化と働き方の変化などを研究。妻と二女の四人家族。趣味は家庭菜園。
 
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